福利厚生費。「全員対象・妥当な金額」を外すと給与になります
福利厚生費とは、会社が任意で従業員に提供する制度の費用です(健康保険料など法律で義務のものは法定福利費という別科目)。経費として認められる条件はシンプルで2つ。①全従業員を対象にしていること、②金額が社会通念上妥当であること。
この2条件を外れると現物給与として本人に所得税がかかり、会社は源泉徴収漏れという最悪の結果になります。「役員だけの人間ドック」「特定の人だけの手当」が典型的なNGパターン。制度ごとの具体的な判定基準(社員旅行・食事補助・慶弔金)を、数字で押さえていきます。
制度別の判定基準
| 制度 | 福利厚生費になる条件 |
|---|---|
| 食事補助 | ①本人が半額以上を負担②会社負担が月3,500円以下(税抜)。どちらか外すと全額が給与 |
| 社員旅行 | 4泊5日以内(海外は現地4泊5日以内)・全従業員の50%以上が参加。役員のみはNG |
| 健康診断 | 全従業員対象・会社が直接医療機関へ支払い。一定年齢以上の人間ドックも全員に機会があればOK |
| 慶弔見舞金 | 慶弔規程があり、金額が社会通念上妥当(結婚祝1〜3万円、香典1万円程度が目安) |
| 忘年会・新年会 | 全員参加が原則の行事なら福利厚生費。一部の人だけなら交際費や給与 |
| 社宅 | 会社が借りて貸す形+本人から一定額(賃貸料相当額の50%以上等)を徴収 |
給与認定を避ける3原則
- ①規程を作る…慶弔金・社宅・食事補助は就業規則や個別規程に定めるのが基本。「その都度の裁量」で出すお金は、給与や役員賞与と疑われます
- ②全員に開かれた制度にする…実際に使う人が少なくても構いませんが、「対象が限定されていない」ことが要件です。役員限定・特定部署限定の制度は原則NG
- ③現金支給にしない…現金で渡すと原則給与になります(慶弔金など社会通念上妥当な範囲のものを除く)。食事補助を現金手当にした瞬間、課税対象になるのが典型例です
- 1人社長の会社の注意…従業員がいない会社では「全員=役員のみ」となり、福利厚生費として認められにくい領域です。健康診断・社宅などは個別に要件を確認してください
小さな会社で使いやすい制度
- 健康診断…年1回の定期健康診断は労働安全衛生法上の義務でもあります。会社が医療機関へ直接支払えば福利厚生費。義務であり福利厚生でもある、最も使いやすい制度です
- 慶弔見舞金…規程を1枚作るだけで運用でき、社員の節目に効く制度です。金額は世間相場(結婚祝1〜3万円、弔慰金1〜5万円等)に合わせます
- 食事補助…月3,500円という上限は小さく見えますが、年4.2万円分の実質的な手取り増(非課税)です。オフィス環境と並んで満足度の高い制度
- 社員旅行・懇親会…回数や規模より「全員参加の機会があるか」。少人数の会社ほど条件を満たしやすい制度です
消費税と実務の注意
- 消費税の区分は中身で決まる…食事代・旅行代は課税仕入、慶弔金(現金)は不課税、健康診断は課税——福利厚生費という科目でひとくくりにせず、取引ごとの区分を確認してください
- 領収書は会社宛で…本人宛の領収書を精算する形だと、実質的な現金給付と見られやすくなります。会社が直接契約・支払いをする形が安全です
- 「福利厚生代行サービス」の会費…外部サービスの利用料も、全員が使える契約なら福利厚生費です。中身の利用実績まで管理する必要はありません
- 金額が跳ねる制度は事前に税理士へ…社宅や高額な社員旅行は、要件を1つ外すだけで全額給与課税になります。顧問税理士に先に確認するのが、後から追徴を受けるより圧倒的に安い
よくある質問
Q役員だけの人間ドックは経費になりますか
福利厚生費としては認められにくく、給与(役員報酬)と扱われるリスクがあります。全従業員に受診機会を用意した上で、年齢等の合理的な基準で対象を決めるのが安全です。
Q従業員がいない1人社長でも福利厚生費は使えますか
範囲が非常に狭くなります。「全員対象」の要件が実質的に機能しないため、健康診断など個別に認められ得るものを税理士と確認しながら使うのが現実的です。
Q食事補助の3,500円は税込ですか税抜ですか
消費税抜きの金額で判定します(月3,500円以下)。本人が半額以上を負担していることも同時に必要です。
Q福利厚生費に上限はありますか
制度全体の上限はありませんが、制度ごとに実務基準(食事3,500円等)があり、全体としても社会通念上妥当な水準であることが求められます。突出して高額な支出は説明を求められます。
まとめ
① 2大条件:全従業員が対象・金額が社会通念上妥当。外れると現物給与として課税。
② 数字で覚える:食事補助は本人半額負担+月3,500円(税抜)、社員旅行は4泊5日以内・参加50%以上。
③ 3原則:規程を作る・全員に開く・現金支給にしない。1人社長は範囲が狭い。
④ 会社が直接支払う形にする。金額が跳ねる制度(社宅・大型旅行)は事前に税理士確認。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。