税務調査は何年ごとに来るか。実地調査は年5万4千件という数字から考える
「税務調査は何年ごとに来るのか」という問いに、国税庁が公表している数字で答えると次のようになります。令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の法人税等の実地調査は5万4千件。国内の法人数は約280万社なので、単純に割れば1社あたり50年に1回という計算です。
ただしこれは平均の話です。国税庁は「調査必要度の高い納税者に対しては実地調査を行い、その他の納税者に対しては実地調査以外の手法で接触する」という方針を公表しています。確率は均等ではありません。そして遡れる年数は原則5年、偽りその他不正の行為があれば7年(国税通則法70条)。「3年分」と言われることが多いのは実務上の運用で、法律上の上限ではありません。
頻度を数字で見る
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 実地調査の件数 | 5万4千件 |
| 調査1件当たりの追徴税額 | 直近10年で2番目の高水準 |
| 国内の法人数(会社標本調査ベース) | 約280万社 |
| 単純計算した頻度 | 1社あたり約50年に1回 |
- 確率は均等ではない…国税庁は調査必要度の高い納税者を選定して実地調査を行うとしています。売上規模、利益率の急変、同業他社との差、過去の指摘事項などが選定の材料になると考えられます
- 実地調査以外の接触もある…電話や書面による是正の依頼(行政指導)です。実地調査の件数だけを見て「来ない」と考えるのは早計です
- 10年以上来ない会社は珍しくない…単純計算の頻度からすれば当然です。ただし「来ていない」ことは「問題がない」ことの証明にはなりません
- 設立から3年程度は来にくい…実績が少なく調査の効率が悪いためと言われます。ただし消費税の還付申告など、特定の申告をすれば早期に接触があることもあります
遡れる年数は3年・5年・7年
| 年数 | 意味 |
|---|---|
| 3年 | 法律上の区分ではなく、実務上「まず3年分を見る」という運用 |
| 5年 | 原則の期間制限。増額更正ができる期間 |
| 7年 | 偽りその他不正の行為により税額を免れた場合 |
- 「3年分」は法律の数字ではない…調査の対象期間として3事業年度分を提示されることが多いという実務の話です。問題が見つかれば5年、不正があれば7年に広がります
- 7年は「偽りその他不正の行為」があった場合…売上の意図的な除外、架空の経費、二重帳簿などです。単純な計算誤りや解釈の相違は該当しません
- 重加算税は35%または40%…隠蔽・仮装があった場合の加算税です。過少申告加算税(原則10%)とは水準が違います
- 延滞税もかかる…本来の納期限から納付日までの期間に対して発生します。加算税と延滞税はいずれも損金になりません
調査の流れ
- 事前通知…原則として調査開始日、場所、対象税目、対象期間などが事前に通知されます。税理士が関与していれば税理士に連絡が入ります
- 日程調整…業務の都合で日程を調整できます。決算期や繁忙期を避ける相談は普通に行われます
- 実地調査(1〜3日程度)…帳簿、請求書、通帳、契約書などを確認されます。小規模な法人なら1〜2日で終わることが多いです
- 調査結果の説明…是認(問題なし)、修正申告の勧奨、更正処分のいずれかになります。修正申告に応じるかどうかは納税者の判断です
- 納付…修正申告をすれば本税と加算税・延滞税を納付します。分割納付の相談も可能です
普段からやっておくこと
- 請求書と領収書を取引順に保存する…調査で最初に求められるのはこれです。電子帳簿保存法の電子取引データ保存にも対応しておけば、探す時間が減ります
- 現金取引を減らす…通帳に履歴が残る取引は説明が早いです。小口現金を廃止して法人カードと口座振替に寄せると、調査対応の負担も下がります
- 役員貸付金・仮払金を残さない…決算で残高が残っていると、その内容を必ず問われます。仮払金は残高ゼロで決算を締めるのが原則です
- 交際費と会議費の線引きを説明できるようにする…1人1万円の基準(2024年4月から)で会議費として処理したものは、参加者と目的をメモに残しておくと説明が短く済みます
- 期ずれに注意する…売上や経費の計上時期のズレは最も多い指摘事項です。決算月前後の請求書は日付を確認します
当社にも過去に調査はありましたが、指摘の中身は「期ずれ」と「勘定科目の整理」でした。悪意のない誤りが大半で、そこを潰しておけば構える必要はありません。むしろ怖いのは書類が探せないことで、その場で答えられないと確認事項が増えて日数が伸びます。
よくある質問
Q調査を断ることはできますか
任意調査であっても正当な理由なく拒否すれば罰則の対象になります。日程の調整は可能なので、業務の都合を伝えて調整するのが現実的です。
Q税理士に立ち会ってもらう必要はありますか
義務ではありませんが、税務代理権限証書を提出している税理士がいれば立ち会うのが通常です。判断を求められる場面が多いため、顧問税理士がいる会社は同席してもらうほうが安全です。
Q修正申告に応じないとどうなりますか
税務署が更正処分を行います。処分に不服があれば再調査の請求や審査請求ができます。修正申告に応じると不服申立てができなくなるため、内容に納得できない場合は慎重に判断します。
Q設立して間もない会社にも来ますか
来ることはあります。特に消費税の還付申告をした場合や、業種的に現金取引が多い場合は早期に接触があることもあります。
まとめ
① 令和6事務年度の法人税等の実地調査は5万4千件。法人数約280万社で単純計算すると50年に1回。
② ただし確率は均等ではない。国税庁は調査必要度の高い先を選定している。
③ 遡れるのは原則5年、偽りその他不正の行為があれば7年(国税通則法70条)。「3年」は実務上の運用。
④ 重加算税は35%または40%。加算税と延滞税は損金にならない。
⑤ 準備は書類が探せる状態にすること。指摘の多くは期ずれと勘定科目の整理。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。