IT重説と書面の電子交付。2022年5月から重要事項説明書を電子化できます
重要事項説明をオンラインで行うIT重説は、賃貸では2017年10月、売買では2021年3月30日から本格運用が始まりました。さらに2022年5月18日の宅地建物取引業法改正により、重要事項説明書(35条書面)と契約書面(37条書面)の電子交付が可能になっています。
これにより、説明も書面のやりとりもオンラインで完結できるようになりました。ただし要件があります。電子交付には相手方の承諾が必要で、宅地建物取引士の記名は電子署名によって行います。実施の条件を整理します。
IT重説の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 双方向のやりとり | 図面等を確認しながら、映像と音声で双方向にやりとりできる環境 |
| 書面の事前送付 | 重要事項説明書等を、説明の前にあらかじめ送付しておく |
| 宅建士証の提示 | 相手方が画面上で宅建士証を確認できること |
| 映像・音声の状況確認 | 説明を開始する前に、映像と音声の状況を確認する |
- 相手方が書面を確認できる状態にしておく…事前に送付し、手元にある状態で説明を始めます。電子交付の場合は事前にデータを送ります
- 宅建士証を画面越しに提示する…相手方が視認できるよう提示し、確認してもらいます
- 音声・映像が不十分なら中断する…途中で通信が不安定になった場合、説明を中断して回復を待つ必要があります
- 相手方の承諾は必要ない(IT重説自体)…IT重説を行うこと自体に法律上の承諾要件はありませんが、実務上は事前に希望を確認します。電子交付には承諾が必要です
- 使用するツールに指定はない…要件を満たせば、一般的なビデオ会議ツールで実施できます
電子交付の要件
- 相手方の承諾を得る…電磁的方法による提供について、書面または電磁的方法により承諾を得る必要があります。口頭の了解では足りません
- 使用する方法と種類を示す…承諾を得る際、電磁的方法の種類および内容を示します
- 宅建士が電子署名を行う…宅地建物取引士の記名に代えて、電子署名を行います
- 出力して書面を作成できる形式にする…相手方がファイルを保存し、書面として出力できる形式であることが必要です
- 改変が行われていないか確認できる措置…電子署名等により、改変の有無を確認できるようにします
- 承諾は撤回できる…相手方が電磁的方法による提供を受けない旨を申し出た場合、書面で交付します
- 37条書面も同様…契約書面についても、承諾を得れば電子交付ができます
- 電子契約サービスを使うのが一般的…電子署名と改変検知の要件を満たすサービスを利用します
- 印紙税がかからない…電子契約では紙の文書が作成されないため、印紙税は課されません。売買契約では金額が大きいため効果があります
当日の進め方
- 接続と本人確認…映像と音声の状況を確認し、相手方が書面を手元に用意していることを確認します
- 宅建士証の提示…画面上で提示し、相手方に確認してもらいます
- 重要事項の説明…書面に沿って説明します。相手方が理解しているかを適宜確認しながら進めます
- 質疑応答…質問を受け、回答します
- 記名・署名…電子署名により行うか、後日書面で受領します
- 録画・録音は当事者の同意を得る…トラブル防止のために記録する場合、事前に同意を得ます
- 説明時間は対面と変わらない…IT重説だから短くしてよいわけではありません
- 相手方が複数の場合…連帯保証人や共有者がいる場合、全員が参加するか、別途説明の機会を設けます
- 実施記録を残す…実施日時、参加者、使用したツール、説明した内容を記録します
実務上の注意
- 遠隔地の入居者に有効…転勤や進学で遠方から契約する場合、来店の負担がなくなるのが最大のメリットです
- 高齢者や機器に不慣れな相手には向かない…操作の説明に時間がかかり、かえって負担になることがあります
- 通信環境の確認を事前に行う…当日つながらないという事態を避けるため、事前に接続テストを行うことがあります
- 電子交付の承諾書の様式…国土交通省が承諾書の例を示しています。承諾を得た記録を残すことが要件を満たす前提になります
- 当社の実務…遠方からの申込みではIT重説を提案しています。書面の事前送付と接続テストの2点を確実に行えば、対面と同じ内容の説明ができます。電子交付については、相手方の希望を確認したうえで判断しています
IT重説と電子交付は別の制度です。IT重説は「説明をオンラインで行う」、電子交付は「書面をデータで渡す」。前者に承諾要件はありませんが、後者には相手方の承諾が必要です。両方を使えばオンラインで完結しますが、片方だけを使うこともできます。
よくある質問
QIT重説はどの取引で使えますか
賃貸では2017年10月、売買では2021年3月30日から本格運用されており、いずれの取引でも実施できます。
Q重要事項説明書を電子データで渡せますか
2022年5月18日の宅建業法改正により可能になりました。ただし相手方から書面または電磁的方法による承諾を得る必要があります。
QIT重説に相手方の承諾は必要ですか
IT重説の実施自体に法律上の承諾要件はありませんが、実務上は事前に希望を確認します。電子交付については承諾が必要です。
Q電子契約にすると印紙税はどうなりますか
紙の文書が作成されないため印紙税は課されません。売買契約など金額が大きい取引では効果があります。
まとめ
① IT重説は賃貸2017年10月・売買2021年3月30日から本格運用。
② 2022年5月18日から重要事項説明書・37条書面の電子交付が可能に。
③ IT重説の要件は双方向のやりとり・書面の事前送付・宅建士証の提示・映像音声の確認。
④ 電子交付には相手方の承諾が必要。宅建士の記名は電子署名で行う。
⑤ 電子契約なら印紙税がかからない。
この記事は2026年7月31日時点の法令・公開情報および当サイトで実測した料金に基づいています。制度・料金は変わることがあります。許認可・登記・税務の個別判断は、所管庁・専門家にご確認ください。本記事は論点の整理であり、法的助言ではありません。