時間単位年休。労使協定を結べば年5日まで時間単位で取れます
年次有給休暇は原則として1日単位で与えるものですが、労使協定を締結すれば年5日の範囲内で時間単位の取得ができます(労働基準法39条4項)。通院や子どもの送り迎えのために半日休むのは大きい、という場面で使える制度です。
実務で押さえるべき点は3つあります。①労使協定が必須(就業規則だけでは導入できない)、②上限は年5日で、繰越分を含めても5日を超えられない、③年5日の取得義務(2019年4月から)には時間単位年休をカウントできない。3つ目は特に重要で、時間単位で細かく取らせても取得義務を満たしたことにはなりません。
導入の要件
- 労使協定を締結する…労働者の過半数で組織する労働組合、または過半数を代表する者との書面による協定が必要です。就業規則に書くだけでは導入できません
- 協定で4つの事項を定める…①対象となる労働者の範囲 ②時間単位年休の日数(年5日以内) ③時間単位年休1日の時間数 ④1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
- 就業規則にも記載する…休暇は就業規則の絶対的必要記載事項なので、時間単位年休の制度を設けるなら就業規則にも定めます
- 労働基準監督署への届出は不要…この労使協定は届出義務がありません(就業規則の変更届は常時10人以上の事業場で必要)
- 「1日の時間数」は所定労働時間を基準に…1日の所定労働時間が7時間30分なら、時間単位年休1日は8時間として扱います(1時間未満の端数は時間単位に切り上げ)
- 対象労働者を限定できる…業務の性質上、時間単位での取得が困難な業務に従事する労働者を除外できます。ただし「育児をする者に限る」といった取得目的による限定はできません
- 2時間単位などにもできる…1時間以外を単位とする場合は協定で定めます。ただし1日の所定労働時間を上回る単位は設定できません
上限は年5日
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上限 | 年5日の範囲内 |
| 前年からの繰越分 | 繰越分を含めて年5日が上限 |
| 時間数への換算 | 1日の所定労働時間×5日(8時間なら40時間) |
- 繰越しても5日を超えられない…前年度の未使用分が繰り越された場合でも、時間単位で取得できるのはその年度で通算5日分までです
- 時間数で管理する…1日の所定労働時間が8時間なら40時間、7時間30分なら(1日8時間換算で)40時間が枠になります。残時間数を給与明細や勤怠システムで見えるようにしておくと運用が楽です
- 残った時間は日単位に戻る…年度末に時間単位の枠を使い切らなくても、年休自体は日数として残ります。翌年度は改めて5日分の枠が使えます
- 5日を超えて与えると違法か…労基法39条4項の枠を超える部分は法定の年休として扱えません。会社独自の有給制度(法定外)として整理する必要があります
5日取得義務との関係
- 時間単位年休は取得義務のカウントに含められない…2019年4月から、年10日以上の年休が付与される労働者には年5日の取得が義務づけられています。この5日に時間単位で取得した分は含められません
- 半日単位は0.5日としてカウントできる…半日単位で取得させた場合は0.5日として取得義務の日数に算入できます。時間単位との違いがここに出ます
- 時間単位を推奨しすぎると取得義務を満たせない…細かく取れる制度があると、まとまった休みを取らなくなることがあります。取得義務の管理は日単位で別に追う必要があります
- 時季指定義務も日単位で行う…5日取得できていない労働者には会社が時季を指定します。この指定は日単位で行うものです
半日単位年休との違いと運用
| 項目 | 時間単位年休 | 半日単位年休 |
|---|---|---|
| 法律上の根拠 | 労基法39条4項 | 法律に規定なし(行政通達で容認) |
| 労使協定 | 必要 | 不要 |
| 上限 | 年5日 | 上限なし |
| 5日取得義務へのカウント | できない | 0.5日としてできる |
- 半日単位のほうが手軽…労使協定が不要で上限もなく、取得義務にもカウントできます。まず半日単位を整備し、必要なら時間単位を足すという順序が現実的です
- 半日の定義を決めておく…午前・午後で分けるのか、所定労働時間の半分とするのかを就業規則で定めます。休憩時間の扱いも決めます
- 勤怠システムの対応を確認する…時間単位年休を入れると残時間の管理が必要になります。手計算だと誤りが出やすいので、勤怠システムが対応しているかを先に確認します
- 当社の考え方…3名の会社なので半日単位で運用しています。時間単位を入れるほどの細かさは不要で、むしろ5日取得義務の管理を単純に保つことを優先しました
時間単位年休は「あると便利だが、管理が増える」制度です。導入するなら労使協定と勤怠管理の整備が前提になります。5日取得義務にカウントできないという点は、制度を入れる前に必ず押さえておく必要があります。
よくある質問
Q時間単位年休は就業規則だけで導入できますか
できません。労働基準法39条4項により労使協定の締結が必要です。あわせて就業規則にも記載します。労使協定の届出は不要です。
Q上限の年5日は繰越分を含みますか
含みます。前年度からの繰越分があっても、時間単位で取得できるのはその年度で通算5日分までです。
Q時間単位年休は5日取得義務にカウントできますか
できません。年5日の取得義務には時間単位で取得した分を算入できません。半日単位は0.5日としてカウントできるため、取得義務の管理では両者を区別する必要があります。
Q1時間未満の単位(30分など)も設定できますか
できません。時間単位年休は1時間を最小の単位とします。2時間単位などにすることは労使協定で定められますが、1時間より細かい単位は認められていません。
まとめ
① 時間単位年休は労使協定が必須(労基法39条4項)。就業規則だけでは導入できない。届出は不要。
② 上限は年5日。繰越分を含めて5日まで。
③ 協定で定めるのは①対象労働者 ②日数 ③1日の時間数 ④1時間以外を単位とする場合の時間数。
④ 5日取得義務にはカウントできない。半日単位なら0.5日としてカウントできる。
⑤ 手軽さでは半日単位が先(労使協定不要・上限なし・取得義務にカウント可)。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。