人材開発支援助成金。研修費の45〜75%が戻るが、計画届は訓練開始の1か月前が締切
人材開発支援助成金は、雇用する労働者に職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部が助成される制度です。中小企業の経費助成率は人材育成訓練で45%(非正規雇用労働者は70%)、事業展開等リスキリング支援コースなら75%。賃金助成は1人1時間800円です。
ただし、この助成金でいちばん多い取り逃がしは金額の話ではありません。職業訓練実施計画届を、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に出すという一点です。研修に申し込んでから調べ始めた時点で、ほぼ間に合いません。
小さい会社が使えるのはどのコースか
この助成金には4つのコース(ほかに建設労働者向けが2つ)があります。全部を検討する必要はありません。自社の研修がどれに当たるかを先に決めてください。
| コース | こういう研修 | 対象労働者 |
|---|---|---|
| ① 人材育成支援コース | 10時間以上のOFF-JT(職務に関連する座学・実技)。外部セミナー、eラーニング、通信制も対象 | 雇用保険被保険者 |
| ② 教育訓練休暇等付与コース | 有給教育訓練休暇制度(3年間で5日以上)を就業規則に入れ、実際に取得させた場合 | 雇用保険被保険者 |
| ③ 人への投資促進コース | サブスク型の研修サービス(定額制訓練)、従業員が自発的に受けた訓練の費用負担、高度デジタル人材の育成、長期教育訓練休暇制度など | 雇用保険被保険者 |
| ④ 事業展開等リスキリング支援コース | 事業展開・DX・GX、または企業内の人事・人材育成に関する計画に基づき今後従事する予定の職務についてのOFF-JT | 雇用保険被保険者 |
- 従業員1〜10人の会社なら、まず①か④…①は「今の仕事のスキルを上げる研修」、④は「これから新しくやることのための研修」です。経費助成率は①が45%、④が75%と差が大きいので、④に当てはめられるなら④です
- ③の定額制訓練も現実的…月額制のオンライン研修サービスを契約している会社は多く、これが経費助成60%の対象になります
- ③④は令和8年度末までの時限措置…人への投資促進コースと事業展開等リスキリング支援コースは、期限が区切られた措置です
- 対象になるのは雇用保険被保険者…役員や、雇用保険に入っていない人の研修は対象外です
- ①には10時間の壁がある…人材育成訓練は10時間以上のOFF-JTが要件です。半日のセミナー1本では届きません
助成額・助成率の早見表
厚生労働省のパンフレット(PL080408開企01)の数値です。カッコ内は中小企業以外の額・率。令和8年4月8日以降に提出された職業訓練実施計画届に基づく訓練が対象です。
| 訓練 | 賃金助成(1人1時間) | 経費助成率 | 賃金要件等を満たす場合 |
|---|---|---|---|
| 人材育成訓練(正規雇用) | 800円(400円) | 45%(30%) | 1,000円/60%(45%) |
| 人材育成訓練(非正規雇用) | 800円(400円) | 70% | 1,000円/85% |
| 事業展開等リスキリング支援 | 1,000円(500円) | 75%(60%) | ―(元から上限) |
| 定額制訓練(サブスク型) | ― | 60%(45%) | 75%(60%) |
| 自発的職業能力開発訓練 | ― | 45% | 60% |
| 有期実習型訓練(正社員化した場合) | 800円(400円) | 75% | 1,000円/100% |
| 中高年齢者実習型訓練 | 800円(400円) | 60%(45%) | 1,000円/75%(60%) |
| 認定実習併用職業訓練 | 800円(400円) | 45%(30%) | 1,000円/60%(45%) |
| 訓練 | 助成額 | 賃金要件等を満たす場合 |
|---|---|---|
| 認定実習併用職業訓練 | 20万円(11万円) | 25万円(14万円) |
| 有期実習型訓練 | 10万円(9万円) | 13万円(12万円) |
| 中高年齢者実習型訓練 | 10万円(9万円) | 13万円(12万円) |
- 「賃金要件等」は加算のスイッチ…訓練修了後に賃金を5%以上引き上げるか、資格等手当を就業規則等に規定して支払い、前後で3%以上上昇させると、助成率と賃金助成額が上がります。45%が60%、800円が1,000円になります
- 賃上げを予定しているなら先に設計する…どうせ上げるつもりの昇給なら、訓練の修了時期と合わせるだけで助成額が変わります。あとから「実は上げていました」では通りません
- 教育訓練休暇等付与コースは定額30万円…有給教育訓練休暇制度(3年間で5日以上)を導入し、労働者が取得して訓練を受けた場合。賃金要件等を満たすと36万円です
- 事業展開等リスキリング支援コースには設備投資加算がある…訓練のための設備を導入した場合、導入費用の50%が加算されます
- 賃金助成は訓練時間に比例する…10時間の研修を3人に受けさせたら 800円×10時間×3人=24,000円。経費助成のほうが効きます
計画届は訓練開始の1か月前まで
ここが最大の関門です。職業訓練実施計画届(様式第1-1号)の提出期間は決まっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出期間 | 訓練開始日の6か月前から1か月前までの間 |
| 提出先 | 事業所の所在地を管轄する都道府県労働局(都道府県によってはハローワークでも受付) |
| 提出方法 | 窓口へ直接/郵送(到達日が提出日。消印有効ではない)/電子申請(雇用関係助成金ポータル・GビズIDが必要) |
| 作成単位 | 原則として訓練ごと。日時が異なる場合は日時が同じ訓練ごと。複数の適用事業所がある場合は事業所ごと |
| 訓練開始日 | 提出できる期間 |
|---|---|
| 7月1日 | 1月1日から6月1日まで |
| 7月30日 | 1月30日(6か月前の同日が初日。31日ではない)から6月30日まで |
| 7月31日 | 1月31日から6月30日(6月31日がないためその前日)まで |
| 3月31日 | 9月30日(9月31日がないためその前日)から2月28日(うるう年は2月29日)まで |
- 1か月を切ったら原則アウト…研修の申し込みは1か月前を切ってからすることが多く、ここで大半が脱落します。年間の研修計画を先に立てるほかありません
- 例外は2つだけ…新たに雇い入れた労働者のみを対象とした訓練で雇い入れ日から訓練開始日までが1か月以内である場合と、天災等のやむを得ない理由がある場合は、訓練開始日の前日までとなります(理由を記した書面が要る)
- 郵送は消印有効ではない…労働局に到達した日が提出日です。締切日に投函しても間に合いません。簡易書留など配達記録が残る方法が推奨されています
- 電子申請には縛りがある…計画届を電子申請で出していない場合、その計画に係る変更届と支給申請を電子申請で行うことはできません。最初に決めてください
- 提出期限が土日祝なら翌開庁日…これは救済されます
申請の流れと落とし穴
- 研修の内容と日程を確定する…職務に関連する内容であること、人材育成訓練なら10時間以上のOFF-JTであることを確認します
- 訓練開始日の1か月前までに計画届を提出…職業訓練実施計画届(様式第1-1号)と訓練カリキュラム等を労働局へ
- 訓練を実施する…出席簿、受講記録、支払いの証拠を残します
- 訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請…厳守と明記されています。提出先は事業所の所在地を管轄する労働局
- 支給決定を待つ…支給申請書(様式第4-1号)、経費助成の内訳(様式第6-1号)、OFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)などが必要です
- 変更が出たら変更届を先に出す…実施日時や実施内容を変えるときは当初計画または変更後の訓練実施日のいずれか早い方の日の前日まで。期限までに出さずに変更後の訓練を実施すると、その部分は助成の対象になりません
- 対象労働者の追加は訓練開始日の前日まで…減らす場合は提出不要です
- 訓練開始日を1か月以上後ろ倒しにするなら、変更届ではなく計画届を出し直す…ここを間違えると全部無効になります
- 修了証で代えると賃金助成が取れない…OFF-JT実施状況報告書を対象労働者の修了証の写しで代替した場合、賃金助成を申請することはできません。経費助成だけになります
- 訓練終了日は「計画届に書いた最終日」…実際に早く終わっても、支給申請の起算日は計画届の実施期間の最終日です
- 当社の視点…3名の会社で、1人に10時間・受講料10万円の外部研修を受けさせた場合、経費助成45,000円+賃金助成8,000円=約5万3千円。金額としては小さく見えますが、同じ研修を賃金要件等(5%昇給)と組み合わせると 60,000円+10,000円=7万円になります。手間は計画届1枚と支給申請1回です
この助成金を取り逃がす理由は、ほぼ「知ったのが遅かった」です。研修の見積りを取った時点ではもう1か月を切っていることが多い。逆に言えば、年度初めに「今年はこの研修をこの時期に」と決めておくだけで、あとは計画届1枚の話になります。数万円のために計画を立てるのではなく、どうせやる研修の費用が半分戻ると考えるのが正しい順番です。
よくある質問
Qいくら戻りますか
中小企業の場合、人材育成訓練で訓練経費の45%(非正規雇用労働者は70%)、事業展開等リスキリング支援コースで75%です。賃金助成は1人1時間800円。訓練修了後に賃金を5%以上引き上げるなどの賃金要件等を満たすと、45%が60%、800円が1,000円に上がります。
Qいつまでに申請しますか
職業訓練実施計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に提出します。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内で、厳守と明記されています。
Q研修が終わってからでも申請できますか
できません。訓練開始日の1か月前までに計画届を提出していることが条件です。例外は、新たに雇い入れた労働者のみを対象とした訓練で雇い入れ日から訓練開始日までが1か月以内である場合と、天災等のやむを得ない理由がある場合だけです。
Qオンライン研修やサブスクは対象になりますか
対象になります。eラーニングや通信制も人材育成訓練の対象で、サブスクリプション型の研修サービスは人への投資促進コースの定額制訓練として経費の60%(賃金要件等を満たす場合75%)が助成されます。
Q誰の研修が対象になりますか
雇用保険被保険者です。役員や、雇用保険に加入していない人の研修は対象になりません。
まとめ
① 経費助成は人材育成訓練45%(非正規70%)、事業展開等リスキリング75%。賃金助成は1人1時間800円。
② 賃金要件等(訓練後に賃金5%以上引上げ、または資格等手当で3%以上上昇)で45%→60%、800円→1,000円。
③ 計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前まで。ここを過ぎたら一切受給できない。
④ 支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内(厳守)。訓練終了日は計画届に書いた最終日。
⑤ 対象は雇用保険被保険者。人材育成訓練は10時間以上のOFF-JTが要件。
この記事は2026年8月1日時点の法令・公開情報に基づいています。制度は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。