定時株主総会の開催時期。3か月以内は会社法の要請ではありません
「定時株主総会は決算期後3か月以内に開催しなければならない」と言われますが、会社法にそのような規定はありません。会社法296条1項は「定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」と定めるだけです。
では、なぜ3か月なのか。理由は2つ。①基準日制度=基準日から権利行使日までは3か月以内と定められており(会社法124条2項)、決算日を基準日とする定款の定めがあれば3か月以内に開催する必要が生じます。②法人税の申告期限=原則2か月以内で、株主総会の承認を要する場合に延長の特例があります。
3か月以内とされる理由
- 基準日から3か月以内…議決権を行使できる株主を確定するために基準日を定めた場合、基準日から3か月以内の日を権利行使の日としなければなりません(会社法124条2項)。多くの会社は定款で「毎年3月31日の最終の株主をもって議決権を行使することができる株主とする」といった定めを置いています
- 基準日を定めなければ3か月に縛られない…株主が固定している中小企業では、基準日を定める必要性が乏しい場合もあります。ただし定款の定めがあれば従います
- 法人税の申告期限との関係…法人税の確定申告は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。定款等で株主総会が3か月以内に招集されないことが常況である場合など、一定の場合に申告期限の延長の特例を受けられます
- 延長しても納付は別…申告期限を延長しても、納付が遅れれば利子税がかかります。そのため見込納付を行うのが一般的です
- 消費税の申告期限は別…消費税についても延長の特例がありますが、法人税とは別に届出が必要です
招集の手続き
| 会社の区分 | 期限 |
|---|---|
| 公開会社 | 総会日の2週間前まで |
| 非公開会社(書面・電子投票なし) | 総会日の1週間前まで |
| 非公開会社かつ取締役会非設置 | 定款で1週間を下回る期間を定められる |
| 株主全員の同意がある場合 | 招集手続きを省略できる |
- 取締役会が招集を決定する…取締役会設置会社では、取締役会で日時・場所・議題などを決定します。取締役会非設置会社では取締役が決定します
- 非公開会社なら口頭でもよい場合がある…取締役会非設置会社では、招集通知の方法に書面等の制限がなく、口頭や電話でも可能とされています
- 株主全員の同意で招集手続きを省略できる…会社法300条。中小企業ではこの規定を使うことが多いです。ただし書面投票・電子投票を採用する場合は省略できません
- 計算書類等の提供…取締役会設置会社では、招集通知に際して計算書類および事業報告を提供します
- 場所は自由…本店所在地に限られません。定款に定めがなければ、著しく不当でない限り任意の場所で開催できます
決議事項
| 事項 | 決議要件 |
|---|---|
| 計算書類の承認 | 普通決議(会計監査人設置会社等では報告で足りる場合がある) |
| 事業報告 | 報告事項 |
| 剰余金の配当 | 普通決議 |
| 役員の選任・重任 | 普通決議 |
| 役員報酬の総額の決定 | 普通決議 |
| 定款の変更 | 特別決議 |
| 資本金の額の減少 | 特別決議(原則) |
- 役員報酬は株主総会で決める…定款に定めがなければ株主総会の決議によります(会社法361条)。総額の上限を決議し、個別配分は取締役会等に一任するのが実務です
- 役員の任期満了に注意…任期が満了すれば重任の決議と登記が必要です。非公開会社では任期を最長10年まで伸長できますが、10年ごとに登記を忘れやすくなります
- 12年間登記がないと解散したものとみなされる…みなし解散の制度があります。役員の重任登記を怠らないことが重要です
- 普通決議の要件…議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で決します(定款で定足数を排除できます)
開催していない会社の実務
- 実際には開催していない中小企業が多い…しかし役員報酬の決定も決算の承認も株主総会の決議事項です。開催していなければ、これらが有効に決まっていないことになります
- 税務調査で議事録を求められる…役員報酬の改定時期や金額の根拠として、株主総会議事録の提示を求められることがあります
- 登記の添付書類として必要になる…役員の重任、本店移転、目的変更などの登記で議事録を添付します。その場で作ると日付の整合性が問題になります
- 形だけでも整えておく…株主が代表者1名であれば、書面決議(会社法319条)の形で議事録を作成できます。全株主の同意があれば決議があったものとみなされます
- 当社の実務…毎期、決算確定後に定時株主総会の議事録を作成し、役員報酬の総額と計算書類の承認を記録しています。後から作るのではなく、その時期に作ることが唯一の対処です
3か月以内という「常識」の根拠は、会社法の直接の規定ではなく、基準日制度と申告期限の組み合わせです。ただし結果として3か月以内に開催すべき会社が多いことに変わりはありません。開催の記録を毎期残しておくことが、登記でも税務でも効いてきます。
よくある質問
Q定時株主総会は決算後3か月以内に開催しなければなりませんか
会社法に3か月以内という規定はありません。定款で基準日を定めている場合、基準日から3か月以内に権利行使日を設定する必要があるため、結果として3か月以内になります。
Q招集通知はいつまでに出しますか
公開会社は総会日の2週間前まで、非公開会社(書面・電子投票を採用しない場合)は1週間前までです。株主全員の同意があれば招集手続きを省略できます。
Q株主が1人でも株主総会は必要ですか
必要です。書面決議(みなし決議)の形で行うことができますが、議事録の作成は必要です。役員報酬の決定や決算の承認は株主総会の決議事項です。
Q法人税の申告期限は延長できますか
定款等の定めにより事業年度終了の日の翌日から2か月以内に株主総会が招集されない常況にある場合など、一定の場合に延長の特例を受けられます。ただし納付が遅れれば利子税がかかります。
まとめ
① 会社法に「3か月以内」の規定はない。基準日制度と申告期限が実質的な期限を作っている。
② 招集通知は公開会社2週間前・非公開会社1週間前。全株主の同意で省略できる。
③ 計算書類の承認・役員報酬・役員の選任はいずれも株主総会の決議事項。
④ 非公開会社は任期を最長10年にできるが、重任登記を忘れやすい。12年でみなし解散。
⑤ 開催していなくても書面決議の形で議事録を作る。後から作ると整合性が問題になる。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。