履歴事項全部証明書。4種類あるうち、これを出せば大体通ります
「登記事項証明書を出してください」と言われたとき、法務局で選べる会社の証明書は4種類あります。結論として、提出先の指定がなければ履歴事項全部証明書を出せば大体通ります。情報量がいちばん多く、他の証明書で足りる場面を全部カバーできるからです。
手数料は2025年4月1日に改定されています。現行は書面請求600円、オンライン請求+郵送520円、オンライン請求+窓口交付490円。あわせて紹介される331円の登記情報提供サービスは便利ですが、これは証明書ではないので提出には使えません。私たちは不動産の仲介・管理を本業としていて、契約のたびに相手方の証明書を確認する側にいます。その立場から、どれを出せば止まらないかを整理します。
4種類の違い
| 種類 | 載っている範囲 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 履歴事項全部証明書 | 現在の登記事項+約3年前の抹消分から現在までの変更履歴 | 指定がないときの標準。融資・許認可・契約 |
| 現在事項全部証明書 | 現在効力のある登記事項のみ | 変更履歴を見せたくない場面。役員の過去の異動を出したくないとき |
| 閉鎖事項証明書 | 閉鎖された登記記録(3年より前の抹消分、清算結了した会社など) | 過去の商号や旧本店を証明する必要があるとき |
| 代表者事項証明書 | 代表者の資格に関する部分のみ | 代表権だけを証明したいとき。枚数が少なく済む |
「登記簿謄本」は紙の登記簿だった時代の通称で、いま取れるのはデータ化された登記記録の証明書です。取引先から「謄本を1通ください」と言われたら、履歴事項全部証明書を出せばまず問題になりません。
何が載っているか
履歴事項全部証明書に記載されるのは、おおむね次の項目です。会社の機関設計によって出てこない欄もあります。
- 商号・本店・公告方法・会社成立の年月日…設立日はここで確認します。創業年数を証明する書類として求められることがあります
- 目的…定款の事業目的がそのまま載ります。許認可の申請では、目的にその事業が入っているかを審査されます。宅地建物取引業の免許申請でも見られる欄です
- 発行可能株式総数・発行済株式の総数・資本金の額…資本金は法人住民税の均等割や消費税の免税判定にも効く数字で、対外的にはここで確認されます
- 役員に関する事項…取締役・代表取締役の氏名と就任年月日。履歴事項なら過去の退任・重任も並ぶので、役員がどれくらいの頻度で変わっているかが読み取れます
- 登記記録に関する事項…本店移転や商号変更があると、その履歴が残ります
逆に言えば、履歴事項全部証明書を出すと過去の役員異動や旧本店まで相手に見えます。それを避けたい事情があるときだけ現在事項全部証明書を選ぶ、という順序で考えると迷いません。
手数料は2025年4月に改定されている
登記手数料は2025年(令和7年)4月1日から改定されています。法務局が公表している現行の金額は次のとおりです。
| 取り方 | 手数料 | 証明力 |
|---|---|---|
| 書面請求(窓口・郵送) | 1通 600円 | あり |
| オンライン請求・送付 | 1通 520円 | あり |
| オンライン請求・窓口交付 | 1通 490円 | あり |
| 登記情報提供サービス(閲覧) | 1件 331円 | なし(証明文・公印なし) |
- 50枚を超えると加算がある…書面請求は50枚を超えると、50枚までごとに100円が加算されます。設立から長い会社や役員が多い会社では枚数が増えます
- 331円には指定法人手数料11円が含まれる…登記情報提供サービスの全部事項331円は、内訳に指定法人手数料11円を含んだ金額です。不動産の所有者事項だけなら141円です
- 閲覧PDFを印刷しても証明書にはならない…331円のPDFに公印はありません。提出用途で使うと受理されず、取り直しになります。安く済ませたつもりが二度手間という失敗が実務でいちばん多い
- 2025年4月より前の情報が残っているサイトがある…金額が改定されているため、それ以前に書かれた解説とは数字が合いません。手数料は法務局の一覧で確認するのが確実です
提出を求める側は何を見ているか
私たちは事務所や店舗の賃貸借契約で、法人のお客様から登記事項証明書を受け取る立場にあります。何を確認しているかというと、実はごく限られた点です。
- 発行日が3か月以内か…法律上の有効期限はありませんが、「発行後3か月以内」を求めるのが慣行です。契約が長引くと出し直しになるので、取り置きせず必要になってから取るのが正解です
- 契約書に署名する人が代表者か…代表取締役の氏名と、契約書の署名者が一致しているか。支店長や部長が署名する場合は委任状をあわせて確認します
- 本店所在地が契約書の記載と合っているか…本店移転の登記が済んでいないと、契約書の住所と証明書が食い違います。この不一致は稟議で止まる典型例です
- 目的欄にその事業が入っているか…店舗の用途と定款の目的がずれていると、貸主側の審査で確認が入ります。定款変更が必要になることもあります
原本を提出したあとに返してもらいたい場合は、「原本還付」の扱いがある提出先かを先に確認します。コピーに「原本と相違ありません」と記して代表者印を押し、原本と一緒に出す方式です。手数料をもう1通分払うより早いことがあります。
よくある質問
Q履歴事項全部証明書と登記簿謄本は違うものですか
同じものを指す言い方の違いです。「登記簿謄本」は紙の登記簿の時代の通称で、現在の正式名称は登記事項証明書。その中で履歴も含む種類が履歴事項全部証明書です。
Q他社の証明書を勝手に取ってもいいのですか
取れます。登記は公開制度なので、手数料を払えば誰でも他社の登記事項証明書を請求できます。委任状も不要です。取引先の実在確認や与信判断で使われる正当な用途です。
Q履歴事項全部証明書に有効期限はありますか
法律上の期限はありません。ただし提出先が「発行後3か月以内」を条件にしているのが通例です。金融機関や役所ほどこの基準が厳しく、期限切れは差し戻しの理由になります。
Q何枚くらいになりますか
設立から数年で役員も少ない会社なら1〜2枚です。役員数が多い会社や商号・本店の変更を繰り返した会社は厚くなります。50枚を超えると書面請求では手数料が加算されます。
まとめ
① 会社の証明書は4種類。指定がなければ履歴事項全部証明書で足りる。
② ただし履歴事項は過去の役員異動や旧本店まで見える。隠したい事情があるときだけ現在事項を選ぶ。
③ 手数料は2025年4月1日改定で書面600円・オンライン送付520円・オンライン窓口交付490円。
④ 331円の登記情報提供サービスは証明書ではない。提出用途には使えない。
⑤ 提出先が見ているのは、発行3か月以内・代表者名の一致・本店の一致・目的欄の4点。
この記事は2026年7月30日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。