中退共。掛金は月5,000円から、国の助成が1年間つきます
中退共(中小企業退職金共済)は、国の制度として運営される中小企業向けの退職金制度です。掛金は月額5,000円〜30,000円の16種類から従業員ごとに選べ、短時間労働者には2,000円・3,000円・4,000円の特例額があります。
小さな会社にとっての最大の魅力は助成です。新規に加入すると、加入後4か月目から1年間、掛金の半分(従業員ごと月5,000円が上限)を国が助成します。短時間労働者の特例額には追加助成もあり、掛金2,000円なら300円、3,000円なら400円、4,000円なら500円が上乗せされます。掛金は全額が損金で、退職金は会社を経由せず機構から従業員へ直接支払われます。ただし後戻りしにくい制度でもあるので、そこも含めて整理します。
掛金と助成
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 掛金月額 | 5,000円〜30,000円(16種類)から従業員ごとに選択 |
| 短時間労働者の特例額 | 2,000円・3,000円・4,000円 |
| 新規加入助成 | 加入後4か月目から1年間、掛金の1/2(従業員ごと上限5,000円) |
| 短時間労働者への追加助成 | 掛金2,000円→300円/3,000円→400円/4,000円→500円を上乗せ |
| 月額変更助成 | 掛金を増額した場合、増額分の1/3を1年間助成(要件あり) |
- 短時間労働者は週30時間未満の人…同じ職場の通常の労働者より所定労働時間が短く、かつ週30時間未満の労働者が特例額の対象です
- 助成は自動的に受けられる…加入すれば申請なしで適用されます。加入のタイミングで受けられるかどうかが決まるので、加入時期を分散させると助成も分散します
- 掛金は全額事業主負担…従業員に負担させることはできません。給与から控除する形は認められません
- 掛金の増額は自由、減額は難しい…増額はいつでもできますが、減額には従業員の同意(または厚生労働大臣の認定)が必要です。ここが最大の注意点です
加入できる会社
- 業種ごとに資本金・従業員数の上限がある…一般業種は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業・サービス業は1億円以下または100人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下といった区分です。従業員数人の会社はほぼ確実に該当します
- 従業員は原則として全員加入させる…一部の従業員だけを加入させることは原則できません。試用期間中の人や期間を定めて雇われている人など、加入させなくてよい例外はあります
- 役員は加入できない…事業主と生計を一にする同居の親族のみを雇用している場合や、役員は対象外です。使用人兼務役員は加入できる場合があります
- 他の退職金制度との併用も可能…確定拠出年金(企業型DC)などと併用している会社もあります
税務上の扱いと事務の負担
- 掛金は全額損金…法人なら損金、個人事業なら必要経費です。福利厚生費として処理します。利益が出ている年に退職金の準備をしながら損金を作れるのが税務上の効果です
- 退職金は機構から従業員へ直接支払われる…会社が支払うのではありません。会社は「退職金共済手帳の被共済者退職届」を提出するだけです。会社の資金繰りに影響しないのが自社積立との大きな違いです
- 従業員側は退職所得…退職所得控除が使えるため、一時金で受け取る場合の税負担は軽くなります。分割受給も選べます
- 事務は月々の掛金引落しだけ…毎月18日に指定口座から引き落とされます。従業員の入退社時に届出が必要ですが、日常の事務負担はほとんどありません
注意点は「やめにくさ」
- 掛金の減額に従業員の同意が必要…業績が悪化しても勝手に下げられません。同意が得られない場合は厚生労働大臣の認定が必要です。開始するときは「下げられない前提」で金額を決めるべきです
- 解約(解除)は原則できない…従業員の同意と厚生労働大臣の認定が必要です。制度としてやめることを想定していません
- 解約手当金は従業員に支払われる…会社に戻るお金ではありません。積み立てた分は従業員のものです
- 納付月数が短いと元本を下回る…掛金納付月数が11か月以下では退職金は支給されず、12か月以上23か月以下では掛金相当額を下回ります。短期離職が多い職場では従業員側に不利になる点は説明が必要です
- 懲戒解雇でも原則として支払われる…会社が減額を申し出て厚生労働大臣の認定を受けた場合を除き、退職金は従業員に支払われます。自社規程で「懲戒解雇なら不支給」としていても、中退共からの支給は止まりません
当社は3名の会社で、退職金制度の設計は現実的な検討課題です。中退共の魅力は助成と損金性、そして「会社に資金を置かない」構造ですが、裏返せば下げられない固定費が増えるということでもあります。月5,000円から始められるので、無理のない金額で始めて増額していくのが小さな会社に合った使い方だと考えています。
よくある質問
Q従業員が3人でも加入できますか
できます。従業員数の下限はありません。業種ごとの資本金・従業員数の上限を超えていなければ加入できます。
Q一部の従業員だけ加入させることはできますか
原則としてできません。従業員は全員加入が基本です。試用期間中の人や期間を定めて雇われている人など、加入させなくてよい例外はあります。
Q業績が悪くなったら掛金を減らせますか
従業員の同意が必要です。同意が得られない場合は厚生労働大臣の認定が必要になります。始めるときは減額できない前提で金額を決めるのが安全です。
Q退職金の額はどう決まりますか
掛金月額と納付月数に応じて決まります。納付月数が11か月以下では支給されず、12か月以上23か月以下では掛金相当額を下回ります。長く積むほど有利になる設計です。
まとめ
① 掛金は月5,000円〜30,000円の16種類、短時間労働者は2,000円・3,000円・4,000円の特例額。
② 新規加入なら4か月目から1年間、掛金の1/2(上限月5,000円)を国が助成。短時間労働者には追加助成もある。
③ 掛金は全額損金で、退職金は機構から従業員へ直接支払われる(会社の資金繰りに影響しない)。
④ 最大の注意点は減額・解約に従業員の同意が必要なこと。下げられない前提で金額を決める。
⑤ 納付月数が11か月以下では不支給、23か月以下では掛金を下回る。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。