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国交省ガイドラインの使い方 法律ではないが、 裁判の物差しです 見積もりと突き合わせる実務の使い方を解説します クロスの経過年数 6年で残存価値1円 経年劣化は家賃に含まれているという原則

原状回復ガイドラインの読み方。退去費用の見積もりは、これと突き合わせて初めて交渉になる

結論

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、退去費用の世界の公的な物差しです。核心はシンプルで、普通に住んでいてできる傷み(通常損耗・経年劣化)の回復費用は家賃に含まれており、貸主負担。借主が払うのは故意・過失による損耗だけ——という原則です。

ガイドラインは法律ではなく強制力もありません。しかし裁判・調停ではこの考え方が判断基準として機能しているため、退去費用の見積もりをこの物差しと突き合わせることが、交渉のスタートラインになります。実際の見積書2通で78%下がった実例も、やったことはこれです。請求する側の実務も知る立場から、使い方を解説します。

3つの原則:どこまでが借主負担か

ガイドラインの負担区分の考え方(国土交通省・原状回復ガイドラインの整理)
損耗の種類負担
経年劣化・通常損耗日照によるクロスの変色、家具の設置跡、画鋲の穴(下地に達しないもの)貸主
借主の故意・過失タバコのヤニ・臭い、ペットの傷、結露を放置したカビ、飲み物をこぼしたシミ借主
次の入居者のための工事全面クリーニング・鍵交換・設備のグレードアップ原則貸主(特約がある場合を除く)

経過年数:6年住んだクロスの残存価値は「1円」

ガイドラインのもう1つの柱が経過年数の考え方です。設備や内装には耐用年数があり、借主に過失があっても、負担するのは「残存価値」の分だけ。クロス(壁紙)の耐用年数は6年とされ、6年住んだ部屋のクロスの残存価値は1円——つまり張り替え費用のほぼ全額を借主に請求するのは、原則としてガイドラインに合いません。

特約で覆せるのか:ここが実戦の争点

  1. 特約は無制限に有効ではありません…「退去時クリーニング代は借主負担」等の特約は広く使われていますが、有効とされるには①特約の必要性と合理性、②借主が義務負担を明確に認識していること、③金額が暴利でないこと——という条件で判断されます。契約書の隅の一文だけで、何でも借主負担にできるわけではありません
  2. 金額の明示がポイント…「クリーニング代◯円を借主負担とする」と金額まで明示して合意した特約は有効とされやすく、逆に「原状回復費用は全額借主負担」のような包括的な文言は争いになりやすい——これが実務の相場観です
  3. 事業用(オフィス・店舗)は原則が逆…このガイドラインは住居向けです。事業用賃貸は契約自由の世界で、スケルトン戻し等の特約が原則有効。オフィス移転の記事で書いたとおり、事業用は契約書の文言がすべてです

実際の使い方:見積もりが来たら

  1. 明細を取る…「原状回復費一式◯万円」では検証できません。部位・数量・単価の明細を求めるのは正当な要求です
  2. 各項目を3分類する…上の表に沿って「経年劣化では?」「これは自分の過失」「これは次の入居者のための工事では?」と仕分けます
  3. 経過年数を掛ける…自分の過失分も、住んだ年数で残存価値を計算し直します
  4. ガイドラインを根拠に書面で協議する…感情ではなく「国交省ガイドラインの考え方では貸主負担と整理される項目と考えます」という書き方が、管理会社側も対応しやすい正攻法です。合意できなければ消費生活センターや少額訴訟という次の段階があります

よくある質問

Qガイドラインはどこで読めますか

国土交通省のサイトで全文が無料公開されています。「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で検索してください。分量が多いので、まず「負担区分の一覧表」と「経過年数の考え方」の部分だけ読むのが実用的です。

Qガイドラインに強制力がないなら、従わない貸主には無意味では?

無意味ではありません。調停・訴訟になればこの考え方で判断される可能性が高いため、「最終的に争えばこうなる」という見通しが交渉の力になります。実際、明細とガイドラインを根拠にした書面協議の段階で解決するケースが大半です。

Q入居時からあった傷まで請求されそうです

入居時の状態の立証が争点になります。入居時チェックリストや写真があれば最強の証拠です。なければ、経年劣化の程度や前回リフォーム時期の確認を求める形で争えます。今から入居する人は、入居直後の写真撮影を強くおすすめします。

Q敷金を超える追加請求が来ました。払うべきですか

金額の根拠を確認するまで支払う必要はありません。明細を取り、本文の手順で仕分けし、納得できない部分は書面で協議します。敷金超過の高額請求ほど、ガイドラインと突き合わせると減る余地が大きいのが実感です。

まとめ

この記事の要点

① 原則は「通常損耗・経年劣化は貸主負担」。借主が払うのは故意・過失の分だけ。
② 経過年数で負担は減る。クロスは6年で残存価値1円。負担単位も「1面まで」が原則。
③ 特約は条件つきで有効。包括的な「全額借主負担」文言は争える。事業用は原則が逆。
④ 使い方は「明細を取る→3分類→経過年数→書面で協議」。78%減の実例もこの手順。

この記事は2026年7月27日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。

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