転勤・勤務地変更の手続き。社会保険と住民税で届出先が変わります
従業員の勤務地が変わったとき、必要な手続きは同じ会社の中の移動でも発生します。事業所単位で管理されている制度があるためです。
①社会保険=事業所が変われば、旧事業所で資格喪失、新事業所で資格取得(一括適用の承認があれば不要) ②雇用保険=事業所非該当の承認がなければ「雇用保険被保険者転勤届」 ③住民税=新しい勤務地の市区町村へ納めるわけではないが、給与支払報告に関する届出が必要。加えて通勤手当の変更、転勤命令の根拠、単身赴任手当の課税といった論点があります。
社会保険の手続き
- 事業所ごとに適用されるのが原則…社会保険は事業所単位で適用されるため、別の事業所に移れば旧事業所で資格喪失届、新事業所で資格取得届が必要です
- 一括適用の承認があれば不要…本社で一括して手続きを行う承認(一括適用)を受けていれば、事業所間の移動で届出は不要です。複数拠点がある会社は検討する価値があります
- 資格喪失と取得は同日…転勤日で喪失し、同じ日に取得します。保険証の番号が変わるため、再交付までの空白に注意します
- 標準報酬月額は引き継がれる…同日得喪の場合、報酬が変わらなければ標準報酬月額もそのままです。転勤に伴い手当が変わるなら随時改定の検討が必要です
- 健康保険組合は別途確認…組合健保の場合、組合ごとに手続きが定められています
雇用保険と住民税
| 制度 | 届出 | 提出先 |
|---|---|---|
| 雇用保険 | 雇用保険被保険者転勤届 | 新しい事業所を管轄するハローワーク |
| 住民税 | 給与所得者の異動届出書 | 従業員が住む市区町村(住所変更を伴う場合) |
| 労働保険 | 事業所ごとに成立している場合は保険関係の整理 | 労働基準監督署 |
- 雇用保険の転勤届は10日以内…転勤した日の翌日から起算して10日以内に提出します。事業所非該当承認を受けている場合は不要です
- 住民税は「1月1日時点の住所地」に納める…転勤で引っ越しても、その年度の住民税は1月1日時点の住所地の市区町村に納め続けます。年度途中で納付先は変わりません
- 引っ越しがあれば翌年度から変わる…翌年1月1日時点の住所地が新しい市区町村になれば、翌年度から納付先が変わります
- 異動届出書は退職・転勤・住所変更で使う…様式は共通で、事由に応じて記載します
- 通勤手当の変更を忘れない…勤務地が変われば通勤経路と定期代が変わります。非課税限度額の判定もやり直します
転勤命令の根拠
- 就業規則または労働契約に根拠が必要…「業務上の都合により転勤を命じることがある」という規定が根拠になります。根拠がなければ一方的に命じることはできません
- 勤務地限定の合意があれば命じられない…採用時に勤務地を限定する合意をしていれば、その範囲を超える転勤には本人の同意が必要です
- 2024年4月から就業場所の変更の範囲を明示する義務…労働条件の明示事項に「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」が加わりました。採用時に転勤の可能性を明示していなければ、後から命じにくくなります
- 権利濫用は無効…業務上の必要性がない、不当な動機・目的がある、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合は、転勤命令が無効と判断されます
- 育児・介護への配慮義務…育児介護休業法により、転勤で育児や介護が困難になる労働者について配慮する義務があります
手当と旅費の課税
- 赴任旅費は非課税になりうる…転任に伴う転居のための旅行で、通常必要と認められる範囲の費用は非課税です。実費相当額を支給する形にします
- 単身赴任手当は原則として課税…給与として課税されます。ただし単身赴任者が職務遂行上の理由で帰宅する際の旅費は、一定の要件で非課税とされる取扱いがあります
- 社宅を用意する場合…賃貸料相当額を徴収しなければ、その差額が給与課税されます。役員か従業員かで計算方法が異なります
- 引越費用を会社が負担する場合…通常必要と認められる範囲であれば非課税です。領収書を保管し、支給基準を規程で定めておきます
- 当社の視点…賃貸の仲介・管理が本業なので、転勤に伴う社宅の手配は日常業務です。法人契約か個人契約か、賃貸料相当額をいくらにするかは、契約の段階で決めておく必要があります
転勤の手続きは「同じ会社の中だから何もいらない」と思われがちですが、社会保険・雇用保険は事業所単位で管理されています。拠点が複数ある会社は、一括適用や事業所非該当の承認を受けておくと、都度の届出がなくなります。
よくある質問
Q同じ会社内の異動でも社会保険の手続きは必要ですか
事業所が変わる場合は必要です。旧事業所で資格喪失、新事業所で資格取得を行います。一括適用の承認を受けていれば不要です。
Q転勤で引っ越したら住民税の納付先は変わりますか
その年度は変わりません。住民税は1月1日時点の住所地の市区町村に納めるため、年度途中の転居では納付先は変わりません。翌年1月1日時点の住所地に応じて翌年度から変わります。
Q転勤を拒否されたらどうなりますか
就業規則等に根拠があり、権利濫用に当たらなければ業務命令として有効です。ただし勤務地限定の合意がある場合や、育児・介護に配慮すべき事情がある場合は慎重な判断が必要です。
Q赴任旅費に税金はかかりますか
転任に伴う転居のための旅行で通常必要と認められる範囲の費用は非課税です。単身赴任手当は原則として課税されます。
まとめ
① 事業所が変われば社会保険は資格喪失+取得(一括適用の承認があれば不要)。
② 雇用保険は転勤届を10日以内に新事業所管轄のハローワークへ(事業所非該当承認があれば不要)。
③ 住民税は1月1日時点の住所地に納めるため、年度途中の転居で納付先は変わらない。
④ 転勤命令には就業規則等の根拠が必要。2024年4月から就業場所の変更の範囲の明示が義務。
⑤ 赴任旅費は非課税になりうるが単身赴任手当は原則課税。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。