支払サイト。「月末締め翌月末」の読み方と、60日が上限になった話
支払サイトとは、取引の締め日から実際の支払日までの期間のことです。「月末締め翌月末払い」なら30日サイト、「月末締め翌々月末払い」なら60日サイト。ここで大事なのは、起点は仕事をした日ではなく締め日だということ。月初に納品した仕事が翌々月末払いなら、現金になるまで最大90日かかります。
そしてこの世界には2026年1月に大きな変化がありました。下請法が「取適法(中小受託取引適正化法)」に改正され、対象取引では受領から60日以内の支払いが義務になり、手形での支払いは認められなくなったのです(紙の約束手形・小切手自体も2027年3月末で廃止に向かっています)。「120日手形」の時代は制度として終わりました。用語の読み方から、資金繰りへの効き方、新規取引での決め方まで順に説明します。
読み方の基本:締め・支払・現金化の3点
| 条件表記 | サイト | 月初納品の現金化まで | 実務での位置づけ |
|---|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | 30日 | 約60日 | BtoBの標準形 |
| 月末締め翌月15日払い | 15日 | 約45日 | 受注側に有利。交渉で勝ち取る形 |
| 月末締め翌々月末払い | 60日 | 約90日 | 受注側の資金繰りには重い。下請取引ならここが法律上の上限圏 |
| 手形払い(旧・120日手形など) | — | 120日超も | 取適法の対象取引では2026年1月から不可 |
2026年1月の変化:下請法が「取適法」になった
- 受領から60日以内の支払いが義務…対象となる委託取引では、物品・サービスの受領から60日以内に代金を支払う必要があります。「翌々月末払いだから90日」という運用は、対象取引では成立しません
- 手形払いが認められなくなった…手形で支払って満期までさらに待たせる——という商慣行が、対象取引では禁止されました。紙の約束手形・小切手は2027年3月末での廃止に向かっており、業界全体で現金(振込)払いへの移行が進んでいます
- 発注側も他人事ではない…自社が外注費を「翌々月末払い」にしている場合、相手と取引内容によっては改正法の対象になり得ます。2026年を機に、支払条件の総点検をする会社が増えているのはこのためです。自社の取引が対象かどうかは、中小企業庁・公正取引委員会の案内で確認してください
- 実は身近な例=家賃は「前払い」…私たち不動産業の家賃は当月分を前月末に払う前払いが標準で、支払サイトの概念が逆向きです。売掛で60日待つ業種から見ると、これがどれだけ資金繰りを楽にしているか——サイトの長短は業種の資金構造そのものです
売掛と買掛のズレを見える化するのが資金繰り管理の第一歩です。会計ソフトの資金繰りレポートなら、請求書と入金予定から自動で作れます。
資金繰りへの効き方:寝ているお金を計算する
- 売掛残高=月商×(サイト日数÷30)が目安…月商500万円で実質60日サイトなら、常時1,000万円前後が「働いたのにまだ現金でないお金」として寝ています。これが運転資金の正体です
- 入金と支払いのズレが資金ショートを生む…売上は60日後入金・仕入と給料は当月払い、という構造なら、成長するほど現金が減ります。黒字倒産はこのズレから起きるので、損益と資金繰りは別物として管理してください
- 資金繰り表は会計ソフトで自動化できる…請求書の入金予定と支払予定を突き合わせる資金繰りレポートは、マネーフォワードやfreeeの標準機能です。Excelで作り続けるより、請求書発行と連動させるのが現実的です
- 「サイト交渉」は金利の交渉と同じ…サイトが30日縮む=その分の運転資金が不要になる、ということ。値引き1%より支払サイト30日短縮のほうが効く場面は多く、新規取引の条件交渉ではセットで考えてください
実務の打ち手:受け取る側・払う側
- 受け取る側①:請求書は締め日に即発行…サイトの起点は締め日です。請求書の発行が遅れると、相手の締めに乗らず支払いが丸1ヶ月ずれます。月末締めの相手には月末に届くように——これだけで実質サイトが30日変わることがあります
- 受け取る側②:前払いの決済手段を混ぜる…新規や小口の相手には、コンビニ決済やカード決済など前払い型を使うと、未回収リスクとサイトが同時に消えます
- 払う側:支払条件は最初に文書で…「月末締め翌月末・振込」を発注書・契約書に明記。後から変えるのは(法律上も関係上も)難しいので、最初の設計がすべてです。振込手数料をどちらが負担するかも忘れずに
- 資金が細る月の橋渡し…賞与月や納税月だけ支払いが重い——という場合の平準化手段として、請求書のカード払いサービスのような「支払いを後ろにずらす」仕組みもあります。恒常的に使うものではなく、スポットの橋渡しとして知っておくと選択肢が増えます
よくある質問
Q「サイト」とはどういう意味ですか
英語のsight(一覧払い)に由来する商業用語で、締め日から支払期日までの猶予期間を指します。ITのWebサイトとは無関係です。
Q下請法(取適法)の対象になるのはどんな取引ですか
製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託などの委託取引で、発注側と受注側の資本金等の規模関係によって決まります。2026年1月の改正で対象範囲も見直されているため、自社の取引が該当するかは中小企業庁の資料か専門家で確認してください。
Q支払サイトが長い取引先とは付き合わないほうがいいですか
一概には言えません。サイトが長くても単価と量が良ければ、資金繰りさえ設計できれば良い取引です。問題はサイトの長さそのものより、自社の売掛残高が資金繰りの限界を超えることです。
Q入金サイトを短くしてもらう交渉はできますか
できます。特に継続取引の実績ができた後や、単価改定の話と同時に出すのが通りやすいタイミングです。2026年の法改正で支払条件を見直す会社が増えているので、交渉の口実としても今は好機です。
まとめ
① 支払サイト=締め日から支払日までの期間。起点は納品日でなく締め日(月初納品は最大+30日待つ)。
② 2026年1月施行の取適法で、対象取引は受領から60日以内の支払い義務・手形払い不可に。
③ 売掛残高の目安は月商×サイト日数÷30。損益と資金繰りは別物として管理する。
④ 請求書は締め日に即発行・支払条件は最初に文書で。サイト交渉は値引き交渉と同じ重さで。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。