棚卸資産の評価方法。届出をしないと最終仕入原価法です
期末に残った在庫をいくらで評価するかで、その期の利益が変わります。評価方法は原価法と低価法に大別され、原価法の中に個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法があります。
ここで重要なのが、届出をしなければ法定評価方法である最終仕入原価法が適用されるという点です。最終仕入原価法は「期末に最も近い時期に仕入れた単価で全部を評価する」方法で、計算は最も簡単ですが、仕入単価が変動する商品では実態とずれます。届出をしていない会社は、自動的にこの方法になっています。
評価方法の種類
| 方法 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 個別法 | 個々の取得価額で評価 | 不動産、宝石など個別性が高いもの |
| 先入先出法 | 先に仕入れたものから払い出したとみなす | 一般的な商品 |
| 総平均法 | 期首在庫と期中仕入の総額を総数量で割る | 仕入単価が安定 |
| 移動平均法 | 仕入のつど平均単価を計算 | 在庫管理システムがある場合 |
| 最終仕入原価法 | 期末に最も近い仕入単価で評価 | 法定評価方法(届出不要) |
| 売価還元法 | 売価から原価率で逆算 | 小売業で品目が多い場合 |
- 低価法は原価法との比較…原価法で計算した金額と期末時価を比べ、低い方で評価する方法です。評価損を計上できるため、値下がりしやすい商品を扱う場合に有利です
- 低価法も届出が必要…届出をしなければ原価法(最終仕入原価法)になります
- 最終仕入原価法の弱点…期末直前にたまたま高く仕入れると、在庫全体が高く評価されて利益が増えます。逆も同様です。単価が動く商材では実態を反映しません
- 事業の種類ごとに選べる…複数の事業を行っている場合、事業の種類ごと、棚卸資産の区分ごとに異なる評価方法を選択できます
届出の期限
- 設立の場合…設立第1期の確定申告書の提出期限までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出します
- 新たに事業を開始した場合…その事業を開始した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までです
- 提出しなければ最終仕入原価法…法定評価方法が自動的に適用されます。選択しないという判断も1つの選択です
- 個人事業は3月15日まで…事業開始の年の翌年3月15日までに届け出ます
変更する場合
- 変更しようとする事業年度開始の日の前日までに申請…「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を提出します。期が始まってからでは変更できません
- 承認が必要…届出ではなく申請です。税務署長の承認を受けて初めて変更できます
- 相当期間(おおむね3年)は変更できない…現在の方法を採用してから相当期間が経過していない場合、変更が認められないことがあります
- 利益調整目的は認められない…変更する合理的な理由が必要です。在庫管理システムを導入した、事業内容が変わったといった事情を示します
実地棚卸の実務
- 期末に実際に数える…帳簿上の在庫と実際の在庫は必ずずれます。実地棚卸をしていない在庫金額は、税務調査で最初に疑われます
- 棚卸表を作って保存する…品名、数量、単価、金額を記録し、実施日と担当者名を残します。決算書類の一部として保存します
- 預け在庫・預り在庫を確認する…外注先に預けている材料、委託販売の在庫も自社の棚卸資産です。手元にないものを忘れやすいので、取引先への確認が必要です
- 未着品と積送品…期末時点で仕入れたが到着していないもの(未着品)、出荷したが検収されていないもの(積送品)の扱いを決めておきます
- 評価損は原則として認められない…物価変動や過剰生産による値下がりだけでは評価損を計上できません。災害による著しい損傷、著しい陳腐化など、法人税法施行令に定める事実が必要です
当社は不動産の仲介・管理業で在庫を持たないため棚卸の実務は限定的ですが、販売用不動産を持つ会社では個別法が使われます。在庫を持つ業態では、評価方法の届出をしているかどうかを一度確認する価値があります。届出がなければ最終仕入原価法で計算されているはずで、それが実態に合っているかは別の問題です。
よくある質問
Q届出をしていない場合はどの方法になりますか
最終仕入原価法(原価法)です。法定評価方法として自動的に適用されます。期末に最も近い時期の仕入単価で在庫全体を評価する方法です。
Q評価方法はいつでも変更できますか
できません。変更しようとする事業年度開始の日の前日までに変更承認申請書を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。現在の方法を採用してから相当期間(おおむね3年)が経過していないと認められないことがあります。
Q在庫が値下がりしたら評価損を計上できますか
物価変動や過剰生産による値下がりだけでは認められません。災害による著しい損傷、著しい陳腐化など、法令に定める事実が必要です。低価法を選択していれば時価との比較で低い方を採用できます。
Q外注先に預けている材料も棚卸資産ですか
自社の棚卸資産です。手元になくても所有権があれば計上します。実地棚卸の際に取引先へ残高を確認する必要があります。
まとめ
① 評価方法は原価法(6種類)と低価法。届出をしなければ最終仕入原価法が適用される。
② 設立時は第1期の確定申告書の提出期限までに届出書を提出。
③ 変更は事業年度開始の日の前日までに申請し、承認が必要。おおむね3年は変更できない。
④ 実地棚卸と棚卸表が必須。預け在庫・未着品・積送品を忘れない。
⑤ 評価損は物価変動だけでは認められない。法令に定める事実が必要。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。