株主総会議事録。株主が1人でも作成義務があります
株主総会議事録は、会社法318条で作成が義務とされています。株主が1人でも、その1人が代表取締役本人でも、省略できません。そして作った議事録は本店に10年間、支店に写しを5年間備え置く必要があり(318条2項・3項)、これを怠ると100万円以下の過料です。
一方で、意外に思われるのが押印です。会社法は議事録への署名・押印を義務づけていません。それでも実務で押印するのは、登記の添付書面として使う場面で押印が要求されるからです。この「法律上の要否」と「登記実務での要否」のズレを整理すると、どこまでやればよいかが見えてきます。
誰が作り、いつまでに、どこに置くのか
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 作成義務 | 株主総会の議事について議事録を作成する | 会社法318条1項 |
| 本店での備置 | 総会の日から10年間 | 318条2項 |
| 支店での備置 | 写しを5年間 | 318条3項 |
| 閲覧請求 | 株主と債権者は営業時間内いつでも閲覧・謄写を請求できる | 318条4項 |
| 違反した場合 | 100万円以下の過料 | 976条8号 |
- 作成期限は条文に日数で書かれていない…「議事について」作成するとされているだけです。ただし登記の添付書面として使う場合は2週間の登記期限に間に合わせる必要があるため、実務では総会の当日か直後に作ります
- 電磁的記録でもよい…紙でなくPDFなどの電磁的記録として作成・保存することも認められています。この場合、支店での備置は本店のデータを支店から閲覧できる措置をとれば足りる場合があります
- 閲覧請求できるのは株主と債権者…取引先や金融機関が「債権者」として閲覧を請求できる立場になることがあります。10年分が揃っていない状態は、それ自体が説明を要する材料になります
- 10年は思ったより長い…設立10年目の会社なら、1期目の議事録がまだ備置期間内です。決算書類と一緒に保管する運用にしておくのが現実的です
記載事項
記載すべき事項は会社法施行規則72条3項に定められています。定型の項目が並ぶだけで、難しい書類ではありません。
- 開催の日時と場所…役員や株主が現場にいない場合(電話会議やWeb会議)は、その出席方法も書きます
- 議事の経過の要領とその結果…「第1号議案 計算書類承認の件」に対して「異議なく承認可決した」という形です。詳細な発言録は不要です
- 述べられた意見・発言があればその内容…会計監査人や監査役が意見を述べた場合などです
- 出席した取締役・監査役などの氏名…議長の氏名と、議事録を作成した取締役の氏名も記載します
「ひな形」が広く流通しているとおり、様式は自由です。重要なのは形式ではなく、上の項目が漏れていないことと、10年保存されていることです。
署名押印は必要なのか
- 会社法上は署名・押印の義務がない…318条にも施行規則72条にも、議事録への押印を求める規定はありません。取締役会議事録(会社法369条3項)は出席取締役の署名または記名押印が明記されていますが、株主総会議事録にはその規定がありません
- それでも押すのは登記のため…役員変更などの登記申請で議事録を添付する場合、商業登記規則により押印が必要になる場面があります。代表取締役の選定を株主総会で行った場合などは、出席取締役の実印と印鑑証明書が要求されることもあります
- 登記に使わない議事録は押印なしでも成立する…定款変更や事業年度変更を決議しただけで登記を伴わない場合、押印がなくても議事録として有効です
- 迷うなら押しておく…後から「あの決議の議事録を出してほしい」と言われるのは、融資や許認可の場面です。押印されているほうが説明が短く済みます
1人会社・親族だけの会社の運用
株主が代表者1人、あるいは家族だけという会社では、総会を「開いた」という実感がないまま決算が終わります。それでも議事録は必要です。現実的な落とし所は次のとおりです。
- 決算のタイミングで年1回は必ず作る…計算書類の承認は定時株主総会の決議事項です。決算作業のチェックリストに議事録作成を入れておけば、少なくとも年1本は残ります
- 書面決議(みなし決議)も使える…株主全員が書面や電磁的記録で議案に同意した場合、総会の決議があったものとみなされます(会社法319条)。この場合も同意の意思表示を記載した書面を10年間備置する必要があります
- 役員の任期満了年は特に重要…重任の登記に議事録が必要です。任期を10年にしている会社ほど、その年の議事録が抜けていると遡って作り直すことになります
- 過去の分が無いことに気づいたら…当時の日付で作り直すことになりますが、実際に決議した内容と食い違う書類を作るのは別の問題を生みます。決算書と登記の記録から事実を確認しながら整えるのが筋です
当社も3名の会社なので、総会は形式的なものです。ただし議事録がないと役員変更の登記ができず、登記ができないと過料の話になります。書類そのものより「登記と保存に必要な部品」として扱ったほうが、続けやすいと感じています。
よくある質問
Q株主総会を実際に開いていない場合はどうすればいいですか
会社法319条の書面決議(みなし決議)を使う方法があります。株主全員が議案に書面または電磁的記録で同意すれば決議があったものとみなされ、その同意書面を10年間備え置きます。実態に合わない議事録を作るより、この形が正確です。
Q議事録に印紙は必要ですか
不要です。議事録は課税文書ではないため、収入印紙は貼りません。
Q取締役会議事録との違いは何ですか
取締役会議事録は会社法369条3項で出席した取締役および監査役の署名または記名押印が明記されており、備置は10年間です。株主総会議事録には署名押印の規定がないという点が最大の違いです。取締役会を設置していない会社では、取締役会議事録は存在しません。
Q10年より前の議事録は捨ててよいですか
備置義務の期間は過ぎますが、過去の決議内容が争いになる場面や、登記の履歴を説明する場面で必要になることがあります。かさばる書類でもないため、そのまま保管しておくほうが実務的です。
まとめ
① 株主総会議事録は株主が1人でも作成義務(会社法318条1項)。
② 備置は本店に10年間・支店に写しを5年間。違反は100万円以下の過料。
③ 記載事項は施行規則72条3項の4項目。様式は自由。
④ 会社法は署名押印を義務づけていない。押すのは登記の添付書面として使う場合の要請。
⑤ 総会を開いていない実態なら、会社法319条の書面決議で整えるのが正確。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。