雇用調整助成金。売上10%減が入口、中小は3分の2で1年100日まで
雇用調整助成金は、景気の変動などの経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業・教育訓練・出向によって雇用を維持した場合に支給されます。
入口は生産量要件。売上高または生産量などの事業活動を示す指標の直近3か月間の月平均値が、前年同期に比べ10%以上減少していることです。助成率は中小企業3分の2、大企業2分の1。支給限度日数は1年間で100日分、3年で150日分です。
支給の入口となる2つの要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 生産量要件 | 売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近3か月間の月平均値が前年同期に比べ10%以上減少していること |
| 雇用量要件 | 雇用保険被保険者数および受け入れている派遣労働者の最近3か月間の月平均値が前年同期と比べ、中小企業は10%を超えてかつ4人以上(大企業は5%を超えてかつ6人以上)増加していないこと |
- 「経済上の理由」に限られる…景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由が対象です。通常予想される季節的変動、事故・災害による施設設備の被害、法令や司法処分による制限は該当しません
- 労使協定が前提…雇用調整(休業・教育訓練・出向)の実施について労使間で事前に協定し、その決定に沿って実施することが支給要件です。過半数労働組合、なければ過半数代表者との書面による協定が必要です
- 雇用保険の適用事業主であること…雇用保険に加入していることが前提です
- 3つの手段がある…休業、教育訓練、出向です。出向は出向元・出向先のどちらか一方が賃金を100%負担する場合は対象外になります
いくら出るか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算の基礎 | 休業手当(教育訓練の場合は賃金)に相当する額 |
| 助成率 | 中小企業 2/3、大企業 1/2 |
| 1人1日あたりの上限 | 雇用保険基本手当日額の最高額(令和6年8月1日時点で8,635円) |
| 教育訓練の加算 | 1人1日あたり1,200円(この加算は上限額の計算に含まない) |
- 上限額は毎年8月1日に改定される…上記は令和6年8月1日時点の額としてガイドブックに示されているものです。申請時点の最高額を必ず確認してください
- 残業していると差し引かれる…休業等を行った判定基礎期間内に、対象労働者が所定外労働(法定外労働を含む)や所定休日の労働を行っていた場合、その時間相当分が助成額から差し引かれます(残業相殺)
- 助成されるのは休業手当の一部…休業手当そのものは会社が全額を先に支払います。助成金は後から入ってくるので、資金繰りは自前で回す必要があります
日数の数え方
- 支給限度日数は1年で100日、3年で150日…休業等に対する助成の上限です
- 「1人でも休めば1日」ではない…休業等の延べ日数を対象労働者の人数で割った日数を使います
- 厚生労働省の例…対象労働者が10人の事業所で、そのうち6人が5日ずつ休業した場合。延べ日数は6人×5日=30人日なので、30÷10=3日としてカウントします。「5日」ではありません
- だから全員一斉より分散のほうが日数を使わない…同じ人件費の削減幅なら、少人数を長く休ませるより、全員を薄く休ませるほうが限度日数の消費は同じになります。計算式を理解しておくと計画が立てやすくなります
手続きの順番
- 生産指標を確認する…直近3か月の売上高等の月平均が前年同期比10%以上減っているかを、決算書や売上台帳で確認します
- 労使協定を結ぶ…休業の期間・対象者・休業手当の率などを書面で決めます
- 計画届を出す…実施前に労働局等へ提出します。実施してから出すのではありません
- 計画どおりに休業等を実施する…休業手当を支払います
- 支給申請する…判定基礎期間ごと、または連続する2〜3の判定基礎期間をまとめて申請できます
- 書類は5年間保存する…提出した書類は支給決定されたときから5年間保存しなければなりません
- 生産指標の資料は原本の写しを出す…申請用に作り直したものではなく、原本を複写したものを提出します
- 休業手当の計算は労基法の話…雇用調整助成金とは別に、労働基準法26条により平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。助成金は事後的にその一部を補填するものです
- 当社の視点…3名の会社では、雇用調整助成金を使う場面は「売上が3か月続けて1割落ちた」という深刻な状況です。助成金の手続きより先に、資金繰り表で何か月もつかを出すほうが優先度は高い。計画届から入金までにはそれなりの時間がかかります
雇用調整助成金でよく誤解されるのは、「休業させれば出る」という点です。入口は生産量要件(3か月平均で10%以上減)で、そこを満たさなければ手続きに進めません。また実施前の計画届が必要なので、休ませてから申請しようとしても間に合いません。使う可能性が見えた段階で、労働局に相談してください。
よくある質問
Qどういう場合に使えますか
景気の変動などの経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされ、売上高または生産量などの指標の直近3か月間の月平均値が前年同期比10%以上減少している場合です。季節的変動や、災害による施設設備の被害は該当しません。
Q助成率はいくらですか
中小企業は3分の2、大企業は2分の1です。1人1日あたりの上限は雇用保険基本手当日額の最高額(ガイドブックでは令和6年8月1日時点で8,635円)で、毎年8月1日に改定されます。
Q何日まで使えますか
1年間で100日分、3年で150日分が上限です。日数は休業等の延べ日数を対象労働者数で割って計算します。
Q休業してから申請できますか
できません。実施前に計画届を提出する必要があります。労使協定も事前に締結しておく必要があります。
まとめ
① 入口は生産量要件=売上等の直近3か月平均が前年同期比10%以上減。
② 労使協定と事前の計画届が必須。休業してからでは間に合わない。
③ 助成率は中小2/3・大企業1/2。上限は雇用保険基本手当日額の最高額(毎年8月1日改定)。
④ 限度日数は1年100日・3年150日。日数は延べ日数÷対象労働者数。
⑤ 休業手当は先に会社が全額支払う。助成は後から。資金繰りは自前。
この記事は2026年8月1日時点の法令・公開情報に基づいています。制度は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。