企業主導型保育事業。自社で作らなくても、共同利用で枠を確保できます
企業主導型保育事業は、子ども・子育て拠出金を負担している企業が従業員のための保育施設を設置する場合に、整備費と運営費の助成を受けられる制度です。認可外保育施設でありながら認可施設並みの助成があり、保育料も認可保育所並みに設定できます。
従業員10人の会社が自前で保育所を作るのは現実的ではありません。しかしこの制度には複数企業による共同設置・共同利用という仕組みがあります。他社が設置した施設に「共同利用企業」として参加すれば、従業員枠を確保できます。小さな会社にとっての入口はここです。
制度の仕組み
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | こども家庭庁(実施機関は児童育成協会) |
| 対象事業主 | 子ども・子育て拠出金を負担している事業主 |
| 施設の位置づけ | 認可外保育施設(届出が必要) |
| 地域枠 | 利用定員の50%以内で設定できる |
| 共同利用 | 複数企業による共同設置・共同利用が可能 |
| 助成 | 整備費・運営費について認可施設並み |
- 拠出金を負担していれば対象…厚生年金保険の適用事業所であれば、子ども・子育て拠出金を負担しています。従業員数の要件はありません
- 認可を受ける必要がない…市区町村の認可を経ずに設置できるため、自治体の計画に左右されません。設置までの期間が短いのが特徴です
- 従業員枠と地域枠…従業員の子どもが従業員枠、それ以外の地域の子どもが地域枠です。地域枠は定員の50%以内に制限されています
- 認可外保育施設としての基準を満たす必要がある…職員配置、面積、設備の基準があります。届出も必要です
- 待機児童対策として始まった制度…自治体の認可保育所を待つのではなく、企業が保育の受け皿を作るという発想です
共同利用という選択肢
- 設置企業を探す…近隣に企業主導型保育施設があるかを確認します。児童育成協会のポータルサイトで助成決定一覧が公開されています
- 共同利用契約を結ぶ…設置企業と共同利用に関する契約を締結します。利用できる枠数、保育料の負担、期間などを取り決めます
- 従業員に周知する…利用できる制度として社内に案内します
- 従業員が直接申し込む…自治体を通さず、施設と利用者が直接契約する形です
- 自社で設置しなくても従業員枠を使える…これが小規模事業者にとっての現実的な使い方です。設置・運営の負担を負わずに福利厚生として提供できます
- 設置企業側にもメリットがある…定員の充足は運営費の助成額に影響します。共同利用企業を増やすことで安定した稼働率を確保できるため、受け入れる側の動機もあります
- 契約内容は施設ごとに異なる…枠の確保料が必要な場合と不要な場合があります。年間の負担額を確認してから判断します
- 認可保育所との併願も可能…認可保育所の選考結果を待ちながら、企業主導型を確保しておくという使い方があります
- 入所は施設との直接契約…自治体の利用調整(点数)を経ないため、両親ともフルタイムでなくても入れることがあります
助成の内容
- 運営費と整備費の2本立て…施設を設置する企業に対して、整備費(建設・改修)と運営費(人件費等)の助成があります
- 整備費は工事費用の4分の3が上限…人口密度区分と定員区分による基準額から基本単価を算出し、実際にかかった対象工事費用に4分の3を乗じた額と比較して低いほうの額が助成されます
- 運営費は認可施設並み…定員、児童の年齢、開所時間などに応じて算定されます。保育料を認可保育所並みに設定できるのはこの助成があるためです
- 共同利用企業には助成が出ない…助成を受けるのは設置企業です。共同利用する側は、契約に基づく負担をします
- 助成には審査がある…申請すれば必ず受けられるわけではなく、児童育成協会による審査があります
検討するときの論点
- 自社設置は10人規模では現実的でない…職員配置基準を満たす保育士の確保、物件、設備投資が必要です。共同利用から検討するのが順序です
- 撤退した施設もある…制度開始後、運営が続かず閉鎖した施設が一定数あります。共同利用する場合も施設の継続性を確認します
- 助成の返還リスク…設置企業側の話ですが、要件を満たさなくなった場合に助成金の返還を求められることがあります
- 両立支援等助成金とは別制度…企業主導型保育は施設への助成、両立支援等助成金は育休取得等への助成です。目的も窓口も異なります
- 当社の視点…3名の会社で自社設置は不可能ですが、共同利用なら検討の余地があります。従業員が保育所に入れずに復職できないという事態は、小さな会社ほど影響が大きいためです。近隣の施設に空き枠があるかを調べることから始まります
この制度は「企業が保育所を作る制度」として紹介されることが多く、小規模事業者には縁がないと思われがちです。しかし共同利用という仕組みがあるため、設置せずに枠だけ確保する道があります。近隣に施設があるかどうかで実現可能性が決まるので、まずポータルサイトで所在地を確認するのが現実的な第一歩です。
よくある質問
Q従業員が少ない会社でも使えますか
使えます。子ども・子育て拠出金を負担していれば従業員数の要件はなく、複数企業による共同利用という仕組みもあるため、自社で設置しなくても従業員枠を確保できます。
Q地域枠はどのくらい設定できますか
利用定員の50%以内です。従業員の子ども以外を受け入れる枠として設定します。
Q助成はいくら出ますか
整備費は人口密度区分と定員区分による基準額から算出した基本単価と、対象工事費用の4分の3を比較して低いほうの額です。運営費は定員や年齢、開所時間に応じて認可施設並みに算定されます。
Q認可保育所と両方申し込めますか
できます。企業主導型は施設との直接契約で自治体の利用調整を経ないため、認可保育所の選考結果を待ちながら確保しておく使い方があります。
まとめ
① 対象は子ども・子育て拠出金を負担している事業主。従業員数の要件はない。
② 複数企業による共同設置・共同利用が可能。小さな会社は共同利用から検討する。
③ 地域枠は利用定員の50%以内。それ以外が従業員枠。
④ 助成は整備費(工事費の4分の3が上限)と運営費(認可施設並み)。共同利用企業には出ない。
⑤ 自治体の利用調整を経ない直接契約。認可保育所との併願ができる。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。