健康保険組合と協会けんぽ。保険料率と付加給付が違います
健康保険には協会けんぽ(全国健康保険協会)と健康保険組合の2つがあります。従業員数人の会社は原則として協会けんぽで、これは選択の余地がありません。健康保険組合は単独で700人以上(同種同業の複数企業で設立する総合組合は3,000人以上)という設立要件があるためです。
違いは主に3つ。①保険料率=協会けんぽは都道府県ごと、組合は組合ごとに設定。②付加給付=組合には法定給付に上乗せがある場合がある。③保険料の負担割合=協会けんぽは労使折半、組合は事業主負担を多くできる。ただし業界団体の総合組合に加入できる場合もあるので、業種によっては選択肢があります。
2つの違い
| 項目 | 協会けんぽ | 健康保険組合 |
|---|---|---|
| 運営 | 全国健康保険協会 | 各企業・業界団体が設立 |
| 保険料率 | 都道府県ごとに設定 | 組合ごとに設定(3%〜13%の範囲) |
| 負担割合 | 労使折半 | 事業主負担を多くできる |
| 付加給付 | なし | 組合により法定給付に上乗せがある場合も |
| 設立要件 | — | 単独700人以上/総合組合3,000人以上 |
| 保険給付の窓口 | 協会けんぽ都道府県支部 | 各組合 |
- 法定給付の内容は同じ…療養の給付、傷病手当金、出産手当金などの法定給付は両者で共通です。違うのは付加給付と保険料率です
- 付加給付の例…医療費の自己負担が一定額を超えた分を組合が補填する、傷病手当金を上乗せするなどです。組合によって内容は異なります
- 厚生年金は共通…健康保険がどちらでも、厚生年金保険は日本年金機構が運営します。保険料率も全国一律です
- 介護保険料率も違う…40歳以上65歳未満の介護保険料は、協会けんぽは全国一律、組合は組合ごとの設定です
協会けんぽの保険料率
- 都道府県ごとに異なる…医療費の水準を反映して支部ごとに設定されます。事業所の所在地の都道府県の料率が適用されます
- 毎年3月分(4月納付分)から改定…年度ごとに見直されます。給与計算ソフトの料率更新を忘れると誤った控除になります
- 労使折半…保険料は事業主と被保険者が半分ずつ負担します。端数は事業主負担とするのが一般的です
- 支部が違えば料率も違う…本社と支店が別の都道府県にある場合、それぞれの支部の料率が適用されます
- 保険料額表で確認する…協会けんぽが都道府県別の保険料額表を公表しています。標準報酬月額ごとの金額が記載されています
組合健保に入れる場合
- 業界の総合組合に加入できることがある…同種同業の企業が集まって設立した総合健保組合があり、中小企業でも加入できる場合があります。人材派遣、情報サービス、飲食業などの業界団体が運営しています
- 加入には審査がある…業種要件、加入時の健康診断、事業所の規模など、組合ごとに条件が定められています
- 保険料率が低い組合もある…協会けんぽより料率が低ければ、会社と従業員の双方に負担軽減効果があります。ただし組合の財政状況により料率は変わります
- 脱退は自由にできない…組合の規約によります。加入前に脱退の条件を確認する必要があります
- 被扶養者の認定が厳しいことがある…組合によっては協会けんぽより添付書類が多く、扶養の再確認(検認)も毎年行われます
手続きの違い
- 協会けんぽは年金事務所に一本化…資格取得届や算定基礎届は年金事務所(事務センター)に提出すれば、健康保険と厚生年金の両方が処理されます
- 組合健保は2か所に提出…厚生年金の届出は年金事務所、健康保険の届出は組合に提出します。提出先が2つになるため事務が増えます
- 保険証の発行元が違う…組合健保では組合が発行します。資格取得から交付までの日数も組合により異なります
- 退職時の任意継続も窓口が違う…協会けんぽなら支部、組合健保なら組合に申請します。保険料は全額自己負担で、期間は最長2年です
- 当社は協会けんぽ…3名の会社なので選択肢はありません。ただし業界団体の総合組合があれば検討の余地はあり、料率と付加給付を比較する価値はあります
小さな会社にとって健康保険は「選ぶもの」ではなく「協会けんぽに入るもの」というのが実情です。ただし業種によっては総合健保組合という選択肢があり、料率が低ければ人件費に直接効きます。加入審査があるため誰でも入れるわけではありませんが、同業他社がどこに加入しているかを知っておく価値はあります。
よくある質問
Q小さな会社でも健康保険組合に入れますか
単独での設立は700人以上が要件のため難しいですが、業界団体が運営する総合健保組合に加入できる場合があります。業種要件や審査があるため、該当する組合があるかを確認します。
Q協会けんぽの保険料率は全国一律ですか
違います。都道府県ごとに設定され、事業所の所在地の料率が適用されます。毎年3月分(4月納付分)から改定されます。
Q付加給付とは何ですか
健康保険組合が法定給付に上乗せして行う給付です。医療費の自己負担額が一定額を超えた分を補填する制度などがあり、組合によって内容が異なります。協会けんぽにはありません。
Q組合健保だと手続きはどう変わりますか
厚生年金は年金事務所、健康保険は組合と提出先が2つに分かれます。協会けんぽなら年金事務所への提出で両方が処理されるため、事務量が違います。
まとめ
① 健康保険は協会けんぽと健康保険組合の2つ。小さな会社は原則として協会けんぽ。
② 違いは保険料率・付加給付・負担割合。法定給付の内容は同じ。
③ 協会けんぽの料率は都道府県別で毎年3月分から改定。労使折半。
④ 業界団体の総合健保組合なら中小企業でも加入できる場合がある(審査あり)。
⑤ 組合健保は厚生年金は年金事務所・健康保険は組合と提出先が分かれる。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。