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居抜きとは。開業費が下がる仕組みと、契約書で確認すべき「出口」の話
居抜きとは、前のテナントが使っていた内装・設備・什器を残したまま物件を借りる(引き継ぐ)ことです。飲食店をゼロから作ると内装・厨房で数百万〜1,000万円級かかるところ、居抜きなら大幅に圧縮でき、工事期間も短いので開業までが速い。ここまでが良い面です。
私たちは貸主側・仲介側でこの取引を扱うので、見落とされがちな出口の話を先にします。居抜きで入ったのに、退去時は「スケルトン(内装を全部撤去した状態)に戻す」義務を負う契約が普通にあります。つまり前の人の内装の撤去費まで、あなたが背負うことがある。入口の安さと出口の重さはセットで判断してください。
仕組み:3者の合意で成立する取引
- 造作譲渡(ぞうさくじょうと)が本体…内装・設備は前テナントの所有物なので、前テナントから買い取ります(造作譲渡料)。無償譲渡から数百万円まで、状態と商圏で大きく動きます
- 貸主の承諾が必須…物件の賃貸借契約は貸主と新テナントで結び直します。前テナントと勝手に売買しても、貸主が認めなければ成立しません。「居抜き可」かどうかは貸主の方針次第で、原状回復して返してほしい貸主も多くいます
- 什器・設備の中身を確認する…厨房機器がリース品なら所有権はリース会社にあり、譲渡の対象外です。リース残債の引き継ぎを求められるケースもあるため、譲渡対象のリストと所有権の確認は契約前の必須作業です
出口の話:原状回復義務は「どこまで戻すか」で決まる
| 契約の定め | 退去時にやること | 負担の重さ |
|---|---|---|
| 「スケルトン返し」 | 前テナント分も含めた内装を全部撤去 | 最重。坪数万円級の解体費 |
| 「入居時の状態に戻す」 | 自分が変えた部分だけ戻す | 中。ただし「入居時の状態」の記録が必須 |
| 「次の居抜き希望者に譲渡できれば免除」 | 居抜き退去が成立すれば撤去なし | 軽。ただし成立は保証されない |
重要なのは、どのパターンかは法律ではなく契約書の文言で決まることです。オフィス移転の記事で書いた原状回復費(坪5.8〜12.3万円の実測)は内装が軽いオフィスの話で、飲食店のスケルトン戻しはさらに重くなります。契約前に「退去時はどの状態に戻すのか」を文言で確認し、「入居時の状態」を写真と図面で記録しておく——これが居抜き入居の最重要チェックです。
造作譲渡料の考え方:値段はどう決まるか
- 設備の残存価値より「商圏と時間」で決まる…中古の厨房機器自体の価値は限定的です。買い手が払っているのは「工事費数百万円と開業までの数ヶ月を省略できる権利」で、立地が良いほど強気の値付けになります
- ゼロ円居抜きは疑ってかかる…前テナントが撤去費(スケルトン戻し費用)を逃れるために無償で置いていくケースがあります。もらう側が将来その撤去費を背負う構造なので、無償はお得ではなく「撤去費の付け替え」であることを理解した上で判断を
- 設備の故障リスクは買い手持ちが通例…中古の厨房機器に保証はありません。エアコン・冷蔵設備・給排気は内見時に動作確認し、製造年を控えて更新費用を予算に入れておきます
居抜きが向くケース・向かないケース
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| 前店と同業態(飲食→飲食、美容→美容)で設備を活かせる/初期資金を抑えて早く開業したい/立地優先で内装は二の次 | 業態が違い結局大規模工事になる(居抜きの意味が薄れ、撤去費だけ引き継ぐ)/ブランドの世界観が重要で内装をゼロから作りたい/長期の設備更新費を織り込めない資金計画 |
よくある質問
Q居抜きで退去する側です。造作譲渡はどう進めればいいですか
まず貸主(管理会社)に居抜き退去の可否を確認してください。承諾が取れたら、仲介会社や居抜きマッチングサービスで次のテナントを探します。成立すればスケルトン戻し費用が浮き、造作譲渡料も入る可能性がありますが、募集期間中の家賃は続くため、退去期限から逆算して早めに動くのが実務です。
Q住居の賃貸にも居抜きはありますか
家具付き物件という形はありますが、住居では造作譲渡の商習慣はほぼありません。居抜きは基本的に店舗・事務所など事業用の話です。
Q造作譲渡料に相場はありますか
「なし〜数百万円」が実態で、機械的な相場表は作れません。目安になるのは①同等の内装を新規で作った場合の工事費、②営業できる状態までの時間価値、③前テナントの退去事情(急いでいれば安い)の3点です。複数の居抜き物件を見比べると値付けの感覚がつかめます。
Q契約書のどこを見れば「スケルトン戻し」か分かりますか
原状回復条項に「本物件を原状(スケルトン状態)に復して返還する」「造作等を撤去し」などの文言があるかを確認します。曖昧な場合は、契約前に「退去時の原状の基準」を書面で特定してもらってください。ここを口頭で済ませるのが一番の事故のもとです。
まとめ
① 居抜き=前テナントの内装・設備を引き継ぐ取引。本体は造作譲渡で、貸主の承諾が必須。
② 最大の注意は出口。契約によっては前テナント分まで含むスケルトン戻し義務を負う。
③ ゼロ円居抜きは「撤去費の付け替え」の可能性。リース品の所有権と設備の製造年も確認。
④ 同業態の引き継ぎは強いが、業態が違うなら居抜きの意味は薄い。入口の安さと出口の重さはセットで。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。