でんさい。手形の代わりになり、印紙税がかからず分割譲渡もできます
でんさい(電子記録債権)は、電子債権記録機関の記録原簿に記録することで発生・譲渡する金銭債権です。手形の代替として設計されており、2027年度初の手形交換廃止に向けて移行先の中心になります。
手形との違いは3つ。①印紙税がかからない ②紛失・盗難のリスクがない ③分割して譲渡できる。特に分割譲渡は手形にはない機能で、100万円の債権のうち30万円だけを譲渡するといった使い方ができます。ただし自社と相手方の双方が利用できる状態であることが前提です。
手形との比較
| 項目 | でんさい | 約束手形 |
|---|---|---|
| 印紙税 | かからない | 課税文書(金額に応じて課税) |
| 紛失・盗難 | リスクなし(電子記録) | リスクあり |
| 分割譲渡 | できる | できない |
| 作成・郵送 | 不要 | 用紙の作成と郵送が必要 |
| 保管 | 不要 | 現物の保管が必要 |
| 支払期日 | 設定できる | 設定できる |
| 割引 | できる(金融機関による) | できる |
- 印紙税の差は大きい…手形は記載金額に応じて印紙税がかかります。でんさいは電子的な記録なので課税文書にあたりません
- 事務負担が減る…用紙の購入、記入、印鑑の押印、郵送、受領、保管、期日管理。これらがすべて電子化されます
- 分割譲渡が実務で効く…受け取った債権の一部だけを仕入先への支払いに充てる、といった使い方ができます。手形では券面額のまま裏書譲渡するしかありません
- 期日に自動で入金される…取立ての手続きが不要です
- 不渡りの概念は残る…支払不能が2回発生すると取引停止処分となる仕組みがあり、この点は手形と同様です
仕組みと流れ
- 債務者(支払う側)が発生記録を請求する…取引銀行を通じて、金額・支払期日・債権者を指定して記録を請求します
- 記録原簿に記録される…電子債権記録機関の記録原簿に記録された時点で、でんさいが発生します
- 債権者に通知される…発生の事実が通知されます
- 譲渡・割引もできる…支払期日前に、他社への譲渡や金融機関での割引が可能です。分割しての譲渡もできます
- 支払期日に自動決済される…債務者の口座から債権者の口座へ自動的に送金されます
- でんさいネットが中心的な記録機関…全国銀行協会が設立した電子債権記録機関です。多くの金融機関が参加しています
- 記録機関は複数ある…メガバンク系の記録機関もあり、それぞれで運用が異なります
- 債務者が起点になる…原則として支払う側が発生記録を請求します。受け取る側だけでは始められません
- 債権者請求方式もある…債権者が発生記録を請求し、債務者が承諾する方式もありますが、利用できるかは金融機関によります
利用開始の手続き
- 取引銀行に申し込む…でんさいネットに参加している金融機関を通じて利用します。窓口となる金融機関を1つ決めます
- 審査を受ける…利用者としての登録に審査があります
- 利用者番号が付与される…この番号で取引相手を特定します
- 相手方の利用状況を確認する…相手も利用者登録をしていなければ取引できません
- 利用料を確認する…発生記録・譲渡記録などに手数料がかかる場合があります。金融機関により異なります
- 相手方の対応が前提…これが最大のハードルです。取引先が登録していなければ使えません
- 手続きに日数がかかる…申込みから利用開始まで時間を要します。手形の最終振出期限から逆算して準備します
- インターネットバンキングが必要な場合が多い…操作は電子的に行うため、あわせて手続きします
- 複数の金融機関と取引がある場合…どの金融機関を窓口にするかを決めます
注意点
- 取適法では条件付き…2026年1月施行の中小受託取引適正化法では、手形払いが禁止されただけでなく、電子記録債権等でも支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難なものは禁止されています。割引料が実質的な減額になる長期のサイト設定は問題になり得ます
- 支払サイトの見直しが必要…でんさいに切り替えても、サイトが長ければ受注側の負担は変わりません。期日の設定そのものを見直すのが制度の趣旨です
- 会計処理は手形に準じる…受取手形・支払手形と同様に、電子記録債権・電子記録債務として処理するのが一般的です
- 貸倒れのリスクは残る…電子化されても、相手が支払えなければ回収できません。与信管理は引き続き必要です
- 当社の視点…3名の会社ではでんさいを使う場面は限られますが、取引先から「でんさいで支払いたい」と言われる可能性はあります。手形交換の廃止が近づくにつれ、そうした申出が増えると見込まれます。利用者登録をしていなければ受け取れないため、打診があった時点で取引銀行に相談することになります
でんさいは手形の代替として設計された仕組みで、印紙税がかからず事務も軽くなります。ただし相手方も利用者登録をしている必要があり、自社だけで始められるものではありません。手形交換の廃止が2027年度初に迫っているため、手形を使っている取引があるなら、今のうちに取引先と移行方法を協議しておく必要があります。
よくある質問
Qでんさいと手形の違いは何ですか
印紙税がかからないこと、紛失・盗難のリスクがないこと、分割して譲渡できることが主な違いです。支払期日を設定できる点や割引ができる点は手形と同様です。
Q自社だけで利用を始められますか
始められません。取引銀行での利用者登録が必要なうえ、取引の相手方も登録している必要があります。
Q印紙税はかかりますか
かかりません。電子的な記録であり課税文書にあたらないためです。手形は記載金額に応じて印紙税が課されます。
Q取適法では問題ありませんか
電子記録債権であっても、支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難なものは禁止されています。長期のサイト設定は問題になり得るため、期日の設定自体の見直しが必要です。
まとめ
① でんさいは電子債権記録機関の記録原簿への記録で発生・譲渡する金銭債権。
② 手形との違いは①印紙税なし ②紛失・盗難なし ③分割譲渡できる。
③ 債務者(支払う側)が発生記録を請求するのが原則。受け取る側だけでは始められない。
④ 相手方も利用者登録している必要がある。手続きに日数がかかる。
⑤ 取適法では支払期日までに満額を得ることが困難なものは禁止。サイトの見直しが要る。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。