業務委託契約書の印紙。「2号か7号か」で全部決まります
業務委託契約書に印紙が必要かどうかは、次の3つのどれに当たるかだけの問題です。①請負なら第2号文書(契約金額により階段)、②継続的取引の基本契約なら第7号文書(金額に関係なく1通4,000円)、③委任なら課税文書に当たらず非課税。
ここで効くのが、「業務委託契約書」という名前は判断材料にならないという原則です。印紙税は文書の名称ではなく実質で判定します。だから同じ「業務委託契約書」でも、成果物の完成を約束する内容なら第2号、継続的な取引条件を定める内容なら第7号、事務処理を任せるだけなら非課税と分かれます。
3つの分岐
| 契約の実体 | 該当号 | 税額 | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 仕事の完成を約束する(請負) | 第2号 | 契約金額により階段。1万円未満は非課税 | システム開発、Web制作、工事 |
| 継続的な取引の基本条件を定める | 第7号 | 1通4,000円(定額) | 継続的な外注の基本契約、取引基本契約 |
| 事務処理を任せる(委任) | — | 非課税 | 顧問契約、コンサルティング、代理業務 |
- 請負と委任の違いは「完成」があるかどうか…成果物を仕上げて引き渡す約束なら請負、業務を遂行すること自体が目的なら委任です。制作物のある仕事は請負に寄り、助言や事務代行は委任に寄ります
- 両方の性質を持つ契約は多い…「毎月一定の業務を行い、成果物も納品する」という契約は請負と継続的取引の両方に触れます。この場合の判定は条項の主眼で決まるため、迷ったら所轄税務署に確認するのが確実です
- 金額が書いていない請負契約書は200円…第2号で契約金額の記載がないものは200円です。単価だけを定めて総額を書かない形にすると、この扱いになる場合があります
- 注文書・注文請書も課税されることがある…契約書という名前でなくても、申込みに対する承諾を証明する文書は課税文書になり得ます。「発注書」「請書」だから安心という理解は誤りです
第2号(請負)に当たる場合
- 契約金額に応じて税額が上がる…1万円未満は非課税、そこから金額の階段で税額が決まります。契約金額が大きい開発案件では印紙代も相応の金額になります
- 変更契約で増額したときは差額分…当初契約の税額との差額に対応する印紙が必要です。減額の変更契約は原則200円です
- 消費税の扱いで金額が変わることがある…契約書に消費税額が明確に区分して記載されていれば、税抜の金額で判定できます。税込一本の記載だと、消費税を含んだ金額で階段が上がることがあるので、区分表記が有利です
- 電子契約なら課税されない…紙の文書を作成しないため、そもそも課税文書の作成がありません。高額な請負契約ほど電子化の効果が大きくなります
第7号(継続的取引)に当たる場合
- 金額に関係なく1通4,000円…国税庁の説明どおり定額です。年間1億円の基本契約でも、月10万円の基本契約でも同じ4,000円です
- 要件は「営業者間」+「一定の事項の定め」…目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法、再販売価格のうち1つ以上を定めていることが要件です。基本契約に単価表を付けると、まず該当します
- 契約期間3か月以内・更新の定めなしは除外…この規定は実務で使えます。試行期間として3か月の契約を結び、続けるなら別途契約を結ぶという形にすれば、第7号から外れます
- 自動更新条項があると期間の定めが実質的に長くなる…「3か月」と書いてあっても自動更新の定めがあれば除外されません。短期にする意図があるなら更新条項を入れないことが条件です
非課税で済む場合と実務の詰め方
- 委任契約は課税文書に当たらない…税理士や社労士との顧問契約、コンサルティング契約などは通常非課税です。当社が士業と結んでいる契約書にも印紙は貼っていません
- ただし「委任」と書けば非課税になるわけではない…判定は実質です。成果物の完成義務や検収の条項が並んでいれば、名前が委任契約でも請負と判断される可能性があります
- 原本を1通にする…双方が原本を持てば2通分(第7号なら8,000円)です。原本1通を一方が保管し、他方はコピーを持つ運用にすれば4,000円で済みます。コピーに押印しないことが条件です
- 貼り忘れの代償は3倍…過怠税は納付すべき額の3倍(自主的な申出なら1.1倍)で、しかも損金になりません。4,000円を惜しんで12,000円を払う結果は避けたいところです
当社はフリーランスや個人の職人と業務委託契約を結ぶことがありますが、印紙の判断は「単発の工事なら第2号」「継続する外注なら第7号」「相談・助言なら非課税」という3分類で処理しています。判断が割れるのは、基本契約に単価表を添付するかどうかの場面です。
よくある質問
Q業務委託契約書の印紙は発注側と受注側どちらが払いますか
法律上は共同作成者が連帯して納税義務を負い、負担者は決まっていません。実務では契約書を用意した側が貼る、または折半とする取り決めが多いです。契約書に負担の定めを書いておくと後で揉めません。
Qフリーランスとの契約でも印紙は必要ですか
相手が個人でも判定は同じです。ただし第7号は「営業者間」の契約が要件なので、相手が営業として行っていない場合は第7号に当たらないことがあります。請負に当たれば第2号で課税されます。
Q契約書を電子にすれば本当に印紙は不要ですか
課税されるのは紙の文書を作成した場合です。電子データのまま完結すれば課税文書の作成がないため印紙は不要です。ただし電子で締結したものを印刷して押印し直すと、その紙が課税文書になる可能性があります。
Q覚書や変更契約書にも印紙が必要ですか
内容によります。当初契約の重要事項を変更する覚書は課税文書になり得ます。第7号に当たる基本契約の変更なら4,000円、請負の増額なら差額分です。「覚書」という名前で判断しないことが原則です。
まとめ
① 判定は請負(第2号)/継続的取引(第7号)/委任(非課税)の3分岐。
② 第7号は金額に関係なく1通4,000円。単価や支払方法を定めた基本契約はまず該当する。
③ 契約期間3か月以内で更新の定めがなければ第7号から除外。ただし自動更新条項があると使えない。
④ 「業務委託契約書」という名前では決まらない。条項の実質で判定される。
⑤ 原本1通+コピーで税額は半分になる。電子契約なら課税文書の作成自体がない。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。