圧縮記帳。補助金や保険金にかかる税金を、先送りする制度です
補助金をもらって設備を買った年に、その補助金がまるごと利益になって税金がかかる。これを避けるための制度が圧縮記帳です。
ただし免税ではありません。取得した資産の帳簿価額を圧縮するため、その後の減価償却費が減り、将来の利益が増えます。つまり課税の繰延べです。それでも、補助金を受けた年に資金が出ていくのを防げるという点で、実務上の意味は大きい制度です。
適用できる場面
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 国庫補助金等 | 国や地方公共団体の補助金で固定資産を取得した場合 |
| 保険差益 | 火災等で滅失した資産の保険金で代替資産を取得した場合 |
| 交換 | 同種の固定資産を交換した場合 |
| 収用等 | 土地収用法等により資産が収用され補償金を受けた場合 |
| 特定の資産の買換え | 一定の要件を満たす買換えの場合(措置法) |
- 補助金が主戦場…ものづくり補助金、事業再構築補助金、IT導入補助金などで固定資産を取得した場合に使われます。補助金の交付決定と資産の取得が同一事業年度でなくても、特別勘定を設けて対応できます
- 保険差益は火災・災害時…受け取った保険金から滅失した資産の帳簿価額と滅失経費を差し引いた額が保険差益です。代替資産の取得が要件です
- 交換の特例には要件が多い…1年以上所有していたこと、交換のために取得したものでないこと、同一の用途に供すること、時価の差額が高いほうの20%以内であることなどが必要です
- 収用は5,000万円控除との選択…収用等の場合、圧縮記帳ではなく5,000万円の特別控除を選ぶこともできます。有利なほうを選択します
- 使途が固定資産の取得であること…運転資金や人件費に充てる補助金には圧縮記帳を使えません
圧縮限度額の計算
- 国庫補助金等の場合…交付を受けた補助金の額が圧縮限度額です。ただし取得価額が上限になります
- 保険差益の場合…保険差益の額 × (代替資産の取得に充てた保険金等の額 ÷ 保険金等の額)で計算します
- 圧縮記帳の仕訳…固定資産圧縮損(費用)を計上し、固定資産の帳簿価額を減額します
- 減価償却は圧縮後の帳簿価額で行う…翌期以降の償却費が減ります
- 具体例…600万円の機械を、補助金200万円を受けて取得した場合。圧縮記帳を使えば帳簿価額は400万円になり、補助金200万円と圧縮損200万円が相殺されてその期の利益は増えません。その代わり減価償却費は600万円ベースではなく400万円ベースになります
- 特別償却・税額控除との併用…圧縮記帳をすると取得価額が減るため、特別償却や税額控除の計算基礎も減ります。どちらが有利かを比較する必要があります
- 少額資産の判定にも影響する…圧縮後の帳簿価額で30万円未満になれば少額減価償却資産の特例を使える場合があります
- 補助金の入金が翌期になる場合…返還不要が確定していない段階では特別勘定を設けます
経理方法
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 直接減額方式 | 固定資産の帳簿価額を直接減らす(圧縮損を計上) |
| 積立金方式 | 利益処分により圧縮積立金を積み立て、帳簿価額は減らさない |
- 中小企業は直接減額方式が多い…仕訳が単純で、税務申告と会計処理が一致します
- 積立金方式は決算書の見え方が違う…固定資産の帳簿価額が減らないため、資産の実態が決算書に残ります。金融機関に対する説明がしやすい面があります。ただし申告調整(別表)が必要です
- いずれも損金経理等が要件…確定した決算において圧縮損を計上するか、剰余金の処分により積立金として積み立てる必要があります
- 別表の添付が必須…圧縮額の損金算入に関する明細書を確定申告書に添付します。添付を忘れると適用を受けられません
注意点
- 税金が減るわけではない…減価償却費が減る分、将来の課税所得が増えます。支払う総額は変わらず、支払う時期が後ろにずれるだけです
- それでも資金繰りには効く…補助金を受けた年に納税資金が必要になる事態を避けられます。補助金は設備に使ってしまい、手元に現金がないという状況で意味を持ちます
- 赤字の会社では効果が小さい…もともと課税所得がなければ、繰り延べる意味は薄くなります。繰越欠損金がある場合はそちらで吸収できることもあります
- 補助金の会計処理と税務処理は別…会計上は補助金を収益計上し、税務上で圧縮記帳を行うという整理になります
- 当社の視点…賃貸管理では、火災や水漏れで設備が損害を受け、保険金で入れ替えるという場面があります。保険差益の圧縮記帳は、この場面のための制度です。補助金だけの話ではないという点は、実務で知っておく価値があります
圧縮記帳は「補助金をもらったら使う制度」と理解されがちですが、本質は課税の繰延べです。特別償却や税額控除と併用できない部分があり、どちらが有利かは会社の状況によります。補助金の交付決定を受けた段階で、税理士に相談して選択肢を比較しておくのが確実です。
よくある質問
Q圧縮記帳を使うと税金が減りますか
減りません。圧縮した分だけ減価償却費が減るため、支払う税金の総額は変わらず、支払う時期が後ろにずれる課税の繰延べです。
Qどのような場合に使えますか
国庫補助金等で固定資産を取得した場合、火災等の保険金で代替資産を取得した場合、固定資産を交換した場合、収用等により補償金を受けた場合などです。
Q特別償却と併用できますか
圧縮記帳をすると取得価額が減るため、特別償却や税額控除の計算基礎も減ります。どちらが有利かを比較して選択する必要があります。
Q経理方法はどちらを選ぶべきですか
直接減額方式は仕訳が単純で中小企業に多く使われます。積立金方式は固定資産の帳簿価額が減らないため決算書に資産の実態が残りますが、申告調整が必要です。
まとめ
① 圧縮記帳は免税ではなく課税の繰延べ。圧縮した分だけ減価償却費が減る。
② 主な類型は国庫補助金等・保険差益・交換・収用等。
③ 使途が固定資産の取得であることが前提。運転資金の補助金には使えない。
④ 特別償却・税額控除の計算基礎も減るため、有利判定が必要。
⑤ 別表の添付が必須。忘れると適用を受けられない。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。