勤怠。労働時間の客観的記録は義務、1分単位が原則です
勤怠とは、出退勤・休憩・残業・休暇といった従業員の労働時間に関する記録のことです。押さえるべき法律上のポイントは2つあります。
1つ目、2019年4月から、会社には労働時間を「客観的な方法」で把握する義務があります(労働安全衛生法)。タイムカード・ICカード・PCの使用記録などが客観的な方法で、自己申告のみは原則として認められません。2つ目、日々の労働時間の端数切り捨ては違法です。「15分未満は切り捨て」の運用は、その分の賃金未払いになります(1ヶ月の合計時間で30分未満切り捨て・以上切り上げのみ例外的に認められています)。3名分の勤怠を自社ツールで回している立場から、実務を整理します。
義務の中身
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 把握方法 | タイムカード・ICカード・PCログ等の客観的記録。やむを得ず自己申告にする場合は、実態調査などの措置が必要 |
| 対象者 | 管理監督者・裁量労働制の人を含む全労働者(健康確保の観点から) |
| 単位 | 1分単位が原則。日々の切り捨て・切り上げは不可 |
| 保存 | 賃金台帳・出勤簿等は当面3年(将来5年へ)保存 |
| 関連義務 | 年5日の有給取得の管理簿、36協定の上限管理 |
つまずきやすい実務
- 「9時始業だから8:55の打刻は9:00」はOK…始業前の待機時間まで労働時間とは限りません。問題なのは実際に働いた時間を切り捨てること。朝礼・着替え・清掃が義務なら、それは労働時間です
- 休憩を取らせていないと違法…6時間超で45分、8時間超で60分の休憩が必要です。「忙しくて休憩なし」を勤怠上は取ったことにする運用は、記録の改ざんになります
- 直行直帰・在宅の記録…スマホの打刻アプリやPCログで客観性を担保します。社用携帯があれば打刻アプリを入れるのが最も簡単です
- 管理監督者も打刻が必要…残業代の対象外でも、健康確保のための労働時間把握義務はあります。「店長だから打刻不要」は誤りです
勤怠も給与も電子契約も、バラバラに入れるより1つのクラウドで揃えたほうが結局安く済みます。どちらも無料で試せます。
ツールの選び方
- 数名ならスプレッドシート+打刻でも回る…実際、当社は3名分の打刻をGoogleスプレッドシート+自社の簡易ツールで運用しています。有給申請も同じ仕組みに載せれば、月末の集計が数分で終わります
- 10名前後で専用システムの出番…集計・残業アラート・有給管理・給与ソフト連携が必要になったら、給与計算と同じベンダーで揃えるのが結局安い。マネーフォワード・freee・ジョブカン等が定番です
- タイムレコーダー(物理)は今も現役…店舗・現場では打刻機+ICカードが確実です。クラウド連携型なら集計まで自動化できます
- 導入の判断軸は「月末の集計時間」…エクセル集計に毎月3時間かかっているなら、月数千円のシステムで元が取れます。経理代行の記事と同じ「時間の時給換算」で判断してください
勤怠データが守ってくれるもの
- 未払い残業代の請求から会社を守る…記録がないと、労働者側の主張(メールの送信時刻など)が採用されがちです。正確な記録は会社の防御でもあります
- 36協定の上限管理…月45時間に近づいた時点でのアラートは、システム化の最大の価値です。超えてから気づくと打つ手がありません
- 有給5日義務の達成管理…基準日から1年の消化状況は、勤怠システムなら自動集計されます
- 助成金・調査への対応…雇用関係の助成金申請や労基署の調査では、勤怠記録の提出が求められます。整っていること自体が資産です
よくある質問
Q残業時間を15分単位で切り捨ててもいいですか
できません。日々の労働時間は1分単位が原則です。1ヶ月の合計時間について30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理だけが例外的に認められています。
Q紙のタイムカードでも法的にOKですか
OKです。タイムカードは客観的な記録方法として認められています。問題は集計の手間とミスなので、規模が大きくなったらデジタル化を検討する、という順番で構いません。
Q勤怠記録は何年保存しますか
賃金台帳や出勤簿などの労働関係書類は、当面3年(法改正で将来5年へ延長予定)の保存が必要です。クラウドなら自動保存されますが、解約時のデータ出力手段は確認しておいてください。
Q役員の勤怠は必要ですか
労働者ではない役員に労働時間管理の義務はありません。ただし従業員兼務役員の労働者部分は対象です。
まとめ
① 客観的方法での労働時間把握は義務(2019年4月〜)。自己申告のみは原則NG、管理監督者も対象。
② 日々の端数切り捨ては違法。1分単位が原則で、月合計の30分丸めだけが例外。
③ 数名ならスプレッドシート+打刻で回る。集計に月3時間かかるならシステム化で元が取れる。
④ 勤怠記録は36協定の上限管理・有給5日の達成管理・未払い残業請求への防御まで支える資産。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。