法人の印鑑証明書。届出が任意になったのはオンライン申請だけです
法人の印鑑証明書は、法務局が「登記所に届け出た印鑑(会社実印)と同じものです」と証明する書類です。手数料は2025年4月1日改定後で書面請求500円、オンライン請求+郵送450円、オンライン請求+窓口交付420円。
「2021年から印鑑の届出は任意になった」という話が広まっていますが、正確にはオンラインで登記申請する場合に限って任意です。法務省は「登記の申請を書面で行う場合は、申請書に登記所に提出している印鑑を押印する必要があるため、従来どおり印鑑を提出していただく必要があります」と明記しています。実務では、印鑑証明書を求められる場面はまだ普通に残っています。
個人の印鑑証明書とは別物
最初につまずくのがここです。「印鑑証明書を持ってきて」と言われたとき、取りに行く先が2つあります。
| 項目 | 法人の印鑑証明書 | 個人の印鑑証明書 |
|---|---|---|
| 発行元 | 法務局(登記所) | 市区町村 |
| 証明する印鑑 | 登記所に届け出た会社実印 | 住民登録地で登録した実印 |
| 手数料(書面請求) | 500円 | 200〜450円程度(自治体により異なる) |
| 請求できる人 | 代表者本人か代理人(印鑑カードが必要) | 本人か代理人 |
| コンビニ交付 | なし | あり(マイナンバーカード対応の自治体) |
- 誰でも取れる証明書ではない…登記事項証明書は第三者でも取れますが、印鑑証明書は印鑑カードがないと取れません。会社の印鑑カードは代表者が管理しているものなので、取引先が勝手に取ることはできません
- 印鑑カードは無料で交付される…印鑑カード交付申請書を出せば発行され、手数料はかかりません。カード番号と代表者の生年月日で請求します
- 両方求められることがある…重要な契約では、会社の印鑑証明書と代表者個人の印鑑証明書を両方求められる場合があります。連帯保証を代表者個人が負う契約が典型です
手数料と取り方
| 取り方 | 手数料 | 受け取りまで |
|---|---|---|
| 書面請求(窓口) | 1件 500円 | その場(即日) |
| オンライン請求・送付 | 1件 450円 | 数日(郵送) |
| オンライン請求・窓口交付 | 1件 420円 | 翌営業日以降に最寄りの登記所で受取 |
- 印鑑カードを手元に用意する…オンライン請求でも印鑑カード番号が必要です。カードがなければ、まず印鑑カード交付申請書を法務局に出します(無料)
- 窓口なら請求書に押印して提出…印鑑証明書交付申請書にカード番号・商号・本店・代表者の氏名と生年月日を記入します。収入印紙で納付します
- オンラインは「登記ねっと かんたん証明書請求」から…平日8時30分〜21時が請求可能時間です。手数料は電子納付(インターネットバンキングまたはペイジー)で、収入印紙は不要です
- 急ぎなら窓口が確実…80円の差でオンラインが安いものの、窓口交付でも翌営業日以降になります。今日必要なら窓口請求500円が最短です
届出が任意になった条件
2021年(令和3年)2月15日に商業登記規則等が改正され、法務省は次の3点を案内しています。
- オンライン申請の場合には印鑑の提出が任意になった…設立登記をオンラインで行うなら、印鑑(会社実印)を届け出なくても登記できます
- 書面申請なら従来どおり必要…法務省の説明では「申請書に登記所に提出している印鑑を押印する必要があるため」。紙で申請する限り、印鑑の提出は避けられません
- 印鑑届書のオンライン提出もできるようになった…ただし「オンラインによる登記申請と同時に行う場合に限り」です
- 商業登記電子証明書という代替手段…印鑑の代わりに電子証明書で申請する形です。手数料は証明期間1か月500円から、12か月3,800円、24か月7,400円という体系です(2025年4月1日〜)
では印鑑を届け出ないという選択が現実的かというと、当社の実務感覚ではまだ早いと考えています。理由は届出をしない側の不便ではなく、相手方が印鑑証明書を求めてくることです。事務所の賃貸借、金融機関の口座開設と融資、不動産の売買、官公庁の入札。いずれも「会社実印+印鑑証明書」の運用が残っています。届出をしていなければ、その場で印鑑証明書は出せません。
提出を求める側は何を照合しているか
- 契約書の押印と証明書の印影が同じか…これが本題です。輪郭のかすれ程度なら問題になりませんが、明らかに別の印であれば押し直しになります
- 発行日が3か月以内か…登記事項証明書と同じく、法律上の期限はないものの3か月以内を求めるのが慣行です
- 代表者名が現在の代表者か…代表者が交代しているのに古い印鑑証明書を出すと止まります。役員変更登記が終わっていないケースもここで発覚します
- 角印ではなく実印が押されているか…請求書に使う角印(社印)は登記所に届け出るものではないので、印鑑証明書では証明できません。契約書には実印を押します
実印を押す場面は減っていく方向にあります。当社も電子契約に移した書類では印鑑証明書のやりとりが消えました。ただし相手方が紙を求める限り、実印と印鑑証明書は必要です。「自社の方針」ではなく「相手方の運用」で決まる領域だと考えたほうが実際に近いです。
よくある質問
Q印鑑証明書は何通取ればいいですか
提出先ごとに1通必要です。原本の提出を求められるのが通例で、コピーでは受け付けられません。融資と契約が同時期に走るなら、2〜3通まとめて取っておくと窓口へ行く回数が減ります。ただし発行後3か月という慣行があるので、取りすぎると無駄になります。
Q印鑑カードを紛失しました
印鑑カード廃止届書を出して、あらためて交付申請します。手数料はかかりません。カードがない間は印鑑証明書を請求できないので、契約の予定があるなら早めに手続きします。
Q会社実印はどんなサイズでも登記所に届け出できますか
辺の長さが1cmの正方形に収まるもの、および3cmの正方形に収まらないものは受け付けられません。一般に流通している18mm前後の丸印であれば問題ありません。ゴム印など変形しやすいものも不可です。
Q印鑑証明書と登記事項証明書は同時に取れますか
取れます。窓口でもオンラインでも同時に請求できます。手数料は別計算で、書面請求なら印鑑証明書500円+登記事項証明書600円です。
まとめ
① 法人の印鑑証明書は法務局で取る。市区町村で取る個人の印鑑証明書とは別物。
② 手数料は2025年4月1日改定で書面500円・オンライン送付450円・オンライン窓口交付420円。
③ 印鑑カードがないと請求できない。カード交付は無料。
④ 印鑑の届出が任意になったのはオンライン申請の場合だけ。書面申請なら従来どおり必要。
⑤ 相手方が実印と印鑑証明書を求める運用は残っているため、届け出ない選択は現実にはまだ早い。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。