会社の健康診断は義務です。費用は会社が負担します
健康診断は労働安全衛生法66条による事業者の義務です。「福利厚生」ではなく法律上の義務なので、実施しなければ50万円以下の罰金(同法120条)の対象になります。
実務で迷うのは3点です。①費用は誰が払うのか=事業者負担。厚生労働省も事業者が負担すべきものとしています。②パートも対象か=「常時使用する労働者」に当たるかで判断し、期間の定めがない(または1年以上使用される見込み)かつ週の所定労働時間が正社員の4分の3以上なら実施義務があります。③受診時間の賃金=一般健診は労使協議で決めるものですが、支払うことが望ましいとされています。
何をいつやるのか
| 種類 | 時期 | 対象 |
|---|---|---|
| 雇入時の健康診断 | 雇い入れの際 | 常時使用する労働者 |
| 定期健康診断 | 1年以内ごとに1回 | 同 |
| 特定業務従事者の健康診断 | 配置替えの際と6か月以内ごとに1回 | 深夜業を含む業務など |
| 海外派遣労働者の健康診断 | 6か月以上の海外派遣の前後 | 該当者 |
- 雇入時健診は入社前3か月以内の診断書で代替できる…本人が入社前3か月以内に受けた健康診断の結果を提出すれば、その項目については省略できます。中途採用が多い会社では実際に使われる運用です
- 定期健診は「1年以内ごとに1回」…年度で管理するのが一般的ですが、法律上は前回から1年以内です。実施月が毎年ずれていくと期間が空くことがあるので、時期を固定するほうが管理しやすいです
- 深夜業があると年2回…深夜業を含む業務に常時従事する労働者は、6か月以内ごとに1回です。飲食や運送だけでなく、シフトで深夜帯に入る業務も該当します
- 項目を勝手に減らせない…定期健診の項目は規則で定められています。医師が必要でないと認めた場合に省略できる項目はありますが、事業者の判断で削ることはできません
対象になる人・ならない人
- 「常時使用する労働者」の判断は2つの条件…①期間の定めのない契約(または契約期間が1年以上、更新により1年以上使用される見込み)②週の所定労働時間が同種業務の正社員の4分の3以上。両方満たせば実施義務があります
- 4分の3未満でも2分の1以上なら実施が望ましい…厚生労働省の通達では、週の所定労働時間が2分の1以上4分の3未満の場合は実施が望ましいとされています。義務ではありませんが、実施している会社もあります
- 役員は対象外…労働者ではないため法律上の義務はありません。ただし使用人兼務役員で労働者性がある場合は対象になります。実務では代表者も一緒に受けているケースが多いです
- 派遣労働者は派遣元の義務…一般健康診断は派遣元が実施します。派遣先は特殊健康診断(有害業務)の実施義務を負います
- 短期のアルバイトは対象外…1年未満の契約で更新の見込みがなければ「常時使用する労働者」に当たりません
費用と受診時間の扱い
- 費用は事業者負担…法律で事業者に実施義務があるため、その費用は事業者が負担すべきものと解されています。自己負担にしている運用は指摘の対象になります
- 相場は1人5,000〜15,000円程度…実施項目や医療機関によって幅があります。協会けんぽの生活習慣病予防健診を使えば費用の一部が補助され、自己負担が下がります
- 受診時間の賃金は一般健診と特殊健診で扱いが違う…有害業務の特殊健康診断は労働時間として賃金の支払いが必要です。一般健康診断の受診時間は労使協議で決めるものとされていますが、円滑な受診のため事業者が支払うことが望ましいとされています
- 就業時間内に受けさせるほうが実施率が上がる…休日や勤務後に自費で行かせる運用にすると未受診が増え、結果的に実施義務を果たせません。当社は勤務時間内に受診してもらう形にしています
結果の保存と報告
- 健康診断個人票を5年間保存…労働安全衛生規則により、結果を記録した個人票を5年間保存します。特殊健康診断は種類により保存期間が長いものがあります
- 常時50人以上の事業場は報告義務…定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署に提出します。50人未満の事業場は報告不要で、当社のような小規模事業場は保存のみです
- 結果は本人に通知する…事業者は遅滞なく結果を労働者に通知する義務があります。医師の意見を聴き、必要なら就業上の措置(労働時間の短縮、配置転換など)を検討します
- 結果は健康情報として厳重に扱う…健康診断の結果は要配慮個人情報です。閲覧できる範囲を限定し、人事評価に使わないという線引きが必要になります
- 従業員が受診を拒否したら…労働者にも受診義務があります(労安衛法66条5項)。ただし本人が指定した他の医師の診断結果を提出することは認められています。就業規則に受診義務を明記しておくと説明しやすくなります
3名の会社でも義務は同じです。人数が少ないほど「今年は忙しくて」で流れやすいので、当社は毎年同じ時期に予約を入れる運用にしています。50人未満なら報告書の提出は不要なので、実務としては予約と個人票の保管だけです。
よくある質問
Q健康診断を受けない従業員がいます。放置してよいですか
労働者にも受診義務があるため、会社として受診を求める必要があります。実施義務を果たしていない状態が続くと事業者側の違反になります。就業規則に受診義務を定め、他の医師の診断結果の提出でも可とすると解決しやすくなります。
Q費用を従業員負担にしている会社もあると聞きました
法律で事業者に実施義務がある以上、費用は事業者が負担すべきものと解されています。オプション検査(本人が追加で希望する項目)については自己負担にしている会社が多いです。
Q役員だけの会社でも健康診断は必要ですか
役員は労働者ではないため、労働安全衛生法上の実施義務はありません。ただし使用人兼務役員で労働者性がある場合は対象です。健康管理の観点で受けている会社は多くあります。
Qパートの健康診断はどこまでやればいいですか
期間の要件を満たし、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上なら義務です。2分の1以上4分の3未満は実施が望ましいとされる範囲で、義務ではありません。
まとめ
① 健康診断は労働安全衛生法66条の事業者の義務。実施しないと50万円以下の罰金。
② 雇入時+1年以内ごとに1回。深夜業があれば6か月以内ごとに1回。
③ 対象は「常時使用する労働者」=期間の要件+週の所定労働時間が正社員の4分の3以上。
④ 費用は事業者負担。一般健診の受診時間の賃金は労使協議だが、支払うことが望ましい。
⑤ 個人票は5年保存。報告書の提出義務は常時50人以上の事業場のみ。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。