売掛金。未収入金との違いと、時効5年までの管理の型
売掛金とは、商品・サービスを先に納めて代金を後から受け取る権利のことです。仕訳の基本は出どころの区別で、本業の取引から生じた債権=売掛金、本業以外(社用車や備品を売った代金など)=未収入金。ここを分けておくと決算書の見え方が正しくなります。
実務で本当に大事なのは管理のほうです。売掛金の消滅時効は原則5年(民法改正後)。請求書を送って満足していると、入金遅れ→督促漏れ→時効、という最悪コースがあり得ます。「回収までが売上」を型にする方法まで、請求する側の目線で整理します。
似た科目との整理
| 科目 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 本業の後払い債権 | 商品販売代金・サービス料の未回収分 |
| 未収入金 | 本業以外の後払い債権 | 備品・車両の売却代金の未回収分 |
| 前受金 | 先にお金をもらった状態(負債) | 着手金・予約金 |
| 仮払金 | 内容未確定の支出 | 出張前の概算払い→精算で振替 |
| 買掛金 | 売掛金の裏側(自社が払う側) | 仕入代金の未払い分 |
管理の型:発生から入金まで
- 売掛金台帳(年齢表)を月次で見る…取引先別に「今月発生・入金・残高・滞留日数」を一覧にするのが基本形です。会計ソフトの売掛レポートで自動化でき、30日超の滞留に色が付く状態を作るのがゴールです
- 入金消込は「請求書番号」で照合…振込名義と会社名が違う・複数請求をまとめて振込、が消込ミスの2大原因。見積書の記事で書いた連番管理がここでも効きます
- 回収サイトの実額…支払サイトの記事のとおり、売掛残高の目安は月商×サイト日数÷30。サイト短縮の交渉は値引き交渉と同じ重さで扱ってください
- 時効は「支払期日から」進む…請求書の支払期日を過ぎた債権は時効のカウントが進みます。催告(内容証明)で6ヶ月の完成猶予、債務承認(一部入金や支払約束)でリセットなど、時効管理には法的な型があります
入金が遅れたときの実務
- 期日+3営業日でまず連絡…遅延の大半は「経理の処理漏れ」です。感情を挟まず「ご入金が確認できていません」の事務連絡を早く出すほど、回収率は上がります
- 2回目からは書面+新しい期日…メールで支払期日を再設定し、記録を残します。この時点で新規の掛け取引は停止するのが与信管理の定石です
- 内容証明→少額訴訟・支払督促…60万円以下なら少額訴訟、書類審査中心の支払督促など、弁護士なしでも使える手続きがあります。顧問弁護士がいれば書面の名義だけで効果が変わります
- 回収不能なら貸倒処理…法的整理や取引停止後1年経過など、税務上の貸倒要件を満たせば損金にできます。要件判定は税理士と、が安全です
そもそも焦げ付かせない入口
- 新規取引は少額+短サイトから…初回から大口・長サイトを受けない。実績を見て枠を広げるのが与信の基本です
- 前払い・都度払いを混ぜる…前払い型の決済や着手金方式は、売掛リスクそのものを消します。全額後払いが商習慣でも、初回だけ前金は通ることが多い
- 請求書は締め日に即発行…発行が遅れるほど入金も遅れます。回収の最初の一手は自社の発行スピードです
- 保証・ファクタリングは費用対効果で…売掛保証サービスや債権買取は、手数料と引き換えにリスクを移す道具です。恒常利用の前に、まず与信とサイトの設計で減らせないかを見てください
よくある質問
Q売掛金と売上はどう違いますか
売上は取引の発生(収益)、売掛金はその対価をまだ受け取っていない状態(資産)です。掛け販売の仕訳は「売掛金/売上」で両方が同時に立ち、入金時に「預金/売掛金」で消えます。
Q個人事業主でも売掛金の考え方は同じですか
同じです。青色申告の貸借対照表にも売掛金の欄があり、年末時点の未回収分を計上します。時効や回収の実務も法人と変わりません。
Q売掛金が回収できないまま決算を迎えたら
残高はそのまま資産計上しつつ、回収可能性に応じて貸倒引当金の設定を検討します。税務上の貸倒損失にできるのは要件を満たしたときだけなので、安易に落とさないでください。
Q時効5年を過ぎたら絶対に回収できませんか
時効は相手が援用(主張)して初めて確定します。過ぎていても任意の支払いは有効ですが、法的手段は使えなくなるため、実務上は5年を「回収活動のデッドライン」と考えてください。
まとめ
① 本業の後払い債権=売掛金、本業以外=未収入金。前受金・仮払金との区別が仕訳の基本。
② 管理は売掛台帳(年齢表)の月次チェック。残高目安は月商×サイト÷30。
③ 遅延対応は即連絡→書面→内容証明→少額訴訟の階段。時効は原則5年、承認でリセット。
④ 入口の与信(少額+短サイトから)と締め日即請求が、回収問題の大半を予防する。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。