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退職勧奨とは 勧めるだけ。 強要は違法。 本人が応じなければ退職は成立しません 合意できたら 合意書 口頭の了解だけで済ませない

退職勧奨。解雇ではないので、本人の合意を得られるかがすべてです

結論

退職勧奨は会社が労働者に退職を勧め、合意による退職を目指す行為です。解雇とは根本的に違います。解雇は会社の一方的な意思表示ですが、退職勧奨は本人が応じなければ何も起きません

だからこそ進め方が問題になります。執拗に繰り返す、長時間拘束する、人格を否定する発言をする。こうした行為は違法な退職強要として、慰謝料の支払いを命じられた裁判例があります。合意を得るまでの手順と、合意後に残すべき書面を整理します。

解雇との違い

退職勧奨・合意退職・解雇の比較
区分性質本人の同意
退職勧奨会社が退職を勧める行為必要(応じなければ不成立)
合意退職勧奨に応じて成立した退職必要
解雇会社の一方的な意思表示不要(ただし規制がある)
自己都合退職労働者からの申出

面談の進め方

  1. 理由を整理してから臨む…なぜ退職を勧めるのか、業績、勤務成績、組織の変更など、事実に基づいて説明できるようにします
  2. 面談は複数名で行い、記録を残す…言った・言わないを防ぎます。録音する場合は事前に伝えるのが望ましい対応です
  3. 時間と回数を抑える…1回あたり1時間程度、回数も限度を設けます。裁判例では、執拗な勧奨が違法とされています
  4. 考える時間を与える…その場で退職届を書かせるのは避けます。数日の猶予を与えます
  5. 断られたら引く…明確に拒否されたら、その後の勧奨は控えます。繰り返すと退職強要と評価されます

「執拗にしない」と言われても線が分かりません。厚生労働省が事業者向けに名指しで挙げている裁判例が、そのまま線引きになります。

厚生労働省が挙げる退職勧奨の裁判例
事件何があったか結論
下関商業高校事件
(最一小判 昭和55年7月10日)
初回の勧奨以来一貫して応じないと表明しているのに、多数回かつ長期にわたり執拗に勧奨。年度を超えて行い、退職するまで続けると述べた許容される限界を越えている。損害賠償を命令
日立製作所事件
(横浜地裁 令和2年3月24日)
明確に退職勧奨を拒否しているのに、執拗に繰り返した違法
東武バス日光ほか事件
(東京高裁 令和3年6月16日)
嫌がる労働者に、その場で退職手続きをするよう1時間ほど繰り返し迫った違法
グローバルマーケティングほか事件
(東京地裁 令和3年10月14日)
自由な意思に基づいて退職の意思表示をしたものとは認められないとされた退職の合意が成立していない
日本アイ・ビー・エム事件
(東京地裁 平成23年12月28日)
退職勧奨が行われたが、事案の具体的判断として許容される範囲を逸脱していない

合意書に入れること

退職合意書の主な条項
条項内容
退職日いつをもって退職するか
退職事由会社都合か自己都合か(離職票の記載に影響)
解決金・退職加算金金額、支払時期、支払方法
有給休暇の取扱い残日数の消化または買取り
貸与物の返還PC、鍵、社員証、健康保険証
秘密保持在職中に知り得た情報の取扱い
清算条項本合意書に定めるほか債権債務がないことの確認

失業給付と離職理由

離職理由が会社都合になると、本人が受け取れる金額が変わります。具体的にどれだけ違うのかを先に置きます。

基本手当の所定給付日数(ハローワークインターネットサービス)
被保険者であった期間1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満
会社都合(特定受給資格者)35歳以上45歳未満150日240日270日
会社都合(特定受給資格者)45歳以上60歳未満180日240日270日
自己都合(一般の離職者)全年齢90日120日150日

退職勧奨は、進め方さえ間違えなければ解雇より安全な選択肢です。逆に、感情的になって強い言葉を使った瞬間に違法な退職強要になります。面談は複数名で、時間を区切り、記録を残す。断られたら引く。この4つを守ることが、結果的に会社を守ります。

助成金が止まる期間

ここが見落とされます。退職勧奨に応じてもらうことと、助成金を受け取ることは両立しないことがあります。厚生労働省の雇用関係助成金支給要領は、「解雇等」を次のように定義しています。

雇用関係助成金支給要領における「解雇等」の定義
要素内容
含まれるもの労働者の責めに帰すべき理由による解雇と、天災その他やむを得ない理由により事業の継続が不可能となったことによる解雇以外の解雇に、勧奨退職等を加えたもの
判定のしかた雇用保険被保険者資格喪失の確認の際に、喪失原因が「3」と判断されるもの

そのうえで、各コースに不支給の期間が定められています。たとえばキャリアアップ助成金の正社員化コースはこうです。

キャリアアップ助成金 正社員化コースの場合
項目内容
対象になる期間転換日の前日から起算して6か月前の日から、1年を経過する日まで
対象になる範囲当該転換を行った適用事業所において雇用する雇用保険被保険者
結果この期間に解雇等(勧奨退職を含む)で事業主都合により離職させた事業主は対象外

退職勧奨そのものは違法ではありませんし、解雇より安全な選択肢です。ただし従業員1〜10人の会社では、1人の離職が助成金の受給資格に直撃します。「辞めてもらう話」と「採用・処遇改善の助成金」は同じ1年半のなかで動くので、どちらを先にするかを決めてから動いてください。

よくある質問

Q退職勧奨を拒否されたらどうなりますか

退職は成立しません。退職勧奨は本人の合意が前提であり、拒否する自由があります。拒否を理由に不利益な取扱いをすることは違法です。

Q何回まで面談してよいですか

法律上の回数制限はありませんが、執拗な勧奨は違法な退職強要と評価されます。明確に拒否された後の勧奨は控えるべきです。

Q退職金を上乗せする必要はありますか

法律上の義務ではありません。ただし応じてもらうための条件として提示することは適法で、実務では給与の1〜3か月分程度が見られる水準です。

Q離職理由は会社都合になりますか

退職勧奨に応じた退職は事業主からの働きかけによるものとして会社都合になります。本人にとっては給付制限がなく有利ですが、会社は助成金への影響を確認する必要があります。

Q退職勧奨をすると助成金は受けられなくなりますか

勧奨退職は雇用関係助成金の要件上「解雇等」に含まれ、雇用保険被保険者資格喪失の確認の際に喪失原因が「3」と判断されるものが該当します。キャリアアップ助成金の正社員化コースでは、転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に解雇等で事業主都合により離職させた事業主は対象外です。

Q会社都合にすると本人はどれだけ得をしますか

特定受給資格者になるため給付制限がなく、7日間の待期期間の後すぐに支給が始まります。所定給付日数も、たとえば35歳以上45歳未満で被保険者期間10年以上20年未満の場合、自己都合の150日に対して270日です。

まとめ

この記事の要点

① 退職勧奨は勧めるだけ。本人が応じなければ退職は成立しない。
執拗な勧奨・長時間の拘束・人格否定は違法な退職強要。慰謝料の対象になる。
③ 面談は複数名・1時間程度・記録を残す・断られたら引く
④ 合意書には清算条項を必ず入れる。後からの未払請求を防ぐ。
⑤ 離職理由は会社都合。本人は給付制限がなくなり給付日数も伸びる。
⑥ 勧奨退職は助成金の「解雇等」に含まれる。キャリアアップ助成金は転換日の前6か月〜後1年が不支給。

この記事は2026年8月1日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。

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