法定福利費。福利厚生費との違いと「給与の15%」という実額
法定福利費とは、法律で会社に負担が義務付けられている社会保険料・労働保険料のことです。内訳は健康保険・厚生年金・介護保険の会社負担分、子ども・子育て拠出金(全額会社負担)、労災保険(全額会社負担)、雇用保険の会社負担分。合計するとおおむね給与の15〜16%前後が目安になります。
対して、社宅・慶弔見舞金・健康診断の上乗せなど会社が任意で提供するものは福利厚生費。「法定=義務、厚生=任意」で科目も性質も別物です。月給30万円の人を雇うと会社の負担は月34〜35万円——この人件費の実額感覚から整理します。
内訳:何がいくらか
| 項目 | 会社負担の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 健康保険(+介護保険) | 約5〜6% | 労使折半。協会けんぽは都道府県で料率が異なる |
| 厚生年金 | 9.15% | 労使折半(全体18.3%)。法定福利費の最大項目 |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 全額会社負担 |
| 労災保険 | 0.25%〜(業種別) | 全額会社負担。年度更新で精算 |
| 雇用保険 | 約0.8% | 会社負担分(2026年度・一般の事業) |
| 合計 | 給与の約15〜16% | 標準報酬月額ベースで計算(算定基礎届) |
福利厚生費との違い
- 法定=義務、厚生=任意…法定福利費は払わない選択肢がない法定コスト。福利厚生費は社宅・食事補助・オフィス環境・慶弔金など会社の裁量です
- 福利厚生費には「全員向け・社会通念上妥当」の条件…特定の役員だけの豪華な福利は給与(現物給与)と認定されるリスクがあります。規程を作って全員に開かれた制度にするのが税務の型です
- 決算書の見方…人件費の総額は「給与+賞与+法定福利費+福利厚生費」。求人の給与額だけ見て採用予算を組むと15%ずれる——1人雇う判断では年収×1.15で見積もるのが実務です
- 役員にも法定福利費はかかる…役員報酬も社会保険の対象なので、1人社長でも報酬額×約15%の会社負担が発生します。役員報酬の設計はこの負担込みで
実務の論点
- 計算のベースは標準報酬月額…実際の給与そのものではなく、算定基礎届で決まる標準報酬月額×料率で毎月の保険料が決まります。通勤手当も含んだ4〜6月の平均が効いてくる構造です
- 料率は毎年動く…健康保険は3月分から、雇用保険は4月から改定されるのが通例です。給与ソフトの料率更新を年次イベントに組み込んでください(2026年度は雇用保険が引き下げでした)
- 建設業は見積書に法定福利費を明示…国交省の標準見積書ルールで、建設業の下請見積では法定福利費を内訳明示する運用が定着しています。該当業種は見積書の記事とセットで様式を整えてください
- 仕訳はシンプルに…毎月の納付時に「法定福利費/預金」(従業員預り分は預り金の取り崩し)。決算では未払計上(未払費用)を忘れずに
採用・経営判断への落とし込み
- 1人あたりの本当のコスト…月給30万円なら法定福利費込みで月約34.6万円、年間約415万円+賞与+採用・教育コスト。外注との比較はこの実額で行ってください
- パートの社会保険適用拡大…短時間労働者への適用は段階的に広がっており、企業規模要件の引き下げ・撤廃の方向が続いています。週20時間前後のシフト設計は、加入で人件費がどう変わるかを見てから決める時代です
- 「手取りを増やす」の会社側コスト…給与を1万円上げると、会社の負担は法定福利費込みで約1.15万円増えます。手当や福利厚生(非課税枠のあるもの)との組み合わせで設計する余地があります
- 助成金の計算にも登場する…雇用関係の助成金は法定福利費を含めて要件・支給額が設計されているものがあります。人件費の区分を正しく付けておくと申請がスムーズです
よくある質問
Q法定福利費と福利厚生費を間違えて仕訳するとまずいですか
税額への影響は小さいことが多いですが、人件費分析や建設業の見積明示で困ります。「法律で義務=法定福利費」の基準で一貫させてください。
Q会社負担分を従業員に負担させることはできますか
できません。折半割合や全額会社負担の項目は法律で決まっており、従業員に転嫁する合意は無効です。
Q個人事業主に法定福利費はありますか
従業員を雇っていれば、その従業員分の会社負担(労災・雇用保険・要件を満たせば社保)が法定福利費です。事業主本人の国民健康保険・国民年金は経費ではなく所得控除の世界です。
Q賞与にも法定福利費はかかりますか
かかります。賞与も社会保険料・雇用保険料の対象で、賞与支払届の提出とセットで会社負担が発生します。賞与の予算組みも×1.15の感覚で。
まとめ
① 法定福利費=法律で義務の会社負担(健保・厚生年金・拠出金・労災・雇用)。合計で給与の約15〜16%。
② 福利厚生費は任意の制度。全員向け・妥当な範囲でないと給与認定のリスク。
③ 計算ベースは標準報酬月額、料率は毎年更新。決算は未払計上を忘れない。
④ 採用判断は年収×1.15で。パート適用拡大と建設業の見積明示ルールも押さえる。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。