創立費と開業費。任意償却なので、黒字になった年に落とせます
会社を作るときにかかった費用は、支出した期に全額を費用にする以外の道があります。創立費(設立登記までにかかった費用)と開業費(設立後から営業を開始するまでの費用)は繰延資産として資産に計上でき、税務上は任意償却が認められています。
任意償却とは、いつ・いくら償却するかを会社が自由に決められるということです。設立初年度が赤字なら償却せずに繰り越し、黒字化した年にまとめて損金にできます。創業期の会社にとって、数少ない自由度の高い制度です。
創立費と開業費の範囲
| 区分 | 期間 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 創立費 | 設立登記まで | 定款認証手数料、登録免許税、発起人報酬、設立事務所の賃借料、創立総会の費用 |
| 開業費 | 設立後〜営業開始まで | 広告宣伝費、市場調査費、接待交際費、開業準備の給料、名刺・印章の作成費 |
- 境目は設立登記の日…登記の日より前が創立費、後が開業費です。領収書の日付で区分します
- 開業費は「開業準備のために特別に支出した費用」…営業開始後の経常的な費用は含まれません。開業までの家賃や水道光熱費は、経常的な費用として開業費に含めないという考え方が一般的です
- 設立前の支出も会社の費用にできる…発起人が立て替えた費用は、設立後に会社が精算すれば創立費になります。領収書の宛名が個人でも、設立準備のためのものであれば計上できます
- 金額の上限はない…繰延資産として計上できる金額に制限はありません
任意償却の使い方
- 繰延資産として資産計上する…支出した期に「創立費」「開業費」として貸借対照表に計上します
- 償却する年と金額を決める…任意償却なので、その期にいくら償却してもよい(ゼロでも全額でも可)です
- 赤字の期は償却しない…償却しなければ資産として残り、翌期以降に繰り越せます
- 黒字化した年に償却する…利益が出た年にまとめて損金にできます。繰越欠損金と組み合わせて使うと効果的です
- 繰越欠損金より柔軟…青色欠損金の繰越は10年という期限がありますが、創立費・開業費の任意償却には期限がありません。何年でも繰り越せます
- 均等償却も選べる…5年間で均等に償却する方法も認められています。任意償却か均等償却かは会社の選択です
- 一部だけ償却してもよい…100万円のうち30万円だけ償却するといった処理も可能です
- 税務調査で問題になりにくい…制度として認められた処理なので、根拠書類(領収書と区分の記録)があれば説明が容易です
対象にならない費用
- 資産の取得費用は含めない…パソコン、車両、内装工事などは固定資産として計上し、減価償却します。創立費・開業費にはできません
- 10万円未満の備品は消耗品費…資産計上の要否は通常の判定に従います
- 敷金・保証金は資産…返還される部分は差入保証金として計上します。返還されない部分(礼金など)は繰延資産または長期前払費用です
- 商品の仕入代金は棚卸資産…開業準備で仕入れた商品は在庫です
- 営業開始後の費用は通常の経費…開業日を明確にしておかないと、どこまでが開業費か曖昧になります。開業日を議事録や事業計画で記録しておきます
会計と税務の違い
- 会計上は原則として支出時に費用…企業会計では、創立費・開業費は支出時に費用処理することが原則で、繰延資産に計上することが「できる」という位置づけです
- 繰延資産にした場合は5年以内の均等償却…会計上のルールでは、創立費は会社成立後5年以内、開業費は開業後5年以内に定額法で償却します
- 税務上は任意償却…法人税法では償却限度額が「その繰延資産の額」とされているため、いくら償却してもよいという扱いです
- 中小企業は税務基準で処理することが多い…会計監査を受けない会社では、税務上の任意償却に合わせた処理が実務的です
- 個人事業でも同じ制度がある…個人の場合は開業費のみ(創立費はない)で、こちらも任意償却が認められています
創業期は赤字になることが多く、その年に費用を計上しても税負担は減りません。任意償却を使えば、黒字化した年まで温存できます。設立費用が数十万円でも、黒字化した年に落とせば実質的な効果が出ます。設立時の領収書を「創立費」「開業費」に区分して保管しておくことが、この制度を使う前提になります。
よくある質問
Q創立費と開業費の境目はいつですか
設立登記の日です。登記前にかかった費用が創立費、登記後から営業開始までが開業費です。領収書の日付で区分します。
Q任意償却はいつまで繰り越せますか
期限はありません。青色欠損金の繰越(10年)と違い、何年でも繰り越して黒字化した年に償却できます。
Q開業前に買ったパソコンは開業費になりますか
なりません。資産の取得費用は固定資産として計上し、減価償却します。10万円未満であれば消耗品費として処理します。
Q発起人が立て替えた費用も計上できますか
できます。設立準備のために支出した費用であれば、設立後に会社が精算して創立費に計上できます。領収書の宛名が個人でも問題ありません。
まとめ
① 創立費=設立登記まで、開業費=設立後から営業開始まで。境目は登記の日。
② 税務上は任意償却で、いつ・いくら償却するかを会社が決められる。
③ 繰越の期限がないため、赤字の期は償却せず黒字化した年に落とせる。
④ 資産の取得費用(パソコン・内装・敷金)は対象外。
⑤ 会計上は5年以内の均等償却だが、中小企業は税務基準の任意償却で処理することが多い。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。