会社の固定費を棚卸しする手順。4人の会社が月額サービスを全部書き出したら、重複・値上げ・放置で月2.3万円が出てきました
固定費の棚卸しは、請求メール・会計ソフトのカード明細12か月・通帳の口座振替の3経路を突き合わせないと落ちます。メールだけでは年1回請求と別アドレス宛てが見えず、カード明細だけでは口座振替が見えません。
当社(4人の会社)が実際に全部書き出したら、月8万円前後の月額サービスのうち、自社ツールと重なる業務ツール(月21,800円)と作る予定が終わっていた音楽生成(月1,200円)で月2.3万円が出てきました。ほかに、気づいていなかった値上げが2件、無料と思い込んでいた有料プランが1件、無料トライアルの自動有料化が1件、設定変更で3倍になった従量課金が1件。判定は「残す・下げる・やめる・保留」の4つに分け、年払いは途中解約しても戻らないので更新日の1か月前に再判定します。台帳の9列と、見つかった問題の中身をそのまま載せます。
メール検索だけでは固定費の棚卸しにならない。3つの経路で突き合わせる
当社(4人の会社)が固定費の棚卸しを始めたのは、「月額で払っているものを全部言えるか」と聞かれて答えられなかったからです。最初にやったのは、会社のメール2箱から直近60〜90日分の請求・領収メールを検索して書き出すこと。これで月額のサービスは大半が出てきました。ところが会計ソフトのカード明細12か月分と並べると、メールだけでは落ちているものが3種類ありました。
| 経路 | 見えたもの | 落ちたもの |
|---|---|---|
| 請求・領収メール(直近60〜90日) | 月額のSNS・ストレージ・ホスティング・AIの従量チャージ | 年1回請求のもの(直近の検索期間に入らない)。契約者向けメールが別アドレスに届くもの |
| 会計ソフトのカード明細(12か月) | 同じカードに載る定額・従量の全件。月ごとの増減 | 口座振替のもの。紙やPDFで請求が来るもの |
| 口座振替・PDF請求書(通帳と請求書の控え) | 業務ツールの月額、媒体の掲載料、回線・携帯 | 金額がPDFの中にしかなく一覧に出ない |
最大の落とし穴は、年1回請求の会計クラウドが「直近90日のメール」に出てこなかったことです。しかも契約者向けの請求メールは、会社の代表アドレスではなく契約時に使った別のアドレスに届いていました。メールで「契約していない」と結論を出してはいけない。カード明細か通帳で裏を取るのが順番です。
- 請求・領収メールは「どんなサービスがあるか」の一覧に使う…金額の確定には使わない。年1回請求と別アドレス宛てが落ちる
- 会計ソフトのカード明細12か月で金額を確定する…同じカードに載るものは全部出る。1年分を見ないと年払いと「ある月だけ跳ねた従量」が見えない
- 口座振替とPDF請求書は通帳から逆引きする…毎月同じ日に同じ額が落ちている相手を全部書き出し、何の契約かを一つずつ確かめる
4人の会社の固定費はこうなっていた(月額換算・概算)
3つの経路を突き合わせてできた台帳の中身です。金額は2026年9月時点の月額換算で、百円単位に丸めています。年払いは12で割りました。事務所の家賃・媒体の掲載料・協会の会費のように、棚卸しをしなくても分かっているものは表から外しています。
| 科目 | 月額換算 | 払い方 | 棚卸しで分かったこと |
|---|---|---|---|
| 会計クラウド(年払い) | 約7,100円 | カード・年1回 | 2年契約の途中で値上げ。更新から新価格で年+19,800円 |
| 業務ツールA(物件確認系) | 約21,800円 | 口座振替・毎月 | 自社で作ったツールと機能が重なる。解約候補 |
| AIの定額2本 | 約40,000円 | カード・毎月 | 1本は上位プラン。使う人が1人なので妥当かを毎月見る |
| AIの従量課金2本 | 約5,000〜18,000円 | カード・自動チャージ | 7〜8月はほぼゼロ、9月に跳ねた。原因は自動処理の設定変更 |
| クラウドストレージ | 約1,500円 | アプリストア・毎月 | 2025年4月に1,300→1,450円へ値上げ。気づいていなかった |
| SNSの有料プラン | 約900円 | カード・毎月 | 50%オフは2か月だけ。3か月目から倍額 |
| ホスティング | 約1,400円($9) | カード・毎月 | 無料プランだと思い込んでいた |
| ドメイン(年払い) | 約300円 | カード・年1回 | 更新月がばらばら。失効すると会社のメールが止まる |
| 音楽生成(解約済) | 1,200円→0円 | カード・毎月 | 作る予定が終わっていたのに続いていた |
合計すると月8万円前後。そのうち「使っていない・重なっている・値上がりに気づいていない」が月約2.3万円ありました。業務ツールAの約21,800円と音楽生成の1,200円です。年にすると27万円を超えます。4人の会社の固定費としては小さくありません。
見つかった問題は5種類。どれも「放っておくと増える」方向だった
台帳を眺めると、問題の出方は5つに分かれました。共通しているのは、どれも何もしないと費用が増える方向に動くことです。サブスクは申し込むときだけ人が判断し、あとは自動で続きます。
- ①重複…業務ツールAは、あとから自社で作った仕組みと機能が重なっていた。片方を入れた人と、もう片方を作った人が違うと起きる。月21,800円
- ②値上げに気づかない…会計クラウドは2025年6月の改定で年65,736円から85,536円へ(+30%)。クラウドストレージは1,300→1,450円。どちらも告知メールは来ていたが、請求額が変わるまで誰も読んでいない
- ③無料だと思い込んでいた…ホスティングは無料プランのつもりが$9の有料プランだった。「無料で始めた」記憶のまま、途中でプランを上げたことを忘れる
- ④無料トライアルの自動有料化…決済の不正検知の上位機能が、トライアル終了日の翌日から1取引8円で自動課金される通知が来ていた。終了日は半年先。メールを閉じたら忘れる種類の請求
- ⑤従量が設定変更で跳ねる…AIの従量課金は7〜8月ほぼゼロだったのが、9月に2本合わせて約18,000円。自動処理の読み取り回数を1回から3回に変えたのと、新しい自動処理を始めた月と一致した。定額ではないので台帳の金額が毎月変わる
⑤は固定費ではありませんが、同じ台帳に載せないと見えません。従量課金は「使った分だけ」なので安心しがちですが、使う側の設定を変えた月に3倍になることがあり、誰も請求書を見ていなければ翌月も続きます。
値上げの履歴そのものはバックオフィスSaaSの値上げ履歴にまとめています。会計クラウドの改定は「施行日からではなく次の契約更新から」適用されたため、当社は2年契約の残り約7か月を旧価格で使えました。料金の実額の記事に、契約履歴と請求額をそのまま載せています。
判定は4つに分ける。「やめる」より「更新日まで待つ」が多くなる
台帳の1行ずつに、次の4つのどれかを書きます。当社で最も多かったのは「保留(更新日まで待つ)」でした。年払いの契約は途中で解約しても残りの期間の料金が戻らないのが普通で、解約の判断と解約の実行は別の日になります。
| 判定 | 基準 | 当社の例 |
|---|---|---|
| 残す | 毎週使っている。代わりがない | 会計クラウド・AIの定額1本・ドメイン |
| 下げる | 使っているが、プランか払い方を変えれば安くなる | AIの定額の上位プラン(使い切っているかを毎月見て、使い切れない月が続けば1段下げる) |
| やめる | 使っていない。重なっている。作る予定が終わった | 音楽生成(解約済)・業務ツールA(解約候補) |
| 保留 | やめたいが年払いの途中。更新日の1か月前に再判定 | ホスティング(年払いに切り替える前に要否を決める) |
- 次回更新日を全行に書く…月払いは「毎月◯日」、年払いは「◯年◯月◯日」。管理画面の契約情報か、初回の請求メールの日付から逆算する
- 年払いは更新日の1か月前にリマインダーを置く…当社は会計クラウドの更新が12月27日なので11月末に判定する。自動更新の停止期限が「更新日の◯日前まで」と決まっているサービスがあるので、期限も一緒に書く
- 「やめる」は解約手順まで台帳に書く…管理画面のどこから解約するか、解約後いつまで使えるか。音楽生成は解約時に翌月50%オフの引き止めが出たが、使う予定がないので断った。割引は「やめる」理由を変えない
- 値上げの告知が来たら「下げる」か「長期契約で据え置く」を選ぶ…施行日より前に年払い・複数年契約に切り替えれば、その契約期間は旧価格のまま。当社は結果的にこれで7か月分の値上げを避けた
- 従量課金は月ごとの上限を決める…自動チャージの金額と回数を管理画面で確かめ、使う側の設定を変えた月は翌月の明細を必ず見る
台帳の列はこれだけ。会計ソフトの明細から年1回作り直す
台帳はスプレッドシート1枚で足ります。列を増やしすぎると更新されなくなるので、当社は次の9列にしました。
| 列 | 書くこと | なぜ要るか |
|---|---|---|
| サービス名 | 請求書に出る名前 | カード明細の表記(英語の略称)と突き合わせるため |
| 用途・使う人 | 何に使うか。誰が使うか | 使う人が辞めたとき、重なったときに気づける |
| 払い方 | カード・口座振替・請求書払い・アプリストア | 経路ごとに洗い出しをやり直すため |
| 請求サイクル | 毎月◯日・年1回◯月 | 年1回のものが「ない」と誤認されるのを防ぐ |
| 月額換算 | 年払いは12で割る | 合計を出し、重みを比べる |
| 次回更新日 | 自動更新される日 | 解約・ダウングレードの期限がここで決まる |
| 解約方法 | 管理画面のどこか・何日前まで | やめると決めた日に迷わない |
| 値上げ告知 | 届いた日と施行日 | 施行前に長期契約へ切り替える判断に使う |
| 判定 | 残す・下げる・やめる・保留 | 次の棚卸しで前回の判断を見返す |
最初の1枚ができたら、以後は年1回、会計ソフトのカード明細を12か月分ダウンロードして「毎月同じ相手」を抽出し、台帳と突き合わせるだけです。当社はカード1枚に定額・従量がほぼ全部載っていたので、明細の摘要で並べ替えるだけで12か月の増減が見えました。メールの検索で一覧を作り直す必要はありません。
棚卸しの土台は会計ソフトのカード明細です。当サイトはマネーフォワードの有料契約者で、本文の12か月分の抽出もその明細から取りました。未導入なら、どちらも無料で試せます。
通帳にしか出ない固定費は、別に1回やる
携帯・固定電話・回線・業務ツールの口座振替は、カード明細に出ません。当社の業務ツールAも口座振替で、メールにもカードにも出なかったので、棚卸しの最初の一覧では落ちていました。通帳で「毎月同じ日に同じ額」を拾い、契約書か請求書の控えで中身を確かめます。携帯と回線は契約期間と解除料が決まっているので、更新月を先に確かめてから相見積もりを取ります(社用携帯・ネット・通信の記事も参照)。
1〜10人の会社で詰まるところ
- 申し込んだ人が1人ずつ違う…社長・営業・外注がそれぞれ自分のカードや自分のアドレスで申し込むと、会社に請求の記録が残らない。立替精算の明細も棚卸しの対象に入れる
- アプリストア経由は会社名で検索できない…クラウドストレージはアプリストアの請求で、サービス名でメールを検索しても出ない。「ストア名」で検索する
- プリペイド式の従量は請求が止まって気づく…残高を買い足す方式の外部サービスは、残高が切れると自動処理が静かに止まる。自動チャージの有無を台帳に書く
- 解約すると会社のメールやサイトが止まるものがある…ドメインとホスティングは「使っていない」ように見えても、会社のメールアドレスやホームページがその上に載っている。やめる前に何が載っているかを確かめる
- 「無料で始めた」の記憶が一番危ない…無料プランで始めて、途中で上限に当たって有料にした記憶は残らない。台帳に「有料にした日」を書く
- 値上げの告知は読んでも覚えていない…告知から施行まで数か月あるものが多い。告知メールが来た日に台帳の「値上げ告知」列を埋め、施行前の月に再判定する
よくある質問
Q会計ソフトのカード明細を見れば、固定費は全部分かりますか
同じカードに載るものは全部分かりますが、口座振替・請求書払い・別のカードや個人の立替で払っているものは出ません。当社では月21,800円の業務ツールが口座振替で、カード明細にもメールにも出ていませんでした。通帳で「毎月同じ日に同じ額」を拾う作業を1回は別にやる必要があります。
Q年払いのサービスを途中で解約したら、残りの期間の料金は戻りますか
多くのサービスは戻りません。年払いは「1年分を前払いで買う」契約で、途中解約は次回の自動更新を止める扱いになります。やめると決めても、解約の実行は更新日の直前です。自動更新の停止期限が「更新日の◯日前まで」と決まっているサービスがあるので、更新日と停止期限の両方を台帳に書いておきます。
Q無料トライアルを使うとき、自動で有料にならないようにするには
申し込んだ日に、トライアルの終了日と、終了後の料金をメモに残します。当社では決済の不正検知の上位機能が、半年先の終了日の翌日から1取引8円で自動課金される通知が来ていました。終了日の1週間前にリマインダーを置き、使っていなければその時点で下位プランに戻します。カードを登録しないと始められないトライアルは、特にこの管理が要ります。
Q従量課金は固定費ではないので、台帳に載せなくてもいいですか
載せたほうがいいです。当社のAIの従量課金は7〜8月ほぼゼロが9月に2本で約18,000円になりました。自動処理の設定を変えて呼び出し回数が3倍になった月と一致しています。定額ではないからこそ、月ごとの金額を同じ台帳で見ないと変化に気づけません。自動チャージの金額と回数も書いておきます。
Q棚卸しはどのくらいの頻度でやればいいですか
最初の1回を3経路で作れば、以後は年1回で足ります。会計ソフトのカード明細を12か月分ダウンロードして「毎月同じ相手」を抽出し、前回の台帳と差分を見る作業です。それとは別に、値上げの告知メールが来た日と、年払いの更新日の1か月前には、その1行だけ再判定します。
まとめ
- 固定費の棚卸しは、請求メール・会計ソフトのカード明細12か月・通帳の口座振替の3経路を突き合わせる。メールだけでは年1回請求と別アドレス宛てが落ち、カード明細だけでは口座振替が落ちる
- 4人の会社の実測では、月8万円前後の月額サービスのうち、重複1件(月21,800円)と放置1件(月1,200円)で月2.3万円・年27万円超が出てきた
- 問題の出方は5つ。重複、値上げに気づかない、無料と思い込み、無料トライアルの自動有料化、設定変更で跳ねる従量課金。どれも放っておくと増える方向
- 判定は「残す・下げる・やめる・保留」。年払いは途中解約しても戻らないので、更新日の1か月前に再判定する。値上げ告知が来たら施行前に長期契約で据え置く手がある
- 台帳は9列(サービス名・用途と使う人・払い方・請求サイクル・月額換算・次回更新日・解約方法・値上げ告知・判定)。以後は年1回、カード明細から作り直す
- ドメインとホスティングは「使っていない」ように見えても会社のメールとサイトが載っている。やめる前に何が載っているかを確かめる
この記事は2026年11月4日時点の法令・公開情報に基づいています。制度は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。