消防計画の届出。防火管理者の選任とセットで必要になります
オフィスビルにテナントとして入居していても、消防法上の義務は発生します。一定規模以上の防火対象物では防火管理者を選任し、消防計画を作成して所轄の消防署に届け出ることが義務づけられています。
基準は収容人員です。飲食店や物販店などの特定用途は30人以上、事務所や倉庫などの非特定用途は50人以上。ここでいう収容人員は、ビル全体ではなく管理権原ごと(テナントごと)に判定される場合と、建物全体で判定される場合があります。自社が該当するかどうかの判定から始めます。
義務が生じる基準
| 用途 | 収容人員 | 規模 |
|---|---|---|
| 特定用途(飲食店・物販・病院・ホテル等) | 30人以上 | 延べ面積300㎡以上は甲種、未満は乙種 |
| 非特定用途(事務所・工場・倉庫・共同住宅等) | 50人以上 | 延べ面積500㎡以上は甲種、未満は乙種 |
| 新築工事中の建築物等 | 一定規模以上 | 個別に判定 |
- 収容人員は従業員数ではない…用途ごとに算定方法が定められています。事務所なら従業者の数ですが、飲食店なら従業者数+客席の面積等から算定します
- 甲種と乙種で講習が違う…甲種防火管理講習は2日間、乙種は1日です。規模が大きい建物は甲種の資格者でなければ選任できません
- 共同住宅も非特定用途…賃貸マンションの居住者を含めた収容人員が50人以上なら、管理権原者(オーナー)に選任義務があります
- 複数用途が混在する場合…特定用途が一部でも含まれる建物(複合用途防火対象物)は、特定用途としての基準が適用されることがあります
- 選任したら遅滞なく届出…防火管理者を選任・解任したときは、遅滞なく所轄の消防署長に届け出ます
消防計画に書くこと
- 自衛消防の組織…火災が発生したときの役割分担(通報連絡、初期消火、避難誘導)を定めます
- 火災予防上の自主検査…消火器、避難通路、電気設備などの点検項目と頻度を定めます
- 消防用設備等の点検・整備…法定点検(機器点検6か月ごと、総合点検1年ごと)の実施体制を書きます
- 避難通路・避難口の維持管理…避難経路に物を置かないなどの管理方法を定めます
- 消防訓練の実施…特定用途は消火・避難訓練を年2回以上、その他は消防計画に定める回数を実施します
- 消防署に様式がある…各消防本部が用途別・規模別の消防計画の作成例を公表しています。ゼロから作る必要はありません
- 実態に合わせて修正する…作成例をそのまま使うと、実際の避難経路や役割分担と合わなくなります。図面と組織図を差し替えます
- 変更したら再届出…組織や体制を変更した場合、変更後の消防計画を届け出ます
- 訓練の実施も届出…特定用途の防火対象物では、消火訓練・避難訓練を実施する場合、あらかじめ消防機関に通報する義務があります
届出の手続き
| 届出 | 内容 |
|---|---|
| 防火管理者選任(解任)届出書 | 選任した防火管理者の氏名・資格を届け出る |
| 消防計画作成(変更)届出書 | 作成または変更した消防計画を届け出る |
| 消防訓練実施結果報告書 | 訓練を実施した結果を報告(自治体により様式が異なる) |
| 防火対象物使用開始届出書 | 建物や部分の使用を開始する7日前までに届け出る |
- 提出先は所轄の消防署…事業所の所在地を管轄する消防署の予防課です
- 選任届には資格を証する書面を添付…防火管理講習の修了証の写しを添付します
- 使用開始届は7日前まで…新たに建物や区画を使い始めるときの届出です。オフィスの移転時に忘れやすい手続きです
- 電子申請ができる自治体もある…東京消防庁など、オンラインでの届出に対応している地域があります
- 罰則がある…防火管理者を選任しない場合や消防計画を作成しない場合、消防法違反として措置命令や罰則の対象になります
テナントの場合
- 管理権原ごとに義務が生じる…ビルのオーナーと各テナントは、それぞれの管理権原の範囲で防火管理の責任を負います。ビル側が防火管理者を置いていても、テナント側の義務がなくなるわけではありません
- 統括防火管理者が置かれる場合…管理権原が分かれている建物では、建物全体の防火管理を行う統括防火管理者を選任する制度があります
- ビル管理会社に確認する…入居時に、テナントとして何をすべきかを確認します。消防計画の提出をビル側が取りまとめている場合もあります
- 小規模テナントは義務がないことが多い…従業員数人の事務所であれば、テナント単位での収容人員は基準に達しません。ただし建物全体の避難訓練への参加は求められます
- 当社の視点…賃貸物件の管理会社として、オーナー側の防火管理と入居テナントの義務の切り分けは日常的な論点です。入居時の重要事項説明では触れないが、実務では必ず出てくる部分です
消防関係の届出は、収容人員という耳慣れない基準で義務の有無が決まります。事務所なら50人以上という数字を覚えておけば、自社が該当するかはすぐ判断できます。該当しない規模でも、消火器の設置や避難経路の確保は建物側の義務として存在しています。
よくある質問
Q従業員が数人でも消防計画は必要ですか
事務所などの非特定用途では収容人員50人以上が基準のため、通常は不要です。ただしビル全体としての義務があり、避難訓練への参加などを求められることがあります。
Qテナントとして入居していても防火管理者は必要ですか
管理権原ごとに判定されるため、テナント単位で基準を満たせば必要です。ビル側が防火管理者を置いていても、テナント側の義務が自動的になくなるわけではありません。
Q消防計画はゼロから作りますか
各消防本部が用途別の作成例を公表しています。それを基に、実際の避難経路や組織体制に合わせて修正するのが実務です。
Q届出をしないとどうなりますか
消防法違反として措置命令の対象になり、罰則が定められています。防火管理者の未選任や消防計画の未作成が対象です。
まとめ
① 特定用途は収容人員30人以上、非特定用途(事務所等)は50人以上で防火管理者の選任義務。
② 選任したら消防計画を作成して所轄消防署に届出。
③ 消防計画には自衛消防組織・自主検査・設備点検・避難経路・訓練を定める。
④ 管理権原ごとに義務が生じる。ビル側が置いていてもテナントの義務は残る。
⑤ 防火対象物使用開始届出書は使用開始の7日前まで。オフィス移転時に忘れやすい。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。