退職手続き(会社側)。5日・10日・1ヶ月の期限で並べます
従業員の退職が決まったら、会社側の手続きは期限の短い順に並べるのが正解です。①社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失届=退職日の翌日から5日以内、②雇用保険の資格喪失届=10日以内(離職票を出すなら離職証明書もセット)、③源泉徴収票の交付=退職後1ヶ月以内。加えて住民税の異動、保険証の回収、貸与物・アカウントの停止が並走します。
数名の会社では退職はたまにしか起きないから、毎回「何からやるんだっけ」になりがちです。時系列のチェックリストとして整理しました。
時系列チェックリスト
| 期限 | 手続き | 提出先 |
|---|---|---|
| 退職日まで | 貸与物(PC・携帯・鍵・社用携帯)の回収、各種アカウント・権限の停止予約、業務引き継ぎ | 社内 |
| 翌日から5日以内 | 健康保険・厚生年金の資格喪失届+保険証の回収・返却 | 年金事務所(事務センター) |
| 翌日から10日以内 | 雇用保険の資格喪失届(+離職証明書:本人が離職票を希望する場合。59歳以上は必須) | ハローワーク |
| 速やかに | 住民税の異動届(最後の給与で一括徴収か、普通徴収へ切替) | 市区町村 |
| 1ヶ月以内 | 源泉徴収票の交付 | 本人 |
| 請求されたら遅滞なく | 退職証明書(労基法22条)・離職票の交付 | 本人 |
つまずきポイント
- 住民税は「いつ辞めるか」で扱いが変わる…1〜5月退職は残額を最後の給与から一括徴収が原則、6〜12月退職は本人の希望で一括徴収か普通徴収への切替です。最後の給与計算に直結するので、退職日が決まったらまずここを確認してください
- 社会保険料の「最後の月」の計算…資格喪失日(退職日の翌日)が属する月の前月分まで保険料がかかります。月末退職と月中退職で最後の控除額が1ヶ月分変わる——給与明細の問い合わせが一番多いポイントです
- 保険証の回収漏れ…資格喪失後の保険証使用は後日精算のトラブルになります。最終出社日に回収する段取りを固定してください(マイナ保険証移行後も、資格確認書等の取り扱いは同様に整理を)
- 競業・秘密保持の確認は退職前に…誓約書は在職中のほうが取りやすい書類です。就業規則の定めとセットで、退職合意の段階で書面を交わすのが実務です
給付・お金まわりの補足
- 離職票は「本人が希望したら」でも、迷ったら出す…失業給付の手続きに必要な書類です。発行の流れは離職票の記事に分けましたが、後から請求されて慌てるより、退職時に希望を確認して出しておくのが安全です
- 退職金があるなら「退職所得の受給に関する申告書」…提出してもらえば退職金の源泉徴収が優遇計算になります。もらい忘れると一律20.42%源泉になり、本人に確定申告の手間が生じます
- 最終給与の精算項目…日割り給与・未消化の立替経費・社宅や財形など控除項目の精算・貸付金があれば相殺の合意。精算書を1枚作って双方確認が後腐れのない形です
- 年末調整はしない…年の途中の退職者は原則、年末調整はせず、源泉徴収票を交付して転職先または本人の確定申告に引き継ぎます
トラブル予防の型
- 退職届は書面でもらう…口頭の退職合意は撤回・行き違いのもとです。日付入りの退職届(またはメール等の記録)を残してください
- アカウント停止は退職日に即時実行…メール・クラウド・PC内データのアクセス権は、最終出社と同時に止めるのがセキュリティの原則です。停止リストを事前に作っておくと漏れません
- 連絡先の確認…源泉徴収票・離職票・住民税の書類は退職後に送るものが多い。転居予定も含めて送付先を最終日に確認しておくと、返送・再送のロスが消えます
- 手続きが多い月はソフトに頼る…労務ソフトなら喪失届・離職証明書のデータ作成と電子申請までつながります。給与計算の記事で書いたとおり、数名規模でも十分元が取れる領域です
よくある質問
Q退職日と資格喪失日は同じですか
違います。社会保険の資格喪失日は退職日の翌日です。保険料の計算や手続き期限はすべて喪失日基準で数えるので、この1日のズレを押さえると混乱しません。
Q本人と連絡が取れなくなった場合はどうしますか
手続き自体は会社側だけで進められます(喪失届等に本人の署名は不要)。書類は住民票上の住所へ郵送し、記録を残してください。無断欠勤からの自然退職の扱いは就業規則の定めによります。
Q退職証明書には何を書けばいいですか
使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由のうち、本人が請求した事項だけを記載します(請求しない事項を書いてはいけない点が特徴です)。
Q役員が退任する場合も同じですか
役員は労働者ではないため雇用保険の手続きはなく、社会保険の喪失と登記(役員変更)が中心になります。従業員兼務役員は労働者部分の手続きが必要です。
まとめ
① 期限順:社保喪失5日以内→雇用保険喪失10日以内(離職証明書セット)→源泉徴収票1ヶ月以内。
② 住民税は退職月で扱いが変わる(1〜5月は一括徴収原則)。最後の社保料は月末/月中退職で1ヶ月違う。
③ 保険証回収・アカウント即時停止・誓約書は在職中に、が守りの3点。
④ 労務ソフトで喪失届〜離職証明書まで電子申請に乗せれば、たまの退職でも迷わない。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。