法人設立届出書。期限は2か月ではなく「15日」から始まります
法人設立届出書の期限は「設立から2か月以内」と説明されることが多いですが、それは税務署の期限です。都道府県と市区町村にも同じ届出が必要で、東京都の都税事務所は15日以内。つまり登記が完了したあと、実際に最初に来る期限は2か月ではなく15日です。
添付書類は定款の写しだけで足ります。2017年4月から登記事項証明書の添付は不要になり、その後さらに省略の運用が広がりました。設立直後は書類を集めたくなりますが、集めるべきものはほとんどありません。この記事では3つの提出先の期限と、同じ時期に出す他の届出をまとめて時系列に並べます。
3つの提出先、3つの期限
会社を設立すると、法人税(国)・法人事業税と法人都民税(都道府県)・法人住民税(市区町村)の3系統に届出が必要です。書式の名前も期限も、系統ごとに違います。
| 提出先 | 書類名 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 都道府県(東京都は都税事務所) | 法人設立・設置届出書 | 設立から15日以内 | 地方税法・各都道府県の条例 |
| 税務署 | 法人設立届出書 | 設立から2か月以内 | 法人税法148条 |
| 市区町村 | 法人設立・設置届出書 | 条例により異なる(1〜2か月が多い) | 各市区町村の条例 |
東京23区内に本店を置く会社は、法人住民税の市町村分も都が課税するため、区役所への届出は不要で都税事務所への1本にまとまります。23区外や他県では市区町村にも別途提出が必要です。
「2か月以内」だけを覚えていると、都道府県の15日を確実に飛ばします。私たちは東京都内の法人ですが、都税事務所の15日という期限は、税理士から言われるまで意識していませんでした。登記完了の連絡が来た日から2週間と覚えておくのが実務的です。
添付書類は定款の写しだけ
設立届に添える書類は、驚くほど少なくなっています。
- 税務署は定款の写しのみ…かつては登記事項証明書(履歴事項全部証明書)と株主名簿の添付が求められていましたが、2017年4月1日以後は登記事項証明書の添付が不要になりました。国税庁は「法人設立届出書等について、手続が簡素化されました」として公表しています
- 都税事務所も定款等の写し…東京都主税局が案内している添付書類は「定款・寄附行為・規約等の写し」です。登記事項証明書は求められません
- 設立登記の完了を待つ必要はある…届出書には会社法人等番号や設立年月日を書くため、登記が完了してからでないと書けません。登記完了までは通常1週間前後かかるので、15日の期限は実質「登記完了後1週間」という感覚になります
- e-Taxで出せる…法人設立届出書はe-Taxソフト(WEB版)で作成・送信できます。都税事務所側はeLTAXです。紙で出しても構いませんが、控えに受付印をもらう手間を考えると電子のほうが早いです
設立届と定款の写しは、設立登記の書類を作った流れでそのまま作れます。マネーフォワード クラウド会社設立は登記書類の作成が無料で、設立届・青色申告の承認申請書といった税務署向けの書類までまとめて出力できます。期限が3系統に分かれる時期に、書類を1か所で揃えたい場合の選択肢です。
同時期に出す届出のカレンダー
設立届だけを出して安心してしまうのが一番危ない場面です。期限の性質が違う書類が同時に走ります。
| 書類 | 期限 | 出し忘れの影響 |
|---|---|---|
| 青色申告の承認申請書 | 設立から3か月を経過した日か、最初の事業年度終了日のいずれか早い日の前日まで | 1期目が白色申告になる。欠損金の繰越控除が使えない |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設から1か月以内 | 源泉徴収の納付書が届かない |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 期限なし(提出翌月分から適用) | 毎月納付のままになる(給与の支払対象者が常時10人未満なら年2回にできる) |
| 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 速やかに | 資本金1,000万円以上の場合に必要。設立届で記載済みなら省略可 |
この中で唯一「取り返しがつかない」のが青色申告の承認申請書です。期限の書き方が独特で、3か月と事業年度末の早いほうが基準になります。たとえば4月1日設立で3月31日決算なら3か月後の7月1日の前日(6月30日)まで。ところが12月1日設立で3月31日決算なら、3か月後(3月1日)より事業年度末(3月31日)が後なので3か月基準が生き、2月28日が期限です。設立月と決算月の組み合わせで期限が変わるので、設立届と同時に出してしまうのが安全です。
出し忘れると何が起きるか
- 設立届そのものに罰則はない…法人設立届出書を遅れて出しても、過料や加算税の規定はありません。ただし届出がないと申告書の用紙や納付書が送られてこないため、結果的に申告期限に間に合わなくなるという形で跳ね返ります
- 実害が出るのは青色申告…1期目が白色になると、赤字の繰越控除(欠損金の10年繰越)も、30万円未満の少額減価償却資産の特例も使えません。創業期は赤字になりやすいので、繰越控除を失う影響が大きい
- 均等割は届出と無関係にかかる…法人住民税の均等割は所得がゼロでも課税されます。届出をしていなくても納税義務は発生しているので、「届けていないから課税されていない」わけではありません
- 気づいた時点で出せば受け付けてもらえる…期限後でも届出は受理されます。青色申告だけは期限が絶対なので、遅れた場合は翌期からの適用を申請します
設立時に決める項目のうち、あとから変えるのに手間がかかるのは決算月と資本金です。決算月は定款変更と異動届で変えられますが、資本金は増資・減資の登記が必要になります。法人住民税の均等割や消費税の免税判定にも効くので、設立前に決めておく価値があります。
よくある質問
Q法人設立届出書はいつから出せますか
設立登記が完了してからです。届出書には会社法人等番号と設立年月日を記載するため、登記完了前には作成できません。登記完了の連絡が来たらすぐ着手するのが、都道府県の15日という期限に間に合わせるコツです。
Q登記事項証明書の添付は本当に不要ですか
税務署への法人設立届出書については、2017年4月1日以後は不要です。国税庁が手続簡素化として公表しています。ただし金融機関の口座開設や許認可の申請では引き続き必要なので、設立時に1通は取っておくと無駄になりません。
Q設立届を税理士に頼むといくらかかりますか
設立届出一式の代行は、顧問契約に含めている事務所と、2〜5万円程度で単発対応する事務所があります。届出自体は定型なので、費用をかけるかどうかは青色申告の期限管理を任せたいかどうかで判断すると納得しやすいです。
Q設立日は自由に決められますか
登記申請書を法務局に提出した日が設立日になります。土日祝は法務局が閉まっているため設立日にできません。1日設立にしたい場合は、その日が営業日かどうかを先に確認します。
まとめ
① 期限は3系統。都道府県は15日以内、税務署は2か月以内、市区町村は条例による。
② 添付書類は定款の写しだけ。2017年4月から登記事項証明書の添付は不要。
③ 同時に出すべきは青色申告の承認申請書。3か月と事業年度末の早いほうが期限で、遅れると1期目が白色になる。
④ 設立届自体に罰則はないが、申告書類が届かないという形で実害になる。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。