修正申告と更正の請求。納めすぎたときと足りないときで手続きが違います
確定申告した後に間違いに気づいたとき、手続きは2つに分かれます。納めた税額が少なかった=修正申告。納めた税額が多すぎた=更正の請求。
実務で重要なのは期限と加算税です。修正申告に期限はありませんが、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に行えば過少申告加算税が課されません。一方、更正の請求は法定申告期限から原則5年以内という期限があり、これを過ぎると還付を受けられません。
2つの手続きの違い
| 項目 | 修正申告 | 更正の請求 |
|---|---|---|
| どんなとき | 税額が少なかった(納め足りない) | 税額が多すぎた(納めすぎ) |
| 期限 | なし(更正があるまで) | 法定申告期限から原則5年以内 |
| 手続き | 修正申告書を提出 | 更正の請求書を提出 |
| 結果 | 不足税額を納付 | 税務署の審査を経て還付 |
| 加算税 | 調査通知前の自主的な提出なら課されない | — |
| 延滞税 | 法定納期限からの日数に応じて発生 | — |
- 修正申告は自分で税額を確定させる…提出した時点で税額が確定します。税務署の判断を待つ必要がありません
- 更正の請求は請求するだけ…税務署が内容を審査し、認められれば減額更正が行われて還付されます。請求すれば必ず還付されるわけではありません
- 更正の請求には理由を記載する…なぜ税額が過大だったのか、その理由の基礎となる事実を記載し、証拠書類を添付します
- 更正の請求ができない場合もある…単なる有利選択のやり直し(当初認められた選択を後から変更する)は認められないことがあります
- 税務署からの更正・決定…税務署が職権で税額を変更するのが「更正」、申告がない場合に税額を定めるのが「決定」です
修正申告と加算税
| 時期 | 加算税 |
|---|---|
| 調査の事前通知より前に自主的に修正申告 | 課されない |
| 事前通知後・調査による更正の予知前 | 原則5%(一定額を超える部分は10%) |
| 調査により更正を予知した後 | 原則10%(一定額を超える部分は15%) |
| 隠蔽・仮装があった場合 | 重加算税35%(無申告の場合40%) |
- 気づいたらすぐ出すのが最も安い…調査の事前通知を受ける前であれば過少申告加算税は課されません。これが最大の節約です
- 延滞税は別に発生する…加算税が課されない場合でも、法定納期限の翌日から納付日までの延滞税はかかります
- 加算税・延滞税は損金にならない…法人税の計算上、損金不算入です
- 重加算税は35%…事実の隠蔽または仮装があった場合です。二重帳簿、売上除外、架空経費などが該当します
- 不足税額はすぐ納付する…修正申告書の提出日が納期限です。納付が遅れるほど延滞税が増えます
更正の請求
- 期限を確認する…法定申告期限から原則5年以内です。5年を過ぎると請求できません
- 更正の請求書を作成する…請求の理由、その理由の基礎となる事実を記載します
- 証拠書類を添付する…事実を証明する書類の添付が必要です
- 税務署の審査を受ける…内容が調査され、認められれば減額更正が行われます
- 還付される…認められた場合、還付加算金が付くことがあります
- 後発的事由による特例がある…判決により課税標準が変わった場合など、一定の後発的な事由があるときは、その事実が生じた日の翌日から2か月以内など、別の期限で請求できます
- 認められないこともある…請求すれば自動的に還付されるものではありません。理由と証拠が求められます
- 選択のやり直しは難しい…当初の申告で選択した処理を、後から有利なほうに変更することは原則として認められません
- 5年より短い期限のものもある…税目や事由により期限が異なる場合があります
実務の判断
- 間違いに気づいたらすぐ動く…修正申告なら加算税が課されず、更正の請求なら期限内に間に合います。放置して得することは何もありません
- 調査の連絡が来てからでは遅い…事前通知を受けた後は、自主的な修正申告でも加算税(原則5%)が課されます。通知前と後で扱いが変わるのがこの制度の設計です
- 金額が小さくても手続きは同じ…数万円の誤りでも修正申告は必要です。ただし実務では重要性を勘案した判断がなされることもあります
- 税理士に相談する場面…更正の請求は理由の記載と証拠の添付が要件になるため、認められるかどうかの見立てが重要です
- 翌期で調整してはいけない…前期の誤りを翌期の申告で調整するのは正しい処理ではありません。該当する年度の修正申告または更正の請求で処理します
- 当社の実務…3名の会社でも、期をまたぐ経費の計上時期の誤りは起こり得ます。決算後に気づいた時点で、税理士に修正申告の要否を確認するという運用にしています。加算税を避けられるかどうかは、気づいた時点で動くかどうかで決まります
修正申告と更正の請求は、どちらも「申告が間違っていた」ときの手続きですが、方向が逆です。納め足りないなら修正申告で、これは調査の通知前なら加算税がかかりません。納めすぎたなら更正の請求で、こちらは5年という期限があります。気づいた時点ですぐ動くことが、どちらの場合でも最善です。
よくある質問
Q修正申告に期限はありますか
期限はありませんが、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に提出すれば過少申告加算税が課されません。通知後は原則5%が課されます。
Q納めすぎた税金はいつまで請求できますか
更正の請求は法定申告期限から原則5年以内です。判決により課税標準が変わった場合など、後発的な事由があるときは別の期限が定められています。
Q修正申告をすると延滞税もかかりますか
かかります。加算税が課されない場合でも、法定納期限の翌日から納付日までの延滞税は発生します。加算税・延滞税とも損金にはなりません。
Q前期の誤りを今期で調整してもよいですか
正しい処理ではありません。該当する年度の修正申告または更正の請求で処理します。
まとめ
① 税額が少なければ修正申告、多すぎれば更正の請求。
② 修正申告に期限はないが、調査の事前通知前に自主的に出せば過少申告加算税が課されない。
③ 更正の請求は法定申告期限から原則5年以内。過ぎると還付されない。
④ 加算税が課されない場合でも延滞税は発生する。いずれも損金不算入。
⑤ 前期の誤りを翌期で調整するのは誤り。該当年度の手続きで処理する。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。