試用期間中の解雇。14日を超えれば予告が必要で、本採用拒否も解雇です
「試用期間中だから自由に辞めさせられる」というのは誤りです。試用期間中でも労働契約は成立しており、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。
手続き面では14日が分かれ目になります。試用期間中の労働者を14日を超えて引き続き使用した場合、解雇予告の規定が適用されます(労働基準法21条)。つまり30日前の予告または30日分以上の解雇予告手当が必要です。そして本採用の拒否も法律上は解雇です。
試用期間の法的性質
- 解約権留保付労働契約…判例では、試用期間は解約権が留保された労働契約と解されています。契約は成立していて、会社に解約権が留保されているという構成です
- 通常の解雇より広い範囲で認められる…採用決定後の調査結果や、勤務成績・態度など採用時には知ることができなかった事実を理由とする場合、通常の解雇より広く解約が認められるとされています
- ただし自由ではない…客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認される場合にのみ認められます
- 期間の長さに法的な制限はない…3か月や6か月が一般的ですが、法定の上限はありません。ただし不当に長い試用期間は公序良俗違反とされる可能性があります
- 試用期間の延長には根拠が必要…就業規則に延長の定めがあり、延長する合理的な理由があることが前提です
14日という基準
| 時期 | 予告の要否 |
|---|---|
| 採用から14日以内 | 解雇予告・予告手当は不要 |
| 14日を超えて引き続き使用した後 | 30日前の予告または30日分以上の平均賃金が必要 |
- 14日は暦日で数える…出勤日数ではなく、採用日から起算した暦日です
- 14日以内でも解雇の有効性は別…予告が不要なだけで、解雇そのものに合理的な理由が必要であることは変わりません。「14日以内なら理由なしで解雇できる」わけではありません
- 予告日数が足りない分だけ手当を払う形も可…10日前に予告するなら20日分の平均賃金を支払います
- 解雇予告手当は退職所得…給与ではなく退職所得として扱われ、社会保険料は控除しません
- 試用期間の満了で終了させる場合も同じ…本採用拒否は解雇なので、14日を超えていれば予告が必要です
本採用拒否の限界
- 本採用拒否=解雇…試用期間の満了時に本採用しないことは、留保していた解約権の行使であり法律上は解雇です。「不採用」ではありません
- 認められやすい事由…経歴詐称、正当な理由のない遅刻・欠勤の繰り返し、指導しても改善しない勤務態度、業務に必要な資格を有していなかったなど
- 認められにくい事由…能力不足のみを理由とする場合、指導・教育を尽くしたかが問われます。「思っていたのと違った」では足りません
- 採用時に分かっていた事実は理由にできない…留保解約権は「採用時に知ることができなかった事実」を前提とするためです
- 記録が決定的に重要…指導した日時と内容、改善を求めた事実、本人の反応。これらの記録がなければ、後から合理的理由を立証できません
- 試用期間の趣旨を就業規則に書く…どのような場合に本採用しないかを明記しておくと、判断の根拠になります
実務の手順
- 採用時に試用期間を明示する…労働条件通知書に試用期間の有無と長さを記載します。就業規則にも規定します
- 問題があれば早期に指導し記録する…遅刻、業務ミス、態度。口頭注意でも日時と内容を記録します。改善の機会を与えたという事実が要件になります
- 面談で改善点を伝える…書面で改善を求め、期限を示します。本人の署名をもらえれば、より確実です
- それでも改善しない場合に判断する…本採用拒否の理由を書面で整理します
- 予告または予告手当を支払う…14日を超えていれば30日前の予告か、30日分以上の平均賃金です
- 合意退職を先に検討する…本人と話し合い、合意による退職で終えられれば紛争リスクが下がります。退職勧奨の手順に従います
- 解雇理由証明書を求められたら交付する…労働者から請求があれば、遅滞なく交付する義務があります(労働基準法22条)
- 離職票の離職理由…事業主都合による解雇であれば会社都合です。助成金の受給に影響することがあります
- 争われれば労働審判になりやすい…解雇の有効性を争う典型的な事案です。呼出状が届いてから約40日で答弁書と証拠が必要になります
- 当社の考え方…3名の会社では1人の採用ミスが業務全体に響きます。だからこそ試用期間中に「合わない」と感じた時点で記録を始めることが、結果的に双方にとって早い解決につながります
試用期間は「お試し」ではなく、解約権が留保されただけの労働契約です。本採用拒否が通常の解雇より広く認められるとはいえ、指導と改善機会の記録がなければ立証できません。採用した日から記録を残す運用にしておくことが、唯一の備えになります。
よくある質問
Q試用期間中なら自由に解雇できますか
できません。試用期間中でも労働契約は成立しており、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
Q14日以内なら予告なしで解雇できますか
解雇予告や予告手当は不要ですが、解雇そのものに合理的な理由が必要であることは変わりません。14日を超えて引き続き使用した後は予告または予告手当が必要です。
Q本採用しないことは解雇にあたりますか
あたります。試用期間満了時の本採用拒否は留保解約権の行使であり、法律上は解雇です。14日を超えていれば予告も必要です。
Q能力不足を理由に本採用を拒否できますか
指導・教育を尽くしたかが問われます。改善の機会を与えた記録がなければ、合理的な理由として認められにくくなります。
まとめ
① 試用期間は解約権留保付労働契約。契約は成立しており自由に解雇はできない。
② 14日を超えて引き続き使用した後は解雇予告または30日分以上の予告手当が必要。
③ 本採用拒否も法律上は解雇。通常より広く認められるが自由ではない。
④ 採用時に知ることができなかった事実が前提。能力不足なら指導の記録が要る。
⑤ 争われれば労働審判になりやすい。記録がなければ立証できない。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。