貸借対照表の見方。左右が一致する理由と、最初に見る3つの数字
貸借対照表(B/S)は、ある時点で会社が何を持ち(資産)、どこから調達したか(負債と純資産)を示す表です。左側の資産合計と、右側の負債+純資産の合計は必ず一致します。調達した資金がそのまま何かの形に変わっているだけだからです。
金融機関や取引先が見るのは3つ。①自己資本比率(純資産÷総資産)=返済不要の資金の割合。②流動比率(流動資産÷流動負債)=短期の支払能力。③実質的な純資産=回収できない資産を除いても純資産が残るか。この3つを押さえれば、自社の決算書がどう見られているかが分かります。
3つの区分
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 1年以内に現金化される資産 | 現金預金、売掛金、棚卸資産 |
| 固定資産 | 1年を超えて保有する資産 | 建物、車両、敷金、ソフトウェア |
| 流動負債 | 1年以内に支払う負債 | 買掛金、未払金、短期借入金 |
| 固定負債 | 1年を超えて支払う負債 | 長期借入金、退職給付引当金 |
| 純資産 | 返済不要の自己資金 | 資本金、資本剰余金、利益剰余金 |
- 1年基準(ワン・イヤー・ルール)…決算日の翌日から1年以内に現金化・支払期限が到来するかで流動と固定を分けます
- 長期借入金の1年内返済分は流動負債…「1年内返済予定の長期借入金」として流動負債に振り替えます。この処理を忘れると流動比率が実態より良く見えます
- 利益剰余金が過去の蓄積…毎期の利益が積み上がったものです。ここがマイナスなら累積赤字があることを示します
- 純資産がマイナスなら債務超過…資産をすべて売っても負債を返せない状態です。融資が受けられなくなる大きな分岐点です
見られている3つの数字
- 自己資本比率=純資産÷総資産…返済不要の資金がどれだけあるかを示します。中小企業では30%以上あれば良好とされることが多い指標です。10%を下回ると財務基盤が弱いと見られます
- 流動比率=流動資産÷流動負債…1年以内に入る現金で、1年以内に払う分をまかなえるかです。100%を下回ると短期の支払能力に懸念があり、120%以上が一つの目安とされます
- 当座比率…流動資産から棚卸資産を除いた当座資産で見る、より厳しい指標です。在庫が多い会社では流動比率と大きく差が出ます
- 債務超過かどうか…純資産がマイナスなら債務超過です。融資審査では最も重視される項目の一つで、解消の見通しを説明する必要があります
- 借入金月商倍率…借入金が月商の何か月分かを見ます。3〜6か月分が一つの目安とされ、これを大きく超えると過剰債務と判断されやすくなります
実質評価という考え方
- 金融機関は決算書を修正して見る…帳簿上の数字をそのまま信用するのではなく、回収できない資産を除外して実質的な純資産を計算します
- 役員貸付金は資産から除かれやすい…回収可能性が低いと判断されれば、資産から控除されます。これだけで債務超過と判定されることがあります
- 不良在庫・長期滞留の売掛金…動いていない在庫、回収できていない売掛金は減額評価されます
- 仮払金・立替金…内容が不明瞭なものは資産価値なしとみなされることがあります
- 逆に含み益は加算されることもある…帳簿価額より時価が高い不動産があれば、実質的な純資産に加算して評価されることがあります
- だから科目の中身が重要…「その他」「仮払金」といった説明できない資産を残さないことが、実質評価を守ることにつながります
改善のためにできること
- 役員貸付金を解消する…返済、役員報酬からの天引き、退職金との相殺など。最も評価に効く改善です
- 不良資産を整理する…回収不能な売掛金は貸倒処理し、動かない在庫は評価損または廃棄処理します。一時的に利益は減りますが実態に近づきます
- 利益を出して内部留保を厚くする…最も本質的な改善です。利益剰余金が積み上がれば自己資本比率が上がります
- 短期借入を長期に借り換える…流動負債が固定負債に移り、流動比率が改善します。金融機関との交渉事項です
- 決算書は年に一度しか作らないが、見られるのは1年間…決算日の数字が1年間その会社の評価になります。決算日に向けた整理には意味があります
- 粉飾は絶対にしない…在庫の水増し、架空売上は、発覚すれば取引停止と一括返済請求に直結します
- 勘定科目内訳明細書も見られている…売掛金や借入金の相手先、役員貸付金の内容が記載されています。貸借対照表とセットで確認されます
- 当社の視点…小さな会社では、社長個人と会社の資金の区別が曖昧になりがちです。公私を分けることが、そのまま決算書の評価を守ることになります
貸借対照表は損益計算書に比べて注目されにくいですが、融資審査では損益より重視されます。1年の利益は変動しますが、貸借対照表は過去の積み重ねだからです。役員貸付金をなくし、説明できない資産を残さない。この2点だけでも実質評価は大きく変わります。
よくある質問
Q貸借対照表の左右が一致するのはなぜですか
調達した資金(負債と純資産)が、そのまま何らかの資産の形になっているためです。資産=負債+純資産という関係が常に成り立ちます。
Q自己資本比率はどのくらいあればよいですか
中小企業では30%以上あれば良好とされることが多く、10%を下回ると財務基盤が弱いと見られます。業種によって水準は異なります。
Q役員貸付金があると何が問題ですか
金融機関は回収可能性が低いと判断して資産から除外することがあり、実質的な純資産が減ります。これだけで債務超過と判定される場合もあります。
Q債務超過とは何ですか
純資産がマイナスの状態で、資産をすべて売却しても負債を返済できないことを意味します。融資審査で最も重視される項目の一つです。
まとめ
① 貸借対照表は資産=負債+純資産。左右は必ず一致する。
② 見られるのは①自己資本比率 ②流動比率 ③実質的な純資産。
③ 金融機関は役員貸付金・不良在庫・仮払金を資産から除いて実質評価する。
④ 1年内返済予定の長期借入金は流動負債に振り替える。忘れると流動比率が実態より良く見える。
⑤ 改善の要は役員貸付金の解消と説明できない資産を残さないこと。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。