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オフィス移転の費用。最大の費目は引っ越し代ではありません
「オフィス移転」を検索すると、1ページ目は移転業者と家具メーカーばかりです。だから引っ越し代と内装の話が中心になる。しかし実際に金額が大きいのは、旧オフィスの原状回復費と、新オフィスの敷金(保証金)——不動産側の費目です。
一般社団法人RCAA協会の実測データでは、原状回復の指定業者初回見積は坪単価中央値10.3万円(100坪未満)、適正査定後の合意額は5.8万円。平均36.76%下がっています。事業用賃貸を扱う宅建業者として、この「不動産側」から移転費用の全体像を書きます。
費用の全体像:3つの財布
| 財布 | 項目 | 水準 |
|---|---|---|
| 旧オフィス | 原状回復工事 | 坪5.8〜10.3万円(下記実測)=50坪で290〜515万円 |
| 解約までの二重賃料 | 工事期間・移行期間の重複分 | |
| 新オフィス | 敷金(保証金) | 賃料の6〜12ヶ月分(事業用の実務水準) |
| 礼金・仲介手数料・前賃料 | 2〜3ヶ月分 | |
| 内装・什器・ネットワーク | 規模・グレードで大きく変動 | |
| 引っ越し | 運搬・廃棄 | 実は全体の中では小さい費目 |
敷金は返還されるお金ですが、移転時には旧オフィスの敷金が返る前に新オフィスの敷金を積むため、キャッシュフロー上は一時的に二重になります。ここが資金計画の山です。
原状回復費の実測データ:査定で36.76%下がる
事業用の原状回復は住居用と世界が違います。契約で範囲を広く定めるのが一般的で、ビル指定の業者に発注する条項が入っていることが多い。つまり相見積もりの競争が効きにくい構造です。
| 規模 | 初回見積 | 適正査定後 | 削減幅 |
|---|---|---|---|
| 100坪未満 | 約10.3万円/坪 | 約5.8万円/坪 | −44% |
| 100〜300坪 | 約11.0万円/坪 | 約7.0万円/坪 | −36% |
| 300坪超 | 約12.3万円/坪 | 約7.1万円/坪 | −42% |
平均削減率36.76%。住居の退去費用が交渉で78%下がった実例と同じ構図が、事業用ではさらに大きな金額で起きています。初回見積をそのまま払う理由はありません。明細を取り、専門の査定を入れる価値がある金額です。
スケジュールは「解約予告6ヶ月」から逆算する
- 12〜8ヶ月前:方針決定・物件探し開始…事業用は居住用と違い、選定〜契約に時間がかかります
- 6ヶ月前:旧オフィスの解約予告…事業用賃貸は解約予告6ヶ月前が標準(契約書で確認)。ここを過ぎると賃料が6ヶ月余計に発生します
- 5〜3ヶ月前:新オフィス契約・内装設計…B工事(ビル指定業者の工事)の調整が律速になりがちです
- 2〜1ヶ月前:引っ越し・移転通知…本店移転登記・取引先通知・各種住所変更
- 明け渡し日まで:原状回復工事の完了…住居用と違い、賃借期間内に工事を終えて返すのが原則。工事期間ぶんの賃料も費用のうちです
敷金の返還時期にも注意。事業用の契約では、敷金の返還が「明け渡し後3〜6ヶ月以内」と定められていることが珍しくありません。さらに償却(敷引き)条項があれば、その分は戻りません。移転の資金計画には「旧オフィスの敷金はすぐ戻らない」前提を入れてください。
費用を下げる順番
- 原状回復の明細査定…上記のとおり平均36.76%の削減実績がある領域。まず明細(数量・単価)を取ることから
- 移転先の敷金交渉…事業用の敷金は交渉の余地がある項目です。フリーレント(賃料無料期間)とセットで条件を組むのが実務の定石
- 持たない選択肢の検討…人数が減っているなら、レンタルオフィス・コワーキングへの縮小移転で敷金・原状回復の問題自体を小さくできます。登記だけ残す構成も含めて
- 引っ越し業者の相見積もり…効果はありますが、金額規模は上の3つより小さい。順番を間違えないでください
よくある質問
Q居抜きで退去すれば原状回復は不要になりますか
次のテナントが内装を引き継ぐ「居抜き退去」が成立すれば、原状回復費を大幅に減らせます。ただし貸主の承諾と後継テナントのマッチングが必要で、確実な手段ではありません。狙う場合も、成立しなかったときの原状回復費を予算に残しておくのが実務です。
Q小さい事務所(10坪程度)でも同じ構造ですか
構造は同じですが金額感は変わります。小規模オフィスは坪単価2〜5万円程度の水準もあり、指定業者条項がない契約も多いため相見積もりが効きやすい。まず契約書の原状回復条項と指定業者の有無を確認してください。
Q解約予告を出した後に移転を中止できますか
解約通知の撤回は貸主の同意がない限りできません。撤回できたとしても、すでに次の募集が始まっていれば条件が変わることもあります。解約予告は移転先の目処が立ってから出すのが安全です。
まとめ
① 最大費目は原状回復(坪5.8〜10.3万円)と敷金(6〜12ヶ月)。引っ越し代ではない。
② 原状回復は査定で平均36.76%下がる(RCAA実測)。初回見積で払わない。
③ スケジュールは解約予告6ヶ月から逆算。工事完了は明け渡し日まで。
④ 下げる順番は「原状回復査定→敷金交渉→縮小の検討→引っ越し相見積もり」。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。