トップ>退去・原状回復>原状回復とは。「借りたときの状態に戻す」ではあり
原状回復とは。「借りたときの状態に戻す」ではありません
原状回復は「借りた当時の状態に戻すこと」ではありません。国土交通省のガイドラインは、原状回復を「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。
普通に住んで生じた経年変化・通常損耗のぶんは、毎月の賃料としてすでに支払っている——これがガイドライン全体の土台です。
なぜ「新品に戻す」費用を払わなくてよいのか
ガイドラインの原文はこう説明しています。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」より(2026年7月27日取得)経年変化・通常損耗の分は、賃借人は賃料として支払ってきているところで、賃借人が明け渡し時に負担すべき費用にならないはずである。(中略)このような分まで賃借人が明け渡しに際して負担しなければならないとすると、経年変化・通常損耗の分が賃貸借契約期間中と明け渡し時とで二重に評価されることになる
損耗は3つに区分される
| 区分 | 内容 | 負担 | 例 |
|---|---|---|---|
| 経年変化・通常損耗 | 普通に住んでいて生じるもの | 貸主 | 日照によるクロスの変色、家具の設置跡 |
| 通常を超える損耗 | 故意・過失、手入れ不足によるもの | 借主 | 飲みこぼし放置のシミ・カビ、落書き、破損 |
| 次の入居者のための工事 | グレードアップ・化粧直し | 貸主 | 畳の表替え、フローリングのワックスがけ |
同じ「カビ」でも、結露を放置して拡大させた場合は借主負担側に倒れます。現象ではなく原因(手入れをしたか)で区分されるのがポイントです。詳しくは経年劣化と善管注意義務の記事で扱います。
「原状回復」と「現状回復」
正しい用語は原状回復(元の状態=原状)です。「現状回復」は誤記ですが、検索でも契約書でも頻繁に見かけます。契約書に誤記があっても効力に影響はありませんが、条項の中身(何を借主負担とするか)は正確に読んでください。
実際の見積書で見る「区分」の効き方
この区分が実際にどう金額を動かすかは、実際の見積書2通を公開した記事が具体例です。経年で説明できる12項目(約42万円)が交渉で消え、故意・過失にあたる3項目だけが残りました。区分を知っているかどうかが、そのまま金額の差になります。
よくある質問
Qガイドラインに法的な強制力はありますか
ガイドライン自体は法律ではなく、あくまで指針です。ただし民法(賃借人は通常損耗・経年変化について原状回復義務を負わない旨が2020年施行の改正で明文化)と同じ方向の整理であり、実務・裁判でも広く参照されています。
Q特約で「全部借主負担」と書いてあったら従うしかないですか
通常損耗まで借主負担とする特約が有効とされるには、負担の範囲が明確に合意されているなど厳しめの条件が求められるとされています。包括的・曖昧な特約は争いになりやすい部分です。まず内容の明確さを確認し、必要なら消費生活センター等に相談してください。
Q事業用(オフィス・店舗)も同じですか
ガイドラインは居住用を対象としています。事業用賃貸借では契約で原状回復の範囲を広く定めることが一般的で、スケルトン返しの条項もあります。居住用の感覚を持ち込まないでください。
まとめ
① 原状回復=故意・過失・善管注意義務違反の復旧。新品に戻すことではない。
② 経年分は賃料で支払い済み。退去時に払うと二重取り。
③ 同じ現象でも「手入れをしたか」で負担が分かれる。
④ 区分を知っているかどうかが金額の差になる(実例で42万円)。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。