減価償却。10万・20万・30万の3ラインで実務の9割が決まります
減価償却とは、長く使う資産(建物・車・パソコン等)の購入代金を、法定の耐用年数に分けて毎期費用化する仕組みです。「10万円のPCは買った年の経費、200万円の車は6年に分けて経費」——この差を作っているのが減価償却です。
ただ、小さな会社の実務は耐用年数の暗記より先に金額の3ラインを押さえるのが正解です。①10万円未満=消耗品費で即経費、②20万円未満=一括償却資産(3年均等)、③30万円未満=中小企業の少額特例で即損金(合計年300万円まで)。この3段ロケットで、日常の買い物の9割は迷わず処理できます。
金額の3ライン早見表
| 取得価額 | 処理の選択肢 | ポイント |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費で即経費 | 資産計上不要。判定は税抜経理なら税抜、税込経理なら税込 |
| 10万〜20万円未満 | 一括償却資産(3年で1/3ずつ)or 少額特例 | 一括償却は償却資産税の対象外という隠れメリット |
| 20万〜30万円未満 | 少額減価償却資産の特例で即損金 | 青色申告の中小企業限定・合計年300万円まで・適用期限(延長繰り返し中)に注意 |
| 30万円以上 | 通常の減価償却(耐用年数で費用化) | 定額法/定率法・固定資産台帳で管理 |
通常の償却:最低限の理解
- 定額法=毎年同額、定率法=最初に多く…建物・建物附属設備・ソフトウェアは定額法が強制。器具備品・車両は法人なら定率法が原則(届出で変更可)です。どちらでも総額は同じで、費用化のスピードが違うだけ
- 耐用年数は「法定」の表で決まる…PC4年・普通車6年・木造建物22年など、資産の種類ごとに国税庁の耐用年数表で決まっています。会計ソフトに資産を登録すれば自動計算されるので、暗記は不要です
- 中古資産は耐用年数が短くなる…簡便法で「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」。4年落ちの中古車が節税の定番と言われるのはこの計算で耐用年数2年になるためですが、資金繰りと必要性が先、税は後です
- 月割り計算…期の途中で買った資産は使用開始月からの月割りです。決算月に買っても1ヶ月分しか償却できない——「決算前の駆け込み購入」の効果が思ったより小さい理由です
実務の型
- 固定資産台帳はソフトで自動化…取得日・金額・耐用年数・償却方法を登録すれば、毎期の仕訳も台帳も自動です。自計化の会社はここが手計算から卒業する一番の効果ポイントです
- 「一式」の判定は使用単位で…応接セットはテーブルと椅子で1組、PCとモニターは通常それぞれ判定。10万円ラインの判定は「通常1単位として取引される単位」で行います
- 償却資産税(固定資産税)の申告を忘れない…器具備品などは毎年1月に市区町村へ償却資産の申告があります。一括償却資産(3年均等)を選んだ分は対象外になるため、10万〜20万円帯は一括償却が有利な場面が多い、という選択の妙があります
- 除却したら台帳から落とす…PCの処分や設備の廃棄をしたら除却損の計上と台帳の更新をセットで。使っていない資産が台帳に残り続けると、償却資産税を余計に払い続けます
よくある誤解
- 「減価償却=節税」ではない…費用化のタイミングの話であり、総額は購入額を超えません。お金が出ていくのは買った時、経費になるのは分割——キャッシュと損益のズレを生む代表例として理解するのが正確です
- 土地は減価償却しない…使っても減らない資産(土地・借地権・美術品の一部)は償却対象外です。不動産を買うと建物部分だけ償却する、という区分が必要になります
- 個人事業主は強制償却…法人は償却するかどうか任意(限度額の範囲内)ですが、個人は毎年必ず償却します。赤字でも償却は止められません
- リースなら償却は不要か…賃貸借処理できるリースなら支払リース料が経費になり、償却計算は不要です。買うかリースかの比較にはこの事務負担の差も入れてください
よくある質問
Qパソコンを15万円で買いました。どう処理するのが得ですか
青色申告の中小企業なら少額特例で即損金が最速です。利益を平準化したいなら一括償却(3年)も選べ、こちらは償却資産税の対象外というメリットがあります。当期の利益状況で選んでください。
Q30万円未満の特例はいつまで使えますか
期限付きの特例で、これまで2年ごとの延長が繰り返されています(直近の適用期限は2026年3月31日まで取得分とされています)。決算をまたぐ購入計画では、適用期限を税理士と確認してから判断してください。
Q減価償却費に消費税はかかりますか
かかりません。消費税は購入時に取得価額全体に対して処理済みで、毎期の減価償却費は消費税の対象外(不課税)です。
Q耐用年数を過ぎた資産はどうなりますか
帳簿上は備忘価額1円まで償却して保有し続けます。使い続けるのは自由で、売却・廃棄したときに残額との差が損益になります。
まとめ
① 3ライン:10万円未満=即経費/20万円未満=一括償却3年/30万円未満=少額特例で即損金(年300万まで・期限あり)。
② 通常償却は定額法・定率法とも総額同じ。月割り計算なので決算前駆け込みの効果は小さい。
③ 台帳はソフトで自動化。一括償却は償却資産税の対象外、除却したら台帳から落とす。
④ 減価償却は節税でなくタイミング。土地は償却しない・個人は強制償却。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。