定款。絶対的記載事項と、電子定款で印紙4万円をゼロにする話
定款とは、会社の目的・商号・本店所在地・出資などを定めた会社の根本規則です。会社の憲法とよく言われ、絶対的記載事項(①目的②商号③本店所在地④出資される財産の価額⑤発起人(合同会社は社員)の氏名住所等)が1つでも欠けると定款自体が無効になります。
実務でまず知っておくべきお金の話が1つ。紙の定款には印紙税4万円がかかりますが、電子定款(PDF+電子署名)なら印紙は不要です。収入印紙の記事で書いた「電子文書に印紙はかからない」原則がここでも効いています。無料の会社設立サービスがこぞって電子定款対応なのはこのためです。
記載事項の3層構造
| 区分 | 内容 | 欠けると |
|---|---|---|
| 絶対的記載事項 | 目的・商号・本店所在地・設立時の出資価額(下限)・発起人の氏名住所 | 定款が無効 |
| 相対的記載事項 | 定款に書かないと効力が出ない事項(現物出資・株式譲渡制限・役員任期の伸長など) | その定めが無効 |
| 任意的記載事項 | 事業年度・役員数・公告方法など | 他の規則でも定められる |
書き方の実務ポイント
- 本店所在地は「最小行政区画」までにする…「東京都品川区」までの記載にしておけば、同じ区内の移転で定款変更(株主総会の特別決議)が不要になります。本店移転登記の記事で書いた実務の定石です
- 事業目的は「今やる事業+近い将来の事業+付帯事業」…目的にない事業は登記上できないため、予定がある事業は最初から入れておきます。ただし何十個も羅列すると何の会社か分からなくなり、融資・許認可の審査で説明を求められることも。10個前後に絞るのが今の主流です
- 許認可が要る業種は目的の文言に注意…宅建業・建設業・古物商などは、許認可申請で求められる目的の記載例があります。当社のような不動産業なら「宅地建物取引業」の一文が必須——業界ごとの定番文言を先に調べてから作ってください
- 公告方法は電子公告か官報か…株式会社の決算公告は官報掲載だと毎年数万円。電子公告(自社サイト掲載)にすれば決算公告のコストを下げられます(貸借対照表の全文掲載などの要件あり)
認証と保管
- 株式会社は公証人の認証が必要…手数料は資本金額に応じて約3〜5万円。合同会社は認証不要で、ここが設立費用の差の正体です
- 電子定款の作り方…PDFに電子署名して電子認証を受けます。個人で環境を整えるより、無料の設立支援サービス(freee・マネーフォワード等)や司法書士経由が現実的で、印紙4万円の節約がそのまま残ります
- 原始定款は会社の重要書類…設立時の定款(原始定款)は本店に備え置き、謄本は銀行口座開設・許認可・補助金申請でたびたび提出を求められます。PDFですぐ出せる場所に保管してください
- 「現行定款」を維持する…変更を重ねると原始定款と現状がズレます。変更のたびに反映した「現行定款」を作り直しておくのが、提出書類として使うときの実務です
定款変更の手続き
- 株式会社は株主総会の特別決議…議決権の2/3以上の賛成が必要です。1人会社でも議事録の作成は必須で、変更内容によっては登記も必要になります
- 登記が要る変更・要らない変更…商号・目的・本店移転・公告方法などは登記事項なので法務局への変更登記(登録免許税3万円等)が必要。事業年度の変更のように登記不要(税務署等への届出のみ)のものもあります
- 再認証は不要…設立後の定款変更に公証人の認証は要りません。決議+(必要なら)登記で完結します
- 変更のついでに棚卸しを…目的の追加が必要になったタイミングは、本店所在地の書き方・公告方法・役員任期などを現代仕様に直すチャンスです。登記1回にまとめれば費用も一度で済みます
よくある質問
Q定款はどこでもらえますか
会社が保管しているものが原本です。紛失した場合、設立から20年以内なら認証した公証役場に謄本の請求ができます(株式会社)。登記事項証明書は定款の代わりにはなりません。
Q定款と登記簿(登記事項証明書)は何が違いますか
定款は会社の内部規則の全文、登記簿は第三者に公示される登記事項の証明です。目的や商号は両方に載りますが、株式の譲渡制限の細かい定めなどは定款にしかありません。
Qひな形をそのまま使っても大丈夫ですか
絶対的記載事項を正しく埋めれば有効ですが、目的の文言(許認可対応)と本店所在地の書き方(最小行政区画)だけは自社に合わせて調整してください。この2点が後から効いてきます。
Q合同会社にも定款は必要ですか
必要です。認証が不要なだけで、定款の作成自体は合同会社でも必須です。電子定款で印紙4万円を節約できる点も同じです。
まとめ
① 絶対的記載事項(目的・商号・本店所在地・出資・発起人)が欠けると無効。まずここを正確に。
② 紙の定款は印紙4万円、電子定款はゼロ。株式会社は認証約5万円、合同会社は認証不要。
③ 本店は最小行政区画まで・目的は許認可の定番文言込みで10個前後・公告は電子が安い。
④ 変更は特別決議+登記(要否は事項による)。現行定款を常に最新化しておくと提出で困らない。
この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。