決算公告。官報なら年81,765円、自社サイトなら0円です
決算公告は、規模を問わずすべての株式会社に義務があります(会社法440条1項)。怠れば100万円以下の過料(同976条2号)。それでも実際に出している会社が少ないのは、官報に載せると中小企業でも1回81,765円(税込)かかるからです。
ただし逃げ道は法律の中にあります。会社法440条3項は、貸借対照表を電磁的方法で5年間継続して公衆の縦覧に供する措置をとれば、官報・日刊新聞紙での公告は不要と定めています。つまり自社サイトに載せれば0円。しかも法務省は、定款の公告方法が官報のままでも決算公告だけをホームページに掲載できると案内しています。定款変更も要りません。
何をいつまでに公告するのか
- 時期は「定時株主総会の終結後遅滞なく」…決算月から2か月後に総会を開く会社なら、その直後です。期限が日付で決まっていないぶん、忘れると気づく機会がありません
- 内容は貸借対照表…大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)は損益計算書も必要です。中小企業は貸借対照表だけで足ります
- 官報・日刊新聞紙なら「要旨」でよい…会社法440条2項です。ただしこの簡略化は官報と新聞に限られ、自社サイトに載せる場合は要旨ではなく貸借対照表そのものが必要になります
- 有価証券報告書を出している会社は不要…440条4項の適用除外です。上場企業が官報で決算公告をしていないのはこの規定によります
官報の実額(2025年4月改定)
官報の掲載料は枠単位です。決算公告に必要な枠数は、貸借対照表の行数で決まります。
| 枠数 | 行数・サイズ | 料金(税込) | 決算公告での目安 |
|---|---|---|---|
| 1枠 | 20字×9行(2.9cm×6.1cm) | 40,882円 | 決算公告には足りないことが多い |
| 2枠 | 20字×19行(5.8cm×6.1cm) | 81,765円 | 資本金5億円未満・負債200億円未満で株式譲渡制限あり=中小企業の大半 |
| 3枠 | 20字×29行(8.7cm×6.1cm) | 122,647円 | 譲渡制限のない会社 |
| 4枠 | — | 163,530円 | 大会社(資本金5億円以上・負債200億円以上) |
2025年4月1日に料金が改定されています。それ以前の金額が書かれた解説が残っているので、見積もりは官報販売所の現行料金表で確認してください。なお官報掲載は申込から掲載まで日数がかかるため、総会直後に動く必要があります。
毎年8万円強。これが従業員数人の会社にとって「義務だがやらない」の実質的な理由です。10年続ければ80万円で、そのために増える売上はゼロです。
0円で済ませる方法と、その要件
会社法440条3項は、次の措置をとれば1項・2項(官報・新聞での公告)を適用しないと定めています。
- 貸借対照表の内容である情報を、電磁的方法で公衆の縦覧に供する…実務上は自社ウェブサイトに掲載することです。PDFでもHTMLでも構いません
- 定時株主総会の終結後遅滞なく載せる…官報と同じタイミングの要件です
- 総会終結の日後5年を経過する日まで継続して置く…ここが最大の注意点で、1年で消してはいけません。5期分が同時に並ぶ状態になります
- 要旨ではなく貸借対照表そのものを載せる…要旨で足りるのは官報・日刊新聞紙の場合だけです
- 定款変更は不要…法務省は「会社等の公告方法を官報又は日刊新聞紙による方法としている場合であっても、決算公告のみをインターネット上のホームページに掲載することが可能」と案内しています。公告方法を「電子公告」に変更する登記も要りません
- URLを登記する必要もない…定款の公告方法を電子公告にする場合はURLの登記が必要ですが、440条3項の措置はそれとは別の制度です
- 置き場所はサイト内のどこでもよい…ただし不特定多数が閲覧できる状態が要件なので、会員ページの中やパスワード付きは不可です。フッターから辿れる「決算公告」ページを作るのが素直です
- サイトを閉じたら義務が復活する…5年の途中でサイトを畳めば縦覧の状態が途切れます。ドメインを維持できるかは、この方式を選ぶ前提条件です
出していないとどうなるか
- 過料は100万円以下(会社法976条2号)…対象は会社ではなく取締役などの個人です。ただし決算公告の不備を理由に過料が科された例は、実務ではほとんど聞きません
- 実際の不利益は与信の場面で出る…金融機関や大手取引先が会社を調べるとき、決算公告があれば貸借対照表が確認できます。無いこと自体が減点になるわけではありませんが、「出している会社」との差は残ります
- 官報に出す会社は年1万件前後…株式会社の数(約250万社)と比べれば、実施率は1%に届きません。つまり出していないほうが多数派です。だからこそ0円の方法が現実的な落とし所になります
- やるなら5年続けられる形で始める…途中でやめると要件を満たさなくなります。「今年から自社サイトで」と決めたら、決算のチェックリストに掲載作業を入れておくのが確実です
当サイトを運営している当社も、事業年度ごとの決算作業のなかで公告の扱いを整理しました。数万円の話ではありますが、毎年出ていく固定費を1つ減らせるかどうかという意味では、知っているかどうかがそのまま差になります。
よくある質問
Q自社サイトに載せる場合、要旨ではだめですか
だめです。要旨で足りるのは官報または日刊新聞紙に載せる場合(会社法440条2項)で、電磁的方法による措置では貸借対照表の内容そのものを掲載する必要があります。
Q5年間の途中でサイトをリニューアルしてURLが変わったら
掲載が継続していれば問題ありません。ただし旧URLで404になったまま気づかない状態は、縦覧に供している状態とは言えません。リニューアル時のチェック項目に入れておくのが安全です。
Q合同会社にも決算公告の義務はありますか
ありません。会社法440条は株式会社を対象にした規定で、合同会社には決算公告の義務がありません。設立費用の差とあわせて、合同会社を選ぶ理由の1つになります。
Q官報に載せる場合、申込から掲載まで何日かかりますか
官報販売所への申込から掲載まで日数を要します。原稿の内容確認もあるため、定時株主総会の日程が決まった時点で相談するのが実務的です。掲載日は空き状況にも左右されます。
まとめ
① 決算公告は全ての株式会社の義務(会社法440条1項)。罰則は100万円以下の過料(976条2号)で、対象は取締役個人。
② 官報の実額は中小企業でも2枠81,765円(税込・2025年4月1日改定)。大会社は4枠163,530円。
③ 会社法440条3項=自社サイトに貸借対照表を5年間継続掲載すれば官報は不要で0円。定款変更もURLの登記も要らない。
④ ただし自社サイトの場合は要旨ではなく貸借対照表そのもの。5年間続けられる前提で始める。
⑤ 合同会社には決算公告の義務がない。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。