休職制度。法律上の義務ではないので、就業規則の設計がすべてです
休職は法律上の制度ではありません。労働基準法にも定めがなく、設けるかどうかは会社の自由です。だからこそ就業規則にどう書くかがすべてになります。
設計で決めるべきことは5つ。①適用対象(勤続年数の要件) ②休職期間(勤続年数に応じた設定) ③賃金の有無 ④期間満了時の扱い(自然退職か解雇か) ⑤復職の判断方法。特に④を「自然退職」としておくか「解雇」とするかで、後の手続きの安全性が変わります。書き方の要点を整理します。
就業規則で決めること
| 項目 | 考え方 |
|---|---|
| 適用対象 | 勤続1年以上など要件を設けるのが一般的 |
| 休職事由 | 私傷病、公職就任、出向など |
| 休職期間 | 勤続年数に応じて3か月〜1年程度 |
| 賃金 | 無給とするのが一般的 |
| 期間満了時 | 自然退職とするか解雇とするか |
| 復職の判断 | 診断書の提出、産業医の意見、会社の判断 |
| 通算規定 | 再発時に前回の期間を通算するか |
- 試用期間中は対象外とすることが多い…適性を判断する期間であるため、休職制度の適用外とする例が一般的です
- 期間は勤続年数に応じて設定する…勤続3年未満は3か月、3年以上は6か月といった段階を設けます。小さな会社が長期の休職期間を設けると経営を圧迫します
- 通算規定は必ず入れる…復職後、同一または類似の傷病で再び休職する場合、前の休職期間を通算する旨を定めます。これがないと復職と休職を繰り返されることになります
- 復職後の一定期間内の再休職…「復職後6か月以内に同一の事由で休職する場合は、前回の休職期間と通算する」といった書き方をします
- 休職期間中の報告義務…定期的に状況を報告させる規定を置きます
期間満了時の扱い
- 「自然退職」とするのが実務上安全…休職期間が満了しても復職できない場合、休職期間の満了をもって退職とすると定めます。解雇ではないため、解雇予告や解雇の有効性の問題が生じにくくなります
- 「解雇する」と書くと解雇規制がかかる…解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。紛争になりやすいため、自然退職とする例が多くなっています
- 自然退職でも争われることはある…復職可能だったのに認めなかったという主張がなされます。復職判断の記録が重要です
- 離職票の記載…自然退職の場合、離職理由の記載に注意します。傷病による退職であれば、特定理由離職者として扱われることがあります
- 期間満了前に通知する…満了日が近づいたら、復職の可否を判断する時期であることを本人に伝えます
復職の判断
- 本人から復職の申出と診断書の提出を受ける…主治医の診断書に「就業可能」と記載されていることが出発点です
- 会社が判断することを規程に明記する…復職の可否は会社が判断すると定めます。診断書があれば自動的に復職、という運用にはしません
- 産業医または会社指定医の意見を求める…主治医は本人の申告に基づいて判断するため、業務内容を踏まえた判断が必要です。規程に「会社が指定する医師の診断を求めることがある」と書いておきます
- 従前の業務に復帰できるかを基準とする…原則として休職前の職務を通常程度に行えることが基準ですが、他に配置可能な業務があれば検討すべきとされた裁判例があります
- 試し出勤(リハビリ出勤)の扱いを決める…導入するなら、賃金を支払うか、労働時間として扱うか、災害が起きたときの扱いを規程で明確にします
- 主治医と産業医の意見が食い違う場合…就業上の措置は産業医の意見を踏まえて会社が判断します。判断の経緯を記録に残します
- 復職後の配慮…短時間勤務、業務軽減などの措置を一定期間設けるのが一般的です
- メンタル不調の再発率は高い…復職直後の負荷管理が再休職を防ぎます。本人・上司・産業医の三者で状況を確認する場を設けます
賃金と社会保険
- 休職中は無給とするのが一般的…ノーワーク・ノーペイの原則により、労働の提供がなければ賃金は発生しません。規程に明記します
- 傷病手当金が支給される…業務外の傷病で仕事に就けない場合、健康保険から標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。支給開始日から通算して1年6か月が限度です
- 社会保険料は発生し続ける…休職中も被保険者資格は継続するため、会社負担分と本人負担分の両方が発生します。無給の場合、本人負担分をどう回収するかを決めておきます
- 回収方法を規程に書く…毎月本人に振り込んでもらう、復職後の給与から控除する、会社が立て替えるなど。取り決めがないと未回収のまま退職されることがあります
- 住民税も同じ問題がある…特別徴収を続けるなら、給与から控除できないため本人から回収するか、普通徴収に切り替えます
休職制度は「あると従業員が安心する」制度ですが、小さな会社では長期の休職が経営に直結します。作るなら期間を現実的な長さに設定し、通算規定と復職判断の条項を必ず入れる。この2つがないと、制度が想定外の使われ方をします。
よくある質問
Q休職制度は必ず設けなければなりませんか
法律上の義務ではありません。設けるかどうかは会社の自由で、内容もすべて就業規則で決めます。
Q休職期間が満了したらどうなりますか
就業規則の定めによります。自然退職とする例が多く、解雇とするより手続き上の紛争リスクが低くなります。
Q主治医の診断書があれば復職させなければなりませんか
復職の可否は会社が判断する旨を規程に定めておけば、診断書だけで自動的に復職とはなりません。産業医や会社指定医の意見を求めることも規程に書いておきます。
Q休職中の社会保険料はどうなりますか
被保険者資格が継続するため保険料は発生します。無給の場合は本人負担分を給与から控除できないため、回収方法を規程で決めておく必要があります。
まとめ
① 休職は法律上の制度ではない。就業規則の設計がすべて。
② 期間満了時は自然退職とするのが実務上安全。解雇とすると解雇規制がかかる。
③ 通算規定を入れないと、復職と休職を繰り返される。
④ 復職の可否は会社が判断する旨と、会社指定医の診断を求めることがある旨を明記する。
⑤ 無給でも社会保険料は発生する。本人負担分の回収方法を先に決める。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。